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1990年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.355】YAMAHA Clavinova P500 ~クラビノーバ・シリーズの最上位モデル[1993年]

2018/11/28

 

 

 今回は1993年に発売されたヤマハのデジタルピアノ・「P500」を取り上げてみたいと思います。ヤマハのデジピ・Pシリーズといえば本ブログでもいくつか取り上げているのですが、本機P-500は定価750,000円という、当時のクラビノーバ・シリーズの最上級モデルとして登場しました。

 

YAMAHA Clavinova P500

 

 いやー、、物理的な弦やハンマー機構を持たないデジタルピアノで75万円ですよ。。さぞかし気合の入った本機P-500、さっそくどのような内容だったのかひも解いてみたいと思います。
 
 
 

P500概要

 ヤマハの電子ピアノ・ブランド「Clavinova(クラビノーバ)」シリーズの一つとしてリリースされた、当時最高の技術を惜しみなく投入して作り上げられた一台。徹底的にグランド・ピアノの音とタッチを追求したという最高級モデルといったところです。
 
 
 スタイリッシュなデザインは、家庭用のみならずステージ向けにも意識した作りとなっていると言っていいでしょう。
 
 
 

まずは外観

 丸みを帯びた奥行部の曲線、そしてパネルトップは天然木を使用した高級感あふれるフィニッシュ。天然木ということで木目は個体によって異なるそうですね。当時としては非常に都会的な洗練されたデザインといったところ。
 
 
 そして専用スタンドが標準で付いてきます。この価格ですからスタンド付属はまあ当然といった感じですね。本体の雰囲気に合ったちょっとおしゃれなデザインのスタンドとなっています。もちろん3本ペダルユニットも付属(→スタンドに取り付けるタイプのものではない)
 
 
 なおフロントパネルは平らで広々としていて、これは別のキーボードを乗せて使うのにも何気に便利かと思います。とはいえこの美しい仕上がりのパネルトップを別の鍵盤で隠してしまうというのももったいないところ。。何より傷が付きそうで、実際に2段積みにしてライブで使っていたという人はほぼいなかったのではないかと想像します。
 
 
 

音源部について

 同社のサンプリング方式路線である「AWM音源」を搭載。
 
 
 

内蔵音色について

 本機に内蔵されている基本音色は全11種類。いずれもパネル上に独立した音色スイッチが備えられているので一発で音色変更が可能です。以下全て挙げてみましょう。

●PIANO1 ●PIANO2 ●PIANO3 ●PIANO4 ●E.PIANO1 ●E.PIANO2 ●E.PIANO3 ●E.PIANO4 ●E.PIANO5 ●CLAVI ●CL TONE

 
 うーん、、何ともそっけない感じですね。。ちょっと補足してみましょう。
 
 

生ピアノ系(PIANO1~4)

 ブライトなデジタル寄りのサウンドが中心。ちなみにPIANO4は、同社のエレピCP70/80っぽいエレクトリック・グランドといった感じのキャラクターとなっています。
 
 

エレピ系(E.PIANO1~4)

 ローズ系、アタックが効いたダイノマイ系、ウーリッツァー系、そしてDX系エレピといった感じのラインナップ。
 
 

CL TONE(クラビノーバ・トーン)

 薄めのパッド音色にハープを足し合わせたようなオリジナルのサウンド。
 
 
 
 全体的に見るともちろん生ピアノ、エレピ系は充実しており、本機をピアノ系専用機と捉えるならば必要十分と言えるかもしれません。最上位モデルということもあって、おそらくサンプリング・メモリーも贅沢に使っているのでしょう。
 
 
 
とはいえ、この手のデジタルピアノによく入ってるオルガン系(チャーチオルガン、ジャズオルガン)、ビブラフォン、ハープシコード、ベース音などはばっさり省略されていますね。まあ必要ないといえば必要ないのですが。。

 

YAMAHA Clavinova P500

 

 

実はエディットができる!

 本機が一般的なホーム向け電子ピアノと異なる点は、ボイス(→音色の最小単位)のエディットができるという点でしょう。
 
 
 上記のように基本音色の数は多くありませんが、音色ボイスごとにエンベロープ、ビブラート、イコライジング、パンニングなどがエディット可能となっています。家庭向けの練習用ピアノとしてはこれら機能を使う機会は少ないと思いますが、ステージ用と捉えた場合、アタックを強調したりディケイを伸ばしてエフェクトを掛ければ、ちょっとしたシンセサイザー的効果を与えることができます。
 
 
 そして、これらボイスを組み合わせるモードを「パフォーマンス(モード)」といいます。ボイスを組み合わせてデュアル(→2音を重ねる)やスプリット(→鍵域により音を分ける)を行えるようになるなど、よりステージ向けのセッティングができるようになるといった感じですね。

 

 

 

鍵盤部/コントローラー部

 当時のヤマハさんの電子ピアノに多く採用されていた「AE鍵盤」を搭載。AE鍵盤自体は今となっては非常に昔の機構なのですが、豊富なメモリーにより微妙なタッチによる音色の変化が細かく追従しているとメーカーでは謳っており、弾きごたえは良かったものと想像します。
 
 
 なおベロシティ・カーブは内部用で20種類、外部送信用でも20種類用意されており、自分好みの細かなタッチの調整にも対応してくれますね。
 
 
 ちなみにこの鍵盤、アフタータッチにも対応しており、他の音源機器のマスターキーボードとして使うというのもアリでした。マスターキーボードらしくピッチベンドホイールやモジュレーションホイールも装備していますね。またアウトプットとして、ステージで取り回しやすいバランス型XLR端子を装備しているのも特徴的。
 
 
 

エフェクト部

 ピアノの共鳴弦を再現する「サウンドボード」や高品位なリバーブなど、2系統のデジタル・エフェクトを搭載。さらに5バンドのグラフィック・イコライザーも搭載しているため、音場に合わせた微調整も可能となっています。
 
 
 

つぶやき的な

 採算はさておき、当時のヤマハさんとしては非常に贅を尽くした究極のデジタルピアノを作りたくて、実際に作っちゃったといったところでしょうか。XLR端子を備えてる辺りとかは端的に “プロ仕様”と見えますし、実際プロを中心に支持されていたのでしょう。
 
 
 とはいえ本機にスピーカーは内蔵しておらず、それでいて本体38kg(スタンド取り付け時55kg)というヘビー級の重量は、ライブ時にローディーのいないアマチュア・キーボーディストにとってかなりの重労働だったと思われます。。
 
 
 
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仕様
■鍵盤数:88(イニシャル/アフタータッチ付き)
■音源方式:AWM(ダイナミック・ステレオ・サンプリング)
■最大同時発音数:32音
■音色数:11種類
■パフォーマンス:32メモリー
■効果:リバーブ×16、モジュレーション×10、その他×12

■付属品:専用スタンド、ペダルユニット
■外形寸法:1447(W)×140.5(H)×548(D)mm  ※本体のみ
■重量:38kg  ※スタンド取り付け時55kg
■発売当時の価格:750,000円
■発売開始年:1993

 

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