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AKAI 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.332】AKAI S01 ~10万円を切るお手頃・イージーサンプラー[1992年]

2019/07/15

 

 

 今回ご紹介する機材はAKAI professionalのサンプラー「S01」です。発売は1992年末。定価は99,500円でした。アカイのサンプラー「Sシリーズ」といえば80~90年代の音楽制作シーンにとって重要な役割を果たした機材として有名ですね。

 

AKAI S01

 

 サンプラーというのは簡単に言うと、“音声信号を録音・編集し、音程を変えたりしてMIDI等でも再生出来るシステム”のこと。あるいは “シンセでは作り出せない様々な音色・フレーズの入ったサウンド・ライブラリー(音の入ったソフト)を再生できるもの”、といったところでしょうか。今回取り上げるS01は、従来の「高価・かつ複雑」なサンプラーのイメージを覆した、お手頃・簡単サンプラーといったところです。
 
 
 

S01登場!

 同社のプロ志向サンプラー(S1000,S1100シリーズ)の後にリリースされた、10万円を切る低価格で話題を集めたローコスト・サンプラー。あらゆる操作がイージー・オペレーションを念頭に置かれて設計されており、当時流行していた「フレーズ・サンプリング」にも対応。それまでややマニア寄り(あるいはプロ向け)だった “サンプラー”の概念を覆す普及機として市場に投入されました。
 
 
 

基本スペック

 サンプリング周波数は最高32kHz(固定)。内蔵メモリーは標準で1Mバイト、オプション装着(※1)で2Mバイトまで拡張可能です。
 
 同時発音数は8音。マルチティンバー、バンクごとのループ設定、リリース設定、ベロシティ対応など基本機能は押さえてあるといった印象。サンプリング・タイムは8バンク合計約15.6秒(標準1Mバイトの場合)といったところです。
 
 
 ローコスト機というとチープな(おもちゃ的な)イメージを抱いてしまいがちですが、本機はスペックだけ見ても結構しっかりしているという印象ですね。
 
 
 サンプリング周波数32kHzというのはCD音質(44.1kHz)には及ばなかったわけで、この辺りはコストダウンに当たり致し方ないスペックと見ることができます。とはいえ量子化ビット数は16ビット(リニア方式)となっており、これは当時のデジタル・レコーダーの標準仕様と肩を並べる数字となっています。
 
 
 

外観

 2Uのラックマウント型。おなじみの白いボディに「AKAI professional」の赤いロゴを配する辺りは、スタンダード・サンプラーとして世界を席巻したS900、S1000(S1100)譲りのデザインと見ることもできますね。エディット・スイッチの数も多くないですが、後述する「マトリクス方式」によりうまくフォローしているといった印象です。

 

 

 

操作性(後半は個人的所感)

 マイクやCDなどのサンプリング・ソースを接続した上でRECキーを押すと即座にサンプリング・モードに入ります。次に入力レベルを見つつ録音レベルとトリガー・レベルを決め、再度RECを押しながらサンプリングしたいバンクのキーを押すとスタンバイ状態になり、サンプリングが可能になります。
 
 
 録音後の操作はフロント・パネル中央の大部分を占めている「マトリクス」で行います。これは縦4×横7のコマンドが印刷されており、それぞれの行/列にはLEDが配置され、LEDが交差するポイントによりどのコマンドが選択されているかを一目で把握することができます。とまあこんな感じで、各コマンドの選択も割と分かりやすく工夫されていますね。
 
 
 サンプリング周波数は固定だから設定いらずだし、各サンプルの名前を付けるなどの事前作業も不要。このように面倒なサンプリング前の作業は少なく、とにかく「思い立ったがすぐサンプリング」というスタイルにはハマるといった感じです。コマンド群も使用頻度の少ないものは省略されているそうですよ。
 
 
 なおディスプレイには4桁×7セグメントのLEDを採用。一応これでも入力信号レベルのモニターもできるようになっています。まあLCDに比べると圧倒的に情報量が少なく、使いにくいといえば使いにくいのですが、そこは考え方を変えて「イージー」と捉えるのが本機の掟です(笑)
 

AKAI S01(advertisement)
S01/赤井電機(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

ディスクドライブについて

 3.5インチ(2DD)FDDを標準搭載。音色データはこのフロッピーにセーブし、ロードすることになります。なおS01用のサウンド・ライブラリーも多数リリースされ、その中には同社のウインド・シンセ・コントローラー「EWI」専用のライブラリーもラインナップされていました。
 
 キーボーディストやDJの音源としてだけでなく、EWI(シンセ・サックスのようなもの)の音源としても効果的に使用することができます。
 
 
 

つぶやき的な

 『サンプラーは高価、そして操作が難しい』と敬遠していた人にとって、本機はその概念を覆す仕様をひっさげサンプラーの敷居を下げる役割を果たしました。32kHzのサンプリング周波数はややハイファイさに欠け、「原音忠実再生主義」のAKAIらしからぬ仕様と言えるかもしれませんが、DJが飛び道具的に使う分にはかえってそれがハマったかもしれませんね。標準搭載メモリだけで15秒ものフレーズ・サンプリングができるというのも強みでした。
 
 
 今日、このような昔のハードウェア・サンプラーをあえて使用する価値は見出しにくいのですが、男のロマンを追求してみたい人は探してもいいかもです(笑)。それなりにお安く手に入ります。
 
 
 
 関連記事(AKAIサンプラーSシリーズ およびその他サンプラー):
 「AKAI S612 ~アカイ・サンプラー「S」の元祖[1985年]
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 「AKAI S2000 ~AKAIとMacの強力タッグ!?サンプラー[1995年]
 
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 「AKAI REMIX16 ~アカイが作った変化球サンプラー for DJ [1995年頃]
 「AKAI Remix88 ~DJ Phrase Sampler [1997年]
 

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※1 …オプションの拡張ボード「EXM01」(15,000円)を装着する必要あり。取り付け作業はユーザー自身で行える。

仕様
■サンプリング方式:16ビット・リニア・エンコード
■サンプリング周波数:32kHz(固定)
■サンプリングタイム:Max15.625秒(※EXM01拡張時:31.25秒)
■インターナル・メモリー:1Mバイト(Max2Mバイト)
■最大同時発音数:8
■外形寸法:483(W)×88.1(H)×431(D)mm
■重量:6.7kg
■発売開始年:1992年
■発売当時の価格:99,500円

 

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