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その他メーカー 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.227】DYNACORD CLS-222 ~レスリーシミュレーターの伝説的名機[1989年頃]

2018/11/26

 

 

 今回はご紹介する機材は、DYNACORD(ダイナコード)というドイツのメーカーが出した、1Uのレスリーシミュレーター・「CLS-222」というモデルです。発売されたのは(おそらくですが)1989年頃。日本での販売価格は188,000円でした。これ知ってる人ほとんどいないだろうなぁ。。

 

DYNACORD CLS-222

 

 ただその昔、『ダイナコード』という言葉自体が レスリーシミュレーターの代名詞にもなっていたほど有名だったそうです(→ダイナコードというメーカーは現在でもプロオーディオ機器全般を取り扱っていることで知られる)。そんな本機ですが一体どのような作りだったのでしょう、以下ご参考程度に。。
 
 
 

CLS-222概要

 巨大なレスリー・スピーカーの代用品として、キーボーディスト(オルガニスト)はもとより数多くのギタリストにも愛用されたコンパクト・ロータリー・シミュレーター。本体は1Uラックサイズですが、付属のフット・スイッチによりローターのON/OFF、および回転スピード(SLOW/FAST)を変更することが可能であり、操作性にも優れていました。
 

DYNACORD CLS-222 foot-pedal

 
 原理的にはドップラー効果を生み出す言わばモジュレーション系エフェクター。今日のシミュレーターのような高度なモデリング技術を使っていたわけではないのですが、当時としては非常にリアルな回転感を得ることができた画期的な製品でした。
 
 
 

操作系について

 フロントパネルに配されているのは「PRE-AMP」「ROTOR-EFFECT」「SPEED-CONTROL」の3セクション。以下詳細を記してみましょう。
 

PRE-AMP

 GAINつまみが搭載されており入力レベルを変更可能。PEAKランプもあるため、適度なレベルを設定するのに役立ちそうです。この手のエフェクターは、入力を上げて歪み(オーバードライブ/ディストーション)を得るというのが常套手段とも言えるのですが、本機では歪むというよりは音割れみたいになってしまうそうです。これでは音楽的ではないので、歪ませたい場合は別途オーバードライブ等のエフェクターをかませるとよいと思います。
 
 

ROTOR-EFFECT

 ROTOR-BALANCEつまみにより、左に回すと低域が、右に回すと高域の音が強調されます。いわばEQっぽい使い方ができ、音作り(音調節)という意味では本機で最も重要なパラメーターと言えるでしょう。
 
 
 BASISというつまみ(セレクター)では、「MONO」「STEREO1」「STEREO2」「SUPER STEREO」の4モードから選択可能。ここで音像が決まると言ってもいいわけですが、MONOだと回転感は損なわれるし、STEREOだと広がりが出る代わりに音の芯が弱まってしまいます。幸い本機では出力系が充実しているので、ライブではステレオ(L/R)+モノラルという3系統でアウトプットするというのがしばしば見られたりしました。
 
 

SPEED-CONTROL

 SLOW/FASTの切り替えレバーがあり、これで回転速度を変更することができます。とはいえ本機には標準でフット・スイッチが付属しており、そちらでSLOW/FASTを変更できたので、パネル上のこのレバーを使うことはまずなかったでしょう。
 
またこのセクションではTREBLEとBASSの回転速度もLEDで目視確認できます。

 

 

 

OUTPUT方面

 リアパネルには、1つのINPUTおよび3つのOUTPUT端子(→MONO/LEFT/RIGHT)が装備されています。面白いのが、ステレオOUTPUTはバランス(いわゆるXLR端子)および標準フォンの両方に対応しているところ。
 
 
 リアパネルには他にも、ドライバー(ねじ回し)で調節可能なTREBLEおよびBASSの回転速度変更つまみも用意されています。
 
 
 

個人的かんそう

 80年代のレスリーシミュレーターといえば、(エフェクト内蔵の)キーボードなどにも一応入っていたのですがどれも回転感に乏しく、実際のところは単なるモジュレーションだったり、オートパンで音を左右に振っただけの “疑似効果的”なものばかりでした。あるいはSLOWとFASTの中間がなく、回転が0から1にピシャリと変わってしまうとかそんな感じ。。
 
 
 そこで登場した本機は、SLOWからFASTへの立ち上がり(あるいはFASTからSLOWへの立ち下がり)において、ちゃんと回転感が変化する “MIDDLEスピード”を実現していたそう。
 
 
 実際、マルチでもない単体の(ロータリー・)エフェクターだけに20万円近くの出費というのはアマチュアにとっては難しいところだったと思いますが、そんなことは関係ない(笑)プロ・ミュージシャンがこぞって愛用し、それが結果的に「名機」の称号を得るまで広まったのかもしれませんね。
 
 
 
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