2000年代~'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.275】YAMAHA P-120/120S ~2000年代初頭の大ヒットデジタル・ピアノ[2001年]
2018/11/26
今回ご紹介するキーボードは、ヤマハのデジタルピアノ・「P-120」および「P-120S」です。発売は2001年秋。以前本ブログでも紹介したP-80の2年後にリリースされた、P-80のステレオスピーカー内蔵モデルと概ね見ることもできましょうか。本体価格はP-80の2万円アップの160,000円(税抜)でした。
コンパクトでスタイリッシュなデザイン、アコースティックピアノのタッチ感に近いグレードハンマー鍵盤採用、さらにP-80から刷新した音と演奏性の高さを実現し、2000年代初頭における電子ピアノ(デジタルピアノ)のヒットモデルとなりました。
2つのモデル名
本機には「P-120」および「P-120S」という2つのモデル名が存在しますが、パネルの色(配色)が異なるだけで中身や機能は全く同じです。
P-120 …ブラック&マホガニー
P-120S …シルバー&チェリー
無印のP-120の方は “黒っぽい木目調”というカラーリングであり、パネル上部の左右に付いているスピーカーグリルも黒であるため色が同化し、ぱっと見スピーカー内蔵ということが分かりにくくなっていますね。
よって『Sが付いてる方だけがスピーカー内蔵なのかー』と認識してしまうのは誤りであり、どちらもスピーカーは積んでいます(もちろん価格も同じ)。うーん、、個人的にはちょっとこれ紛らわしいと思うんですよね。。だったら無印の方はP-120Bとかにした方が分かりやすかったかも。。
他社になりますが、80年代のシンセRoland JUNO-106とJUNO-106Sの違いは「スピーカーのある/なし」であり、昔からの鍵盤フリークにとってはその法則が刷り込まれていたような気がします(笑)
音源部について
「AWMダイナミックス・ステレオサンプリング」による高品位なサウンドを搭載。サウンド(およびボタンデザイン、全体的な操作性)はP-80がベースとなっていますが、ピアノ音色はリファインされているそうです。また、離鍵時やダンパー・ペダルを踏んだ瞬間の音色の変化なども丁寧にサンプリングされています。
内蔵音色について
本機に内蔵されている基本音色は全14種類。いずれもパネル上に独立した音色スイッチが備えられているので一発で音色変更が可能です。以下全て挙げてみましょう。
●GRAND PIANO1 ●GRAND PIANO2 ●E.PIANO1 ●E.PIANO2 ●HARPSICHORD ●E.CLAVICHORD ●VIBRAPHONE ●CHURCH ORGAN ●JAZZ ORGAN ●STRINGS ●CHUIR(クワイア)●GUITAR ●WOOD BASS ●E.BASS
上記14の音色全てには「バリエーション」が別途1つずつ選べるようになっています。よって実質的な音色数は14×2=28種類と言えるでしょう。
ピアノの音色キャラクターとしては、P-80を踏襲する丸くて太い音像といった感じであり、幅広い音楽ジャンルに対応できそうという印象です。高音は良くも悪くもキンキンに抜けてくるという感じではないので、ライブでは必要に応じてイコライジングするのがいいと思いますよ。
鍵盤タッチについて
鍵盤部は、高音域ほど軽く、低音域ほど重みを増すことでリアルなタッチ感を実現する「グレード・ハンマー鍵盤」を採用。ここはP-80と同様ですね。
ハーフ・ペダルにも対応
付属のペダルと接続するとハーフペダルでの演奏にも対応。この部分はP-80との決定的な違いであり、のちのP-90にも受け継がれています。
P-90の記事でも書きましたが、 ネットオークション等でP-120本体のみを入手してあとからペダルを別途購入する際は注意してください。というのもハーフペダルをやるにはペダルと電子ピアノ本体が対応している同士である必要があるからです。現行品でいえば「YAMAHA FC3A」が純正ペダルです(前モデルのFC3でも可)
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関連記事:「電子ピアノにハーフダンパー(サスティン)は通用するのか?」
デザインについて
前述したようにP-120は2色のカラー・バリエーションが用意されており、設置する部屋の雰囲気などによってチョイスすることが可能でした。人によって感じ方はそれぞれですが、特にシルバー&チェリーのカラーリングは非常にモダンというか新時代を感じさせる斬新なデザインと個人的には感じました。余談ですが本機は2002年にグッドデザイン賞(商品デザイン部門)も受賞していますね。
なおスイッチ・端子類はP-80と同様に向かって左側のサイドパネルに集約されています。
その他機能
トランスポーズやオクターブシフト、電子メトロノームなど、電子ピアノとしてあると便利な基本的な機能は内蔵しています。他にも、MIDI端子はもちろんPCとダイレクトにつなげられるTo Host端子も装備。また2トラック・レコーダーも内蔵しているため自宅での練習用としても使えます。
P-120, 120S/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
つぶやき的な
坂本龍一の大ヒットピアノ曲『energy flow』(アルバム「ウラBTTB」に収録)が発表されたのが1999年であり、それをきっかけとして2000年代初頭ではちょっとした “ポピュラーピアノ・ブーム”が起こりました。そういえばキーボードマガジン(リットーミュージック発行)にも、当時「PIANO SONG BOOK」という別冊付録が付いてましたね。
本機P-120は、ヤマハが電子ピアノ分野で長年培ってきた音・タッチの良さに加えデザインまで力を入れ、そういった時代のブームに上手いこと乗って、結果的に非常によく売れた機種として、今日でも多くの人の記憶に残っている電子ピアノと言えるでしょう。
個人的には、貸しスタジオやライブハウスの常設電子ピアノとして頻繁に目にしたモデルという印象が強いですね。貸しスタジオでの「P-120もしくはCASIO Privia」の遭遇率は非常に高かったような気がします(笑)。まあ僕はP-80を長年愛用していたということもあり、P-120も非常に勝手知ったる感じで使わせてもらいました。というか現在でもP-120を常設してるライブハウスも結構多いです。
関連記事(ヤマハPシリーズ):
「YAMAHA P-80 ~ライブにも持っていける家庭用電子ピアノ[1999年]」
「YAMAHA P-90 ~ハーフペダルにも対応した、ヒットモデルP-80の後継機[2004年]」
「YAMAHA Clavinova P500 ~クラビノーバ・シリーズの最上位モデル[1993年]」
「YAMAHA P-105 ~ヤマハの高コスパ! 電子ピアノ[2012年]」
「YAMAHA P50-m ~ハーフラック・ピアノ音源モジュール[1996年頃]」
仕様
■鍵盤数:88(グレード・ハンマー鍵盤)
■音源方式:AWM(ダイナミック・ステレオ・サンプリング)
■最大同時発音数:64音
■音色数:14種類×2バリエーション
■効果:ブリリアンス、リバーブ(ルーム/ホール1/ホール2/ステージ)、エフェクト(コーラス/フェイザー/トレモロ/ディレイ)
■レコーダー:2トラック録音/再生(3曲)
■内蔵スピーカー:楕円(12cm×6cm)×ステレオ
■外形寸法:1354(W)×137(H)×334(D)mm
■重量:18.6kg
■発売当時の価格:160,000円(税抜)
■発売開始年:2001年