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WALDORF 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.219】WALDORF MicroWave II ~フルデジタル化したMicroWave [1997年]

2019/01/03

 

 

 今回ご紹介するシンセサイザーは、1997年にWALDORF(ウォルドルフ)から発売された「MicroWave II」というモデルです。

 

WALDORF MicroWave II

 

 前モデルのMicroWave(以下初代機)の発表から実に8年後に発表されたこの「II」ですが、本体デザインおよび操作系はさほど変わっていないように見えます。音源方式も、PPG~Waldorf Waveシリーズに継承されてきた「ウェーブテーブル方式」を引き続き採用しています。ではどういった点が前モデルと異なるのでしょう。
 
 
 なお「ウェーブテーブル方式ってそもそも何?」という方は、初代機の記事「WALDORF MicroWave ~WALDORF初のシンセサイザー・90年代の“PPG”」にてある程度言及しているので参考にしてください。よって本記事は、音源方式についての記述は若干割愛ぎみに進めさせて頂きます。
 
 
 

MicroWave II概要

 初代MicroWaveを踏襲する、鍵盤なし・2U音源モジュールタイプのシンセサイザー。音源方式も引き続きウェーブテーブル方式を採用しているのですが、フィルターを含めた全ての内部処理がデジタル化(→DSPモデリング処理)されていることが大きな変更ポイント。
 
 
 関連記事:「WALDORF MicroWave ~WALDORF初のシンセサイザー・90年代の“PPG” [1989年]
 
 
 

仕様

 2オシレーター、2フィルター、2LFOという構成になっており、最大同時発音数は初代機の8音から10音に増えています。最大64種類の波形が並んで構成されたウェーブテーブルにより独特の個性的な音作りが可能。ちなみにこの “ウェーブテーブルを構成する波形はMax64種類”というのは、8年前の初代機と同じですね。というかPPGまでさかのぼって十年以上前から変わらない仕様と言えます。
 
 
 全体的な音作りの流れとしては、オシレーター→フィルター→アンプとなっており、それぞれにEG(ADSR方式)やLFOで変調をかけるといった辺りは、一般的なシンセの音作りと何ら変わりはないといった感じですね。
 
 
 シグナル・コントロール(制御信号)方面はデジタルであり、MIDIのコントローラー情報でパラメーターが制御できるようになっており、慣れれば操作は思ったよりも難しくないと思います。
 
 
 

フィルターについて

 前述したようにフルデジタル化されています。フィルターは2系統になり、一つは12dB/24dBのローパス、ハイパス、バンドパス(12dBのみ)などが装備されています。もう一つのフィルターは6dBのローパス、ハイパスですね。ハイパスやバンドパスは特に打楽器系の音色を作る時に便利に使えます。
 
 
 当然初代機の「CURTIS(カーチス)社製アナログ・フィルター」は排され、それまでの同社の定番ともいえる24dBのローパス・フィルターが、DSPベースの上記のようなフィルターに変更されたというのは大きな変化点と言えるでしょう。このデジタル・フィルターはもちろんアナログとは若干ニュアンスは異なる(と思われる)ものの、普通に効いてくれるし発振もします。
 
 
 

操作系について

 基本的なパネルデザインは初代機を踏襲しているのですが、LCDの下に4つのロータリー・ノブが追加されているのが大きな変更点。これにより特定のパラメーターを呼び出し、素早くエディットを行うことが可能になりました。

 

 

 

内部ソフトウェアについて

 ソフトのバージョン・アップは、WEBでダウンロードしたデータで行えるようになっていました。
 
 
 

その他の変更点(初代機からの)

 ディレイ、オーバードライブ、フランジャー、コーラスなどのオンボード・エフェクト・プロセッサが搭載されました。また波形同士のリング・モジュレーターも掛けられます。ユーザーパッチ・メモリーも、64から256へ増えてますね。
 
 
 

つぶやき的な

 単なるMicroWaveの後継機かと思いきや、フィルター含め全ての処理がデジタル化したことにより、初代機とは音のキャラクターが異なると言われています。DSP技術は、より安定した・かつクリーンなサウンドを提供してくれましたが、初代機のアナログ回路(VCF、VCA等)を使用したオリジナルの音と比べると、ギラツキ感、暖かさは損なわれたという話は聞きます。単に「II」が付いたという感じではなく、別物と捉えた方がいいかもしれませんね。
 
 
 MicroWave IIは、翌98年の「Microwave XT」、さらに新コンセプト(→アナログ・モデリング)の「Q」(1999年)へと進化していくわけですが、時代がアナログ・モデリングに進んでいくのをいち早く感じ、PPGの系譜を守りながらも、将来のためDSPモデリング技術を推し進めたという感じに思えます。
 
 
 
 関連記事:
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 「WALDORF MicroWave XTk ~キーボードが付いたMicroWave XT [1999年]
 

仕様
■最大同時発音数:10音
■音源方式:ウェーブテーブル方式
■ウェーブテーブル:64ROM、32RAM
■音色メモリ:256サウンド、128マルチ
■フィルター1:ローパス(12/24dB)、バンドパス(12dB)、ハイパス(12/24dB)
■フィルター2:ローパス(6dB)、ハイパス(6dB)
■外形寸法:483(W)×89(H)×220(D)mm
■重量:3.1kg
■価格:オープンプライス(当初の市場実勢価格:250,000円前後)
■発売開始年:1997年

 

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