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1990年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.128】YAMAHA P50-m ~ハーフラック・ピアノ音源モジュール[1996年頃]

2018/11/25

 

 

 今回ご紹介する機材は、ヤマハが1996年頃に発売した、ハーフラック・サイズのピアノ音源モジュール・「P50-m」です。【PIANO TONE GENERATOR】と銘打たれていました。価格は39,800円。同時発音数は32音ですが、本機を2台スタックすることで64音ポリまで拡張可能となっています。

 

YAMAHA P50-m
 
 
 

概要

 ハーフラックのコンパクトなサイズに、ステージ・ピアノの定番「Pシリーズ」直系のクオリティを凝縮したというピアノ専用音源モジュール。
 
 
 なおPシリーズといえば、本機が発売された当時で言えば、P-500、P-300、P-150が概ねそれに該当します。最上位モデルのP-500は750,000円もしたし、最も廉価だったP-150でさえ198,000円でした。
 
 
 それがP50-mでは、鍵盤なしとはいえ39,800円という破格の安さ!。ピアノタッチ鍵盤(MIDI付き)は別途持っていて、Pシリーズの高品位なピアノ音色だけ安く手に入れたいという人にとってはうってつけの一台だったのかもしれません。

 

YAMAHA P50-m(advertisement)
VL70-m, P50-m/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用

 
 
 

音方面

 AWM2音源を搭載し、アコースティック・ピアノ系をはじめ、DXエレピやCPサウンドを含む往年のヴィンテージ・エレピなど全28音色を内蔵しています。
 
 
 個人的な音の印象としては、圧倒的に低音が細いという感じ。これは当時の(特に上記の)Pシリーズよりも、明らかに倍音が少ない痩せた音といった感じです。ジャンルにもよりますが、ライブには若干不向きな印象です。
 
 
 ただし、ピアノ音源の音色の印象というのは、コントローラーとなる鍵盤のタッチ(の良し悪し)に左右されることが多いです。単なる心理的要因に過ぎないかもしれませんが、本機も抜群のタッチの鍵盤で弾けば、多少いい音に聴こえるかもしれません。。
 
 
 

タッチ方面

 本機には8種類のタッチセンス・カーブが用意されており、好みの打鍵感覚に近いカーブをその中から選ぶことができます。
 
 
 

エフェクト方面

 リバーブ、コーラス、3バンド・グラフィック・イコライザーを備えています。EQに関しては、パネル上に独立した3本のスライダー(LOW/MID/HIGH)が配されているので、瞬時に好み通りに変えられるGOODな設計です。
 

YAMAHA P50-m EQ
 
 個人的に思うには、P50-mは波形そのものよりも、エフェクト(空間の鳴り)の作りがうまいという印象です。倍音やサステインの弱さを、空間系エフェクトでカバーしているような気がします。
 
 
 

DTMサブ音源として

 これはありだと思います。XGコントロール情報にも対応しているので、同社のMUシリーズと組み合わせ、ピアノ音色のバリエーションを増やすという目的だったら悪くなかったでしょう。

 

 

 

個人的かんそう

 この時代(90年代中頃)はハーフラックのピアノ音源モジュールが他社からもいくつか発売され、実際に僕もいくつか試してみましたが、P50-mは残念な内容という印象が強いです。本機はPシリーズというよりかは、ホームピアノ・シリーズの「クラヴィノーバ」の安価モデルの中身を移植したという印象ですね。
 
 
 本機ではクラビ音色や、AWM2(要するにPCM方式)でのDXエレピなんかも入っていて、果たしてそれら音色は収める必要があったのかはちょっと疑問です。だったら音色数をもっと絞って、その分波形メモリーを生ピアノ音色に充てたらよかったのでは。。
 
 
 まあカタログでも、同社の「VL70-m」や「MU90」などとのシステム構築例が図解されていたくらいですし、元々DTM向けのピアノ音色拡張音源という用途が前提だったのかもしれません。
 
 
 少なくともP50-mをロックバンドのライブで鳴らすという目論見だった人にとっては、買ってから大いにがっかりさせられたかもしれませんね。。
 
 
 
 関連記事(ヤマハ・デジタルピアノPシリーズ):
 「YAMAHA P-80 ~ライブにも持っていける家庭用電子ピアノ[1999年]
 「YAMAHA P-90 ~ハーフペダルにも対応した、ヒットモデルP-80の後継機[2004年]
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 「YAMAHA P-120/120S ~2000年代初頭の大ヒットデジタル・ピアノ[2001年]
 「YAMAHA P-105 ~ヤマハの高コスパ! 電子ピアノ[2012年]
 
 
 

おまけ

 なお、この頃に発売されたこの手のコンパクト・ピアノ・モジュールで一番音が立っていたのは、個人的には「YOUNG CHANG MP-1」ですね。以前本ブログでも記事にしましたので、よろしければ読んでみてください。
 
 
 
 関連記事(90年代のコンパクト・ピアノ音源モジュール):
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 「Roland P-55 ~ローランドDTMモジュール・“SOUND CANVAS”のピアノ特化版
 「E-mu PROFORMANCE /1 ~E-muが作ったピアノ音源専用モジュール
 

仕様
■音源方式:AWM2音源
■最大同時発音数:32音(※2台接続で64音まで拡張可)
■内蔵音色数:28
■エフェクト:リバーブ、コーラス、3バンド・グラフィック・イコライザー
■タッチセンス・カーブ:8種
■ディスプレイ:7セグメント×3文字LED
■外形寸法:220(W)×44(H)×210(D)mm
■重量:1.2kg
■発売当時の価格:39,800円
■発売開始年:1996年頃

 

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