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WALDORF 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.271】WALDORF MicroWave XTk ~キーボードが付いたMicroWave XT [1999年]

2019/01/03

 

 

 今回ご紹介するシンセサイザーは、ドイツのWALDORF(ウォルドルフ)社から発売された「MicroWave XTk」です。日本での発売は1999年末頃。まずWALDORFというメーカーは日本ではあまり知らない人も多いかと思います。以前本ブログでも紹介した「WALDORF MicroWave XT ~PPGの伝統を受け継ぐシンセサイザー」にて、WALDORF社について簡単にまとめた記述がありますので気になる方はご参考にしてください。

 

WALDORF MicroWave XTk

 

 本機MicroWave XTkは基本的に、前年に発売されたMicroWave XT(以下XT)のキーボード付きバージョンですね。独特のオレンジのカラーリングも健在です。なお「XTk」と「XT」の内容には重複する部分が多々ありますが、本記事では重要な部分についてはおさらいの意味を込めて改めて記述したいと思います。
 
 
 

MicroWave XTkについて

 「Microwave II」(1997年)と同等のシンセシス・エンジンを持つ「MicroWave XT」(1998年)のキーボード・タイプ。Microwaveシリーズとしては初の鍵盤付きモデルですね。鍵盤数は49鍵。
 
 
 音源方式は、名機PPG WAVEシリーズから代々受け継がれてきた「ウェーブテーブル・シンセシス方式」を採用。音源部は基本的に「XT」と同等スペックなのですが、鍵盤が一体化していることによる操作性の高さを実現しています。
 
 
 

基本スペック

 各ボイスは「オシレーター×2」、「ウェーブ・ジェネレーター×2」、「ミキサー×1」、「フィルター×2」、「ステレオアンプ×1」、「エンベロープ×4」、「LFO×2」から構成され、パネル上に配置された多数のノブ(および1個のダイヤル)を使って、迅速な音作りが可能となっています。内部処理はDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)によるものであり、10音ポリフォニックとなっています。
 
 
 「XT」よりもパネル面積が大幅に広くなっているため、各セクションも無理なく分かりやすく配置されてますね。キーボードタイプならではのピッチ・ホイール、モジュレーション・ホイールも装備しています。
 
 
 

ウェーブテーブル・シンセシス方式について

 本機には500種類のサンプル波形が収められており、その中から最大64種類の様々な波形を選んで順番に並べたものがウェーブテーブルと呼ばれます。つまりウェーブテーブルとは波形そのもの(の名前)ではなく、それら複数の波形をテーブルに置き並べたデータのことです。
 
 
 例えば微妙に異なる波形(例:EGやLFOなどでモジュレーション変化させたもの)をいくつか用意したとします。そして読み出す波形を連続変化(切り替え)させることにより、いわゆるスィープ効果(→サビ前にSE的に挿入される “プシューーン“、“シュウィーン”みたいな音)を得ることができます。
 
 
 あえてキャラクターの異なる波形をテーブルに配置して変化させるのも面白いですね。組み合わせによっては非常に派手で強烈な音色変化をもたらしてくれます。なお読み出す位置(=Startwave)は自由に設定が可能。

 

 

 

フィルター部について

 上記の言ってみれば “音色の変化”は、全てオシレーター部(ウェーブテーブル・シンセシス)で生成可能なのですが、本機ではそれとは別にデジタル・フィルターも搭載しています。
 
 
 フィルターは2系統あり、フィルター1はローパス(12/24dB)、バンドパス(12dB/24dB)、ハイパス(12dB)他、フィルター2はローパス(6dB)、ハイパス(6dB)など全10パターンが用意されています。
 
 
 フィルター1では自己発振も可能で全体的にキレのいいタイプですね。フィルター2ではレゾナンスを持たないタイプであり、どちらかというと音色の微調整向けといった感じです。
 
 
 Microwave II以降、フィルター部はアナログからデジタルに取って代わられたのですが(→初代Microwaveはアナログ・フィルターだった)、これだけのバリエーションがあれば音作りの幅は広くなったと捉えることもできそうです。デジタルでありながらアタック感の強さには定評がありました。
 
 
 

個人的つぶやき

 本機はキーボード・タイプということもあり、ライブ・キーボードと考えた場合にラックタイプよりもより使いやすくなっている印象ですね。XTkにはアフタータッチも装備されており、上記のような音色変化をアフタータッチでコントロール可能だったりします。操作しやすいノブ類で、リアルタイム操作もしやすくなっていると言えるでしょう。
 
 
 20年前近くの若干古いシンセサイザーですが、そのカラーリングも含め、ライブで個性を発揮したいプレイヤーにとっては今の時代でも面白い一台なんじゃないかなーと個人的には感じます。
 
 
 
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仕様
■鍵盤数:49鍵
■最大同時発音数:10音
■音源方式:ウェーブテーブル方式(64ROM/32RAM)
■音色メモリ:256(シングル)、128(マルチ)
■フィルター1:ローパス(12/24dB)、バンドパス(12dB/24dB)、ハイパス(12dB)他
 フィルター2:ローパス(6dB)、ハイパス(6dB)
■内蔵エフェクター:コーラス、フランジャー×2、オート・ワウ×2、オーバードライブ、アンプ・モジュレーション、ディレイ×3
■外形寸法:828(W)×96(H)×349(D)mm
■重量:11.2kg
■価格:オープン・プライス(発売当初の実勢価格:30万円前後)
■発売開始年:1999年末

 

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