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1970~80年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.356】YAMAHA V50 ~ 珍しいFM音源版オールインワン・シンセサイザー[1989年]

2019/04/21

 

 

 今回紹介するシンセサイザーは1989年にヤマハから発売された「V50」です。当時の定価は156,000円。

 

YAMAHA V50

 

 ヤマハのVシリーズといえば、以前本ブログでも紹介した「YAMAHA V2 ~DXの冠を外したヤマハのFM音源シンセ [1987年]」があるのですが、それの2年後に発売されたFM音源方式のワークステーション型シンセといったところですね。V2との比較もはさみつつ記事を展開してみましょう。
 
 
 

V50概要

 イニシャル/アフター・タッチ搭載の61鍵盤部を持つ、4オペレータ/8アルゴリズム装備のFM音源シンセ。8マルチティンバーで同時発音数は16音。
 
 
 4オペ/8アルゴリズムは、単純にV2×2台分に相当しますね。V2と同じく8種類の波形からFM合成が可能です。同時発音数もV2の8音から倍増。しかしそれだけじゃないV50、シーケンサーやリズムマシン、さらにエフェクターまでも内蔵した、当時流行のオールインワン思想の下に設計されたワークステーションタイプのシンセサイザーだったのです。
 
 
 従来のカードに加え、安価で使い勝手のよい3.5インチ・フロッピー・ディスク(2DD)も採用。作った曲データはフロッピーにばんばん保存できたという感じですね。

 

 

 

V50の内部構成

 本機はオールインワン・タイプのシンセであり、一台に「シンセサイザー」「リズムマシン」「シーケンサー」の3つの機器が収まっていると考えてよいでしょう。これら3つの機器を明確に使い分けることができるように、本機には以下のような4つのプレイ・モードが用意されています。
 

パフォーマンスプレイ・モード …複数のボイスを組み合わせたパフォーマンスの音を出すモード。

シングルプレイ・モード …一つのボイスの音を出したりエディットしたりするモード。

リズムマシン・モード …リズムパターンを演奏するモード。

シーケンサー・モード …演奏データを録音あるいは再生するモード。

 

 

内蔵音色

 プリセット(ROM)ボイスとして100音色、インターナル(RAM)ボイスとして同じく100音色を搭載。FM音源が得意とするキラキラエレピやアタックの速いシンセベースをはじめとする、様々な楽器音やSEなどが幅広く網羅されています。またカード・ボイス(オプションのRAMカード)にも100ボイスまでの保存が可能。
 
 
 そしてこれら「ボイス」に様々な設定を加えた音色を本機では「パフォーマンス」と言い、ROM/RAMともに100種類ファクトリー・プリセットされています。
 
 
 なお本機のシンセ・セクションについてはV2とほぼ同じと言ってよいので、必要に応じてV2の記事も参考にしてみてください。
 
 関連記事:「YAMAHA V2 ~DXの冠を外したヤマハのFM音源シンセ [1987年]
 
 
 

シーケンサー・セクション

 トラック数は8トラックあり、同時発音数は8種類まで。要するに様々な楽器パートを1トラックずつ録っていって、最大8パート分のアンサンブルをこれ1台で演奏することができたという感じです。
 
 
 録音方法はリアルタイム/ステップの両方に対応。特にステップ入力については、ディスプレイ表示での棒グラフを見ながらの操作となり、これは視覚的にも分かりやすいということで評価を得ていました。
 
 
 なお本機にはDVAモード【Dynamic Voice Allocation】と呼ばれるモードがあり、このモードにすると各パートの発音数が自動的に決められる(割り当てられる)ようになっています。これにより発音数をあまり気にしなくてもどんどん打ち込みができるという感じでした。
 
 
 

リズムマシン・セクション

 PCM録音された、61音色を持つリズムマシンを内蔵。そう、さんざんFM音源などと言ってきましたが、このリズムマシン・セクションに関してはサンプリング方式(→PCM)なのです。最大同時発音数は8音。
 
 
 一般的な生バンド形態でよく使うドラムセットはもちろん、いわゆるシンセドラム、また民族楽器(打楽器)のセットも取り揃えています。もちろんシーケンサーと同期してソングプレイを行うことも可能。
 
 
 まあPCMとはいっても、いかにも当時(80年代後半)っぽい音色キャラクターですね。今ではあまり流行らないドラム音と言えますが、その頃のサウンドをあえて再現したい場合などでは使えると思います。

 

 

 

エフェクター・セクション

 V2に見られなかった装備として、デジタル・エフェクターを32種類搭載している点が挙げられます。これらはリバーブやディレイを中心としたプリセットとなっていて、各ボイス・各パフォーマンスごとに指定しておくことが可能。ボイスやパフォーマンスの音作りの一部として自在にエフェクトを掛けることができます。
 

YAMAHA V50(advertisement)
V50/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

外部メディアについて

 ボイスデータやパフォーマンスデータはオプションのカード(MCD32もしくはMCD64)に保存可。なおシーケンサーのデータ(ソングデータ)はカードへの保存はできず、フロッピーディスク(2DD)に保存することになります。
 
 
 なお同社のEOS YS200 および EOS B200とは互換性があり(→音色データおよびシーケンスデータ)、それらEOSシリーズ用のメモリーカードのデータを読み込み再生することもできます。
 
 
 関連記事:
 「YAMAHA EOS YS200/YS100 ~EOS初号機、現る![1988年]
 「YAMAHA EOS B200 ~EOSにスピーカーが付いたよ![1988年]

 

 

 

個人的つぶやき

 シーケンサーやエフェクターも内包したオールインワン・シンセサイザーということで、この頃のヤマハさんのラインナップとしてはEOSの流れを受け継いでるといった印象でしょうか。とはいえベースとなっているのはやはりDXシリーズで、EOSよりもよりしっかりと音作り(曲作り)ができる本格派といった感じです。
 
 
 V2、V50と続いた2つのVシリーズはDXからの流れを受け継ぎ、次世代機であるSYシリーズへの橋渡しをしたということできっちり時代の役目を果たしたといってもいいかもしれません。
 
 
 個人的な思い出的には、やはり楽器店勤務時代に何度か本機を取り扱っていて、とにかくその見た目を裏切る重さだったところでしょうか。。こんなにコンパクトなボディで11kgもあったりして、やたらと重かったという印象ばかりが残っています(笑)
 
 
 
 関連記事:
 「YAMAHA SY77 ~2つの音源を持つオールインワン・シンセ[1989年]
 「YAMAHA TG77 ~SY77の音源モジュール版[1990年]
 

仕様
■鍵盤:61鍵(イニシャルタッチ/アフタータッチ付き)
■音源方式:FM音源(4オペレータ・8アルゴリズム)
■最大同時発音数:16音
■マルチティンバー数:8

■内蔵音色:
 プリセット:100ボイス、100パフォーマンス
 ユーザー::100ボイス、100パフォーマンス
■シーケンサー部:8トラック、16,000音、8ソング、分解能♩=48

■内蔵エフェクト:プリセット32タイプ
■外部メモリー:3.5インチFDD(2DD)
■外形寸法:1002(W)×98(H)×326(D)mm

■重量:11.0kg
■発売当時の価格:156,000円
■発売年:1989年

 

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