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1990年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.69】Roland MC-303 ~大ヒットを記録したグルーヴ・ボックス[1996年]

2018/11/25

 

 

 今回はRoland「MC-303」のお話です。発売は1996年。当時の価格は58,000円(税抜)でした。当時のハウス/テクノブームにうまいこと乗り、電子楽器業界としては珍しく大ヒット商品になりましたね。

 

Roland MC-303


 
 楽器名には「Groovebox」と冠されていました。シンセサイザーというカテゴリーではなく、(クラブ・ミュージック向けの)パフォーマンス・シーケンサーといったところでしょうか。個人的に思い出深い機種なのでじっくり紹介してみます。

 

Roland MC-303(advertisement)
MC-303/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用

 
 
 

そもそもローランドの「MC」シリーズとは?

 同社の「MC」シリーズといえば、MC-50などに代表される単体ハード型シーケンサーに代々冠されたモデル名であり、「303」といえば90年代にアシッド系テクノで脚光を浴び一世を風靡した同社のベースシンセ・TB-303のそれを連想させます。
 
 
 当時というかその数年前辺りから、TB-303のビキュビキュしたベース音が脚光を浴び、そのクローン音源がいくつも出始めてきた時代でした。そういったタイミングでの、本家ローランドからの「真打ち」とも受け取れる本機のリリースとなったわけです。僕は発売前から楽器ショーでも見たのですが、非常に面白そうという印象を持っていました。
 
 
 
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どんな楽器(シーケンサー)なの?

 本機は、あらかじめ組み込まれたいくつものパターンを組み合わせて編集し曲にするというタイプの楽器です。そのため、従来の「MCシリーズ」のような緻密なステップ入力というイメージではなく、どちらかというと同社の「TRシリーズ」に近い印象です。音源も内蔵しています。
 
 
 電源を入れてスピーカーとつないで、本体のプレイ・ボタンを押すだけで、開梱してものの10分後にはもうゴキゲンのダンスサウンド・トラックが鳴るといった感じですね。
 
 
 

プリセット・パターンの種類は?

 全133種類収録されています。トランス、ハウス、テクノ、ヒップホップ、ジャズファンク、ジャングル、トリップホップ、サルサなど、ダンス系を中心に多くのジャンルをカバーしていますね。なお自分で作成したユーザー・パターンは最大50種類まで記憶可能となっています。
 
 
 パターン・ナンバーはパネル中央の7セグメントからなるLEDに表示され、今鳴っているパターンと次に鳴る予定のパターンの番号が分かるようになっています。
 
 
 さらに各プリセット・パターンのパート・ミュートの状態を記憶しておけるバリエーション・パターンが用意されており、300種類以上ものパターンをすぐに使うことができます。
 
 
 

そもそも「パターン」とは?

 最大8個までの「パート」から構成されています(一つはリズム専用)。パートごとに8つのボタンが用意されているので、簡単に任意のパートをミュートすることができます。
 
 
 

内蔵シーケンサーのスペックは?

 本体にある16個のキーボード・パッドを使って、リアルタイムと2種類のステップ・レコーディングができ、搭載されたアルペジエーターで生成したアルペジオも録音できます。なお分解能は96クロック/4分音符、記憶音数は約14,000音。
 
 
 

パターンの編集は?

 クオンタイズ修正、ゲートタイム変更、トランスポーズ、ベロシティ変更など一通りの機能が揃っており、シーケンサーらしく小節ごとのデリート(消去)、インサート(挿入)も可能です。

 

 

 

個人的思い出

 これは僕が楽器屋に勤めていた頃に扱っていたのですが、発売当初から売れに売れた商品であり、展示品として店頭に置く余裕もありませんでした。なのでしばらくは “遊んでみたいけど実機がない…”といった状態が続いていました。
 
 
 とはいえこれを購入したお客さんと個人的にお友達になり、本機を使って一緒にトラックを作ったりテクノ・イベントを立ち上げたりと、ダンスミュージックの楽しさを知るきっかけとなってくれた一台として思い出深いですね。
 
 
 僕はトラックメーカー志向ではなかったのだけど、自身の参加するバンドのライブにて、本機を拝借してオープニングSEとかを演奏?した思い出があります。MC-303にてシーケンス・トラックを流して、カットオフやレゾナンスなどを操作したのだけど、フィルターの効きがいかにもデジタルな「カクカクした感じ」だったのが残念だった記憶があります。後日調べたところ、MC-303は同社のJD-800のフィルターを元にしているそうですね。
 
 
 

つぶやき的な

 そんなMC-303、20年以上前のモデルにもかかわらず今でも愛用している人も多いようです。数が出回ったという背景もあり、中古市場では比較的手に入りやすく安価ですね。
 
 単体ですぐに音が出るし、低予算で気軽に遊んでみたいという方は探してみてはいかがでしょうか。

 

 
 
 
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仕様
■パート数:16パート(メイン:8+RPS:8)
■トーン数:448音色
■ドラム・セット数:12セット
■最大同時発音数:28音
■エフェクト:リバーブ、ディレイ、コーラス、フランジャー
■シーケンサー部:トラック数8、ソング数10(最大)、プリセット・パターン数133、バリエーション・パターン数300、RPS用パターン数211、ユーザー・パターン数50(最大)、RPSセット30、パターン・セット30、最大記憶音数:約14,000音、テンポ:20.0~240.0、分解能:96クロック/4分音符、録音方法:リアルアイム、ステップ1/2
■キーボード・パッド:16種
■ディスプレイ:7セグメント×6桁(LED)
■外形寸法:378(W)×91(H)×244(D)mm
■重量:3.0kg(ACアダプターは除く)
■発売当時の価格:58,000円(税別)
■発売開始年:1996年

 

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