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ENSONIQ 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.248】ENSONIQ DP/4(DP/4+) ~4系統完全独立のマルチ・エフェクト・プロセッサー[1992年]

2018/11/26

 

 

 今回紹介する機材は、ENSONIQの「DP/4」というマルチエフェクターです。発売は1992年で、当時の国内販売価格は220,000円(税別)

 

ENSONIQ DP/4

 

 これはエンソニック初となる(2U)マルチエフェクト・プロセッサーですね。その頃のエンソニックが得意としたシンセやサンプラーではなく、純然としたエフェクト専用機です。
 
 
 

概要

 4インプット/4アウトプットを実現し、4つのソースをリアルタイム、かつ自由にエフェクト処理することが可能なエフェクト専用機。
 
 
 要するに、完全に独立した4台分のエフェクト・ユニット(本機では各ユニットはA,B,C,Dと呼ばれる)が一台に詰まっているような感じですね。さらにそれら4系統のエフェクトのパッチングもできるので、組み合わせ次第で本機のみでも相当凝った音作りが可能になります。
 
 
 なおプリセットは、本体ROMに200プログラムに加えて、RAM領域に200を装備。各エフェクト・タイプでは、リバーブ、コーラス、モジュレーション系をはじめ、コンプ、リミッター、ピッチ・シフト、ディストーションなどのギター向けなエフェクトもいくつか搭載されています。
 
 
 

4つの「インプット・コンフィグレーション」について

 パネル右上部には「input configuration」という項目があり(→以下のような図も描かれている)、1~4ソースが選択可能になっています。まあこれは文字通りソースをいくつまで入力するかというモード選択みたいなものです。インプットの数に応じて4つのエフェクト・ユニットを色々と割り当てられるわけですね。順に見てみましょう。
 

ENSONIQ DP/4 (input configurations)

 

1ソース

 インプット1に入力された信号はエフェクト・ユニットのA~Dに送られ、アウトプット1/2に送られます。まあ一般的な外部エフェクターといえばこのモードに近いと言えるでしょう。
 
 

2ソース

 インプット1→AおよびB、インプット3→CおよびDという、いわゆる2エフェクター仕様。
 
 

3ソース

 インプット1→A、インプット2→B、インプット3→CおよびDという、3エフェクター仕様。
 
 

4ソース

 A~Dのエフェクトユニットを完全に独立させた、4エフェクター仕様。
 
 なおA~Dの各ユニットは、どのinput configurationを選択するかどうかに関わらず、後述するルーティング(パッチング)機能により様々な変化を与えることができます。
 
 
 

ユニット間のパッチングについて

 ソースの入力数とは別に、各ユニット間の信号ルーティングも様々に選択ができるようになっています。おおまかに以下3つが用意されています。

シリアル(直列)
パラレル(並列)
フィードバック

 

 またこれらに加え「接続なし」(→つまり各ユニットが独立)というのもあったりします。ルーティングについての考え方としては、ヤマハDX7に代表されるようなFM音源のアルゴリズムを連想して頂ければよいと思います(もっともFM音源の場合はオペレータの組み合わせのことですが)
 
 
 まあこの辺りの音作りは最初から狙って設定するのは非常に難しくて、実際のところ『偶然変態的な音色になっちゃった!』という楽しみ方も往々にしてあったと思われます(笑)

 

 

 

入出力端子について

 リアパネルには4つのインプットおよび4つのアウトプット端子が装備されています。それとは別に、フロントパネルにも入力用の端子が一つありますね。これはハイ・インピーダンスな楽器向けのインプット端子らしく、ギターやベースなどとつなげてもOKという感じです。
 
 
 ちなみに本機にはギターや生楽器などに適したプログラムもいくつか用意されており、DP/4はキーボーディストやレコーディング・エンジニアのみならず、多くのプレイヤーに向けて開発されたという意図が見られます。そういえばボコーダーなんかも収められてますね。
 
 
 あと、ペダル(オプション)からでもエフェクト・パラメーターのコントロールが可能な仕様になっています。
 
 
 

DP/4+について

 1995年に発売されたDP/4の機能増強版。価格は据え置きの220,000円(税別)
 
 DP/4との違いはいくつかあるのですが、フロントパネルのインプット端子がいわゆるキャノン(XLR端子・3-Pin)にも対応したところが注目ポイント。ボーカル向けエフェクターということも意識したということでしょうか。ちなみにこの端子は標準フォン・プラグと共用で使えるようになっています。またリアパネルにはフットスイッチ端子が1個追加されました。
 
 
 他にもパネルのレイアウトがちょっと異なってたり、一部スイッチがLED搭載(→ONで光る)になっているなどの違いも見られますね。とはいえ基本的な独立4イン/4アウトの設計は同じです。なお内部的な追加・変更点もいくつかあるのかと思いますが、申し訳ないですが未確認です。
 
 
 

個人的つぶやき

 海外を中心としたプロの現場で圧倒的支持を得て、パラレルタイプのマルチエフェクターの名機といった評価を受けることが多い本機なのですが、まあさすがに一アマチュアが使いこなすには若干手に余るという印象でしょうか。。そもそもエフェクター単品に20万円以上も出すのはちょっと…という感じですし、200ものプリセットがあればそれで充分!というユーザーも多かったのではないかと思います。
 
 
 音質のキャラクターは、(ソースにもよりますが)当時のエンソニックのシンセにも通じる、必ずしも高品位とは言い難いがただならぬ存在感(笑)という印象でしょうか。まあ個人的には本機ではリバーブくらいしか試したことがないのですが。。
 
 
 その頃のエンソニックの音が好きで、アルゴリズムによる変態的な音色変化をプログラムしたいという人にとっては、今でも楽しめる(かもしれない)一台だと思います。
 
 

仕様
■AD/DA:16ビットリニア
■プリセット:400(ROM200、RAM200)
■入力端子:フロント×1、リア×4
■外形寸法:482.6(W)×88.7(H)×396.8(D)mm
■重量:約5.44kg
■発売当時の価格:220,000円(税別)
■発売開始年:1992年

 

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