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ENSONIQ 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.96】ENSONIQ ASR-10 ~EPS-16 Plusが進化した高性能サンプラー[1993年]

2018/11/25

 

 

 今回ご紹介する機材は、エンソニックのサンプラー「ASR-10」です。発売は1993年で、当時の価格は398,000円。鍵盤も付いてるし、ぱっと見は(同社の)SD-1やTS-10と似てなくもないですが、本機はれっきとしたサンプラーです。当時先進の機能を満載した「サンプリング・キーボード」といった感じでしょう。

 

ENSONIQ ASR-10


 
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 系統としてはMirage→EPSシリーズからの流れであり、実際、評価の高かった「EPS-16 Plus」の後継機でもありました。サンプラーにシーケンサー、さらにエフェクターも内蔵しています。EPS-16 Plusとの違いを軸に内容を見てみましょう。
 
 
 

EPS-16 Plusとの互換

 基本的な構成はEPS-16 Plusと似ていて、サンプリング周波数44.1kHz、量子化ビット数・16(リニア)も同じですね。また基本操作や内部(ソフト)的な部分もそれほど変更点はありません。さらにはサウンド・ライブラリーもEPS-16 Plusと完全コンパチブルとなっており、「EPS-16 Plusからの買い替え」を検討していた人にとっては非常にぴったりな一台だったのではないでしょうか。
 
 
 

内蔵メモリーの増加

 標準で2Mバイト、メモリの追加により最大で16Mバイトまで拡張できました。EPS-16 Plusでは標準1Mバイト(最大2M)だったので、拡張前提と考えれば、この部分は大幅な増強といえるでしょう。 
 
 
 なお対応のメモリ(RAM)は、当時のMacintoshなどでも使われていたスタンダードSIMMを採用。ただし本機に対応しているのは1MBおよび4MBのみですので、今から入手することを考えている人は頑張って探してみてください。
 
 
 

ステレオ・サンプリングに対応

 EPS-16 Plusではモノラル・サンプリングでしたが、ASR-10ではステレオ・サンプリングに対応可能となりました。サンプリング・タイムは標準2Mバイトで約10秒(ステレオ44.1kHzの場合)です。メモリが増えると当然倍々で増えていきます。なおサンプリング周波数のモードは2つあり、44.1と29.76kHzです。
 
 
 

最大同時発音数について

 31音(29.76kHz時)、23音(44.1kHz時)に増えています。これは、ASR-10のために新開発されたカスタム・チップ("OTTO")により、それまでCPUに負担をかけていた演算処理を高速化し、処理能力が向上したことによるそうです。
 
 
 

追加機能

 「タイム・コンプレッション/エキスパンド」機能が加わっています。これはピッチを変えずにサンプルの長さを伸び縮みできるというもの。当時のMacintoshでは標準的な機能でしたが、単体のキーボード付サンプラーに搭載されたのは、(少なくともENSONIQ社製では)本機が初めてだと記憶しています。

 

 

 

エフェクト部について

 同社の高音質エフェクター「DP/4」の1ユニットに相当する50種類のエディット・アルゴリズムを搭載しています。この部分のパーツもカスタム・チップですね。本機のエフェクトはサンプル・インプットからの外部入力信号に直接かけることも可能となっています。
 
 関連記事:「ENSONIQ DP/4(DP/4+) ~4系統完全独立のマルチ・エフェクト・プロセッサー[1992年]
 
 
 

オプション・パーツについて

以下のオプションが用意されていました。

・アウトプット・エキスパンダー「OEX-6sr」 ※パラアウト用オプション
・デジタルI/Oボード「DI-10」 ※S/PDIF形式
・SCSIインターフェイス「SP-3」

 
ちなみにSCSIインターフェイスは「ASR-10 Version2.0」では標準装備になっています。パラアウト用オプションとSCSIインターフェイスは、本機のラック版「ASR-10R」では標準装備になっていますね。
 
 
 

個人的かんそう

 これも個人的に一通り操作したことがあるのですが、やはりサンプル・エディット時などの操作の難解さ(およびディスプレイ情報の分かりにくさ)は個人的に否めず、もっぱら「音を突っ込んで、音質の変化を楽しむ」用途として遊んでいましたね。。
 
 
 特に90年代中~後の時代って、ヒップホップやテクノのトラック・メイカー達が「AKAI MPC60を通すといい感じでローファイになる」とか、「KORG DSM-1を通すと独特の質感になる」とかって流行りましたよね。
 
 
 本機ASR-10は、独特の音キャラクターに変化するというよりは、(ソースにもよりますが)通すだけで若干音が太くなったように感じました。ただの思い込みだったのかもしれませんが。。
 
 
 
 関連記事:「ENSONIQ ASR-10R ~ASR-10のラック版!だけじゃない[1993年]
 

仕様
■鍵盤:61鍵シンセ・アクション鍵盤
■最大同時発音数:31音(29.76kHz時)、23音(44.1kHz時)
■マルチティンバー数:8
■メモリー:インターナルRAM 2Mバイト(最大16Mバイトまで拡張可能)
■サンプリング:16ビット・リニア
■サンプリング・タイム:
 標準時:10.3秒(44.1kHzステレオ時)~30.3秒(29.76kHzモノラル時)
 最大拡張時(16Mバイト):91.5秒~271.4秒
■エフェクト:50アルゴリズム(一つのアルゴリズムに4つの複合エフェクト内蔵)
■外形寸法:1025.5(W)×101.6(H)×368.3(D)mm
■重量:18.16kg
■発売当時の価格:398,000円  ※ただしASR-10Sからは348,000円に価格改定
■発売開始年:1993年

 

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