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1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.129】Roland VP-330 Vocoder Plus ~“TOKIO”な名機ボコーダー[1979年]

2018/11/25

 

 

 今回ご紹介する電子楽器はローランドのボコーダー「VP-330」です。発売は1979年で定価は295,000円。

 

Roland VP-330

 
 
 ボコーダーというのは簡単に言うと、YMOの「Technopolis」冒頭の “トキオ~”などに代表される、人声をロボット・ボイスに変換してくれるシンセサイザーの一種です。70年代~80年代初頭には著名なミュージシャンがボコーダーをこぞって使用し、当時の音楽シーンの流行の一つとなったと言っていいでしょう。
 
 
 

VP-330の特徴

 ボコーダー機能以外にも、「ヒューマンボイス」(→クワイア)、「ストリングス」の2つのプリセットが内蔵されています。以下詳しく見てみましょう。
 

ボコーダー部

 AR(アタック/リリース)タイプのエンベロープを装備。また、ポルタメントやビブラート機能、厚みを作れるコーラス・アンサンブルを搭載しています。他にも、ペダル操作により、マイクから入力した声の音声を一時記憶するホールド機能も内蔵していました。
 
 

ヒューマンボイス(クワイア)

 アッパーにフィメイル(女声)4'とメイル(男声)8'、ロワーにメイル4'、8'の音色タブレットを備えており、音色選択が可能。
 
 

ストリングス

 鍵盤中央Cを中心に、4'のアッパーとロワーが選択可能。
 
 ヒューマンボイスとストリングスのプリセット音色の評価は高く、アンサンブル・プリセット・キーボードとしても人気を博しました。なお、後述するYMOの2ndアルバムにも本機のプリセットが頻繁に使われていますね。 
 
 
 

補足・ボコーダーの「明瞭性」について

 ボコーダーにおける明瞭性(明瞭度)というのは、「何をしゃべって(発音して)いるか聞き取れるがどうか」を指し示すものであり、ボコーダーの質を測る際の一要素とされます。子音がどれだけはっきり出ているか、がポイントですね。
 
 
 VP-330の明瞭性は、SENNHEISER社製ほどは良くないとされましたが、“音楽的な響き”という観点で他社のボコーダーよりも優れていたと言われています。
 
 
 

YMOとVP-330

 YMOの2ndアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』(1979年)では、「Technopolis」「Behind The Mask」をはじめとして多くのトラックにてVP-330のサウンドが登場します。有名曲「ライディーン」の間奏部にもボコーディング・サウンドが入っているそうですよ。
 
 
 ちなみに、VP-330が発売される以前に既に上記のアルバムは完成していたそうで、どうやら発売前の(プロトタイプの)VP-330を使用してレコーディングを進めていたそうですね。

 

 

 

初期型と後期型

 VP-330には発売時期によって初期型と後期型の2つのタイプが存在します。変更されているのはスイッチ(のデザイン)で、初期型ではタブレット・タイプ、後期型ではアクティブ時にランプが点灯するスイッチ・タイプとなっています


     初期型    後期型
 
 

まとめ的な

 初期のボコーダー(EMS社製やSENNHEISER社製)はラックマウント型が主流だったため、外部からキャリアとなるキーボードを接続する手間がありました。それに非常に高価でもありましたね。。
 
 
 その点VP-330には内部に波形を持ち、4オクターブの本格鍵盤もついていたため、アマチュアでもボコーディングを手軽に行うことができるようになったという感じです。
 
 
 内部音源のストリングスやクワイア(ヒューマンボイス)も秀逸ですし、“弾けるボコーダー”として多くの愛好家を生みました。近年でもローランドから「VP-03」といった復刻製品が発売されるなど脚光を浴びています。
 

 

 

おまけ的な

 今さらですが、YMOの「トキオ~」のボイスは本機VP-330によるものです。今時のシンセとかにもボコーダー機能が付いているもの(例:KORG microKORGシリーズ)があるので、店頭などで試す時はまず「トキオ~」とやってみましょう、お約束で(笑)
 
 
 
 関連記事:
 「EMS VOCODER 2000 ~70年代発売のロングセラー・アナログ・ボコーダー
 「CASIO Voice Arranger VA-10 ~ボコーダーでTOKIO!! [1993年]
 

仕様
■鍵盤部:49鍵
■音数:49音
■ボコーダー・セクション:トーン・タブレット(アッパー8'、ロワー8')、アンサンブル・タブレット
■ストリングス・セクション:トーン・タブレット(アッパー4'、ロワー4')
■ヒューマン・ボイス・セクション:タブレット4(アッパー:フィメイル4'、メイル8')(ロワー:メイル4'、メイル8')、アンサンブル・タブレット
■外形寸法:905(W)×145(H)×370(D)mm
■重量:14kg
■発売当時の価格:295,000円
■発売開始年:1979年

 

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