【Vol.389】KORG N264/N364 ~ダンスサウンドも作れる90年代コルグ・ワークステーション[1996年]
2018/11/28
今回取り上げるシンセサイザーは、KORGのマルチティンバー・シンセサイザーである「N264」および「N364」です。発売は1996年。N264とN364の内部仕様およびデザインはほぼ同じであり、N264は76鍵、N364は61鍵仕様となっています。
これは以前本ブログでも紹介した「KORG X3/X2 ~コルグ・ワークステーションの系譜より[1993~94年]」の後継機と言えるでしょう。M1から始まった同社のワークステーション・シンセの系譜の中の一モデルであり、90年代の多くの機種に冠せられていた「Nシリーズ」の初号機でもあります。
関連記事:「KORG M1 ~【前編】世界中で記録的大ヒットしたワークステーションタイプ・シンセサイザー[1988年]」
概要
デジタル波形を積んだ音源部に、16トラックのシーケンサー部、独立2系統のデジタル・エフェクターを内蔵し、本機のみでトータルな楽曲制作が可能ないわゆる “シンセサイザー・ワークステーション”。
特徴的なのは、本体内でレコーディングしたパターンを鍵盤上にアサインし、キーを押さえて再生できる「リアルタイム・パターン・プレイ/レコーディング」機能。これにより、当時流行していたダンス系サウンドのトラックメイクにも対応しました。
音源部とかシンセサイズとか
音源システムは、前モデルX2/X3を踏襲する同社オリジナルのaiスクエア・シンセシスというもの。内蔵の8MBの波形メモリーには430マルチサウンド(一般的な楽器音)+215ドラムサウンドを収録し、楽曲制作に便利な様々な楽器音を網羅。GM音源も搭載し、当時の市販GM音源集なども簡単に再生可能でした。
まあaiスクエア・シンセシスといえば、当時のコルグさんのPCM路線の音源システムですね。X2/X3よりも音色数は順当に増え、一方価格は下がっています。最大同時発音数も64音(シングル・モード時)と増加し、演奏時はもちろん楽曲制作においてもボイス数を気にする心配が減りました。
音作りは、当時の一般的なデジタルシンセの御多分に漏れずフィルター→アンプという流れで進行。こうして作った音色は「PROGRAM」と呼ばれる基本単位となり、PROGRAMを最大8つまで重ねられる「COMBINATION」モードにてさらに組み合わせることができるといったところです。
「リアルタイム・パターン・プレイ/レコーディング」機能について
これは、作ったフレーズ(パターン)を各鍵盤に任意に割り当てていき、鍵盤を押しただけでリアルタイムに演奏できるようにするというもの。
この “フレーズ”とは曲の断片(シーケンス)みたいなもので、はじめにユーザー自身が内蔵シーケンサーにて作成します。そうして作ったフレーズは本機では「パターン」と呼ばれる単位となり、作った複数の「パターン」を各トラックに配置して一つのソングを作っていきます。
一般のポップス/ロックの曲作りなどでも使える感じですが、この機能を生かすトラックといえば、当時流行していたいわゆるダンス系サウンド(テクノ、ハウス、ヒップホップ等)でしょう。
まあテクノやハウスといったダンス音楽は “リズム命”みたいなものだから、基本となるキック、スネアのリズムを先に作っておいて、そのあとに鍵盤に割り当てられたフレーズをリアルタイムに出し入れして、ダンスサウンドのリズム・トラックとして組み上げていくのに便利だったと思われます(→もちろんリアルタイム演奏したデータは直接シーケンサーにレコーディング可能)。
言い忘れましたが、本機のシーケンサー部は10ソング、100パターン、最大32,000イベントまで記憶可能となっており、この頃のこのクラスとしてはまずまずの内容といったところ。またアルペジエーターも5タイプ(UP、DOWN、ALT1、ALT2、RANDOM)搭載してますね。さらに3.5インチFDDも内蔵しているので、作った曲はフロッピーにがんがん保存できます。
内蔵エフェクトについて
本機は完全独立2系統のマルチ・デジタル・エフェクトを内蔵。各エフェクター(EFFECT1,2)には、リバーブ、ディレイ、フランジャー、ディストーション、エキサイターなど計47種類が用意されています。
N264, N364 /(株)コルグ 雑誌広告より画像引用
個人的つぶやき
実はN264/364の前年にはプロ仕様のモデル「TRINITY」がリリースされていたのですが、N264/N364はコルグのワークステーション・シンセの系譜としてはXシリーズの後継と見られるケースが多いですね。TRINTYは大型タッチパネルを備えた本格機ということで、お値段も20~30万円となかなかのものでした。当時N264/364は10万円台中ごろで手に入ったということで、予算に応じてチョイスできたというところですね。
個人的なN264/N364の印象としては地味といったところでしょうか。その頃の各社のワークステーションといえば、YAMAHAだとW7(もしくはEOS B900)、RolandだとXP-50あたりですが、やっぱりそれらと比べて華やかさに欠けていたという印象です(ってX2/X3の記事でも同じこと書いてますね。。)
せっかく「リアルタイム・パターンプレイ」機能によってダンサンブルなオケも手軽に組めるようになったのに、ルックスからして非常に落ち着いた大人な感じです(笑)。LCDとかも派手目のバックライトとかだともう少し目を引いたんだろうにね。楽器屋勤務時代に本機の展示品をよくいじってて、どうやって売り出そうか日々考えていたことを思い出します。。
まあ出音はKORGならではの堅実で汎用性の高い “使える”という感じであり、内容(特に音源部)はこのクラスとしては悪くなかったと回想します。個人的にはどうも本機のシーケンサーはなじめなかったけど。。
関連記事(コルグ・ワークステーション):
「KORG M1 ~【前編】世界中で記録的大ヒットしたワークステーションタイプ…」
「KORG X3/X2 ~コルグ・ワークステーションの系譜より[1993~94年]」
仕様
■音源方式:aiスクエア・シンセシス・システム
■鍵盤:N264=76鍵、 N364=61鍵(いずれもイニシャル/アフター・タッチ付き)
■音源部:(シングル・モード時)64ボイス、64オシレータ
(ダブル・モード時) 32ボイス、64オシレータ
■波形メモリー:PCM 8MB
■プログラム数:
【ROM】:200プログラム+GM128プログラム+8ドラム・プログラム/200コンビネーション
【RAM】:200プログラム/200コンビネーション
■シーケンサー部:10ソング、100パターン、最大32,000イベント、16トラック・マルチティンバー
■アルペジオ機能:5タイプ(UP、DOWN、ALT1、ALT2、RANDOM)
■エフェクト部:全47種(完全独立2系統・デジタルエフェクター)
■外形寸法:
N264= 1288.8(W)×106.1(H)×338.3(D)mm
N364= 1076.4(W)×106.1(H)×338.3(D)mm
■重量:X2=12.7kg、 X3=10.9kg
■発売当時の価格:X2=179,000円、 X3=158,000円
■発売開始年:1996年