【Vol.429】E-mu Xtreme Lead-1 ~リアルタイム操作に優れたダンスミュージック向けシンセ[2000年]
2019/03/09
今回取り上げる機材は、E-muの1U音源モジュール・「Xtreme Lead-1」です。日本での発売は2000年で定価は99,800円(当時)。“64ボイス BPMシンセサイザー”と銘打たれており、これはその頃の流行の一つだったテクノ/ダンスミュージックシーン向けに開発された1U音源モジュールです。
同社(E-muブランド)の1Uモジュールといえば数多くリリースされたのですが、本機はそれらラインナップの後期に分類されますね。同時期に発売された製品としては「B-3」「MO'PHATT」などがあり、これらは基本仕様(設計)はほぼ共通となっています。
Xtreme Lead-1はまあ以前本ブログでも紹介した「Orbit」の後継機といったところでしょうか。Orbit含め、過去のE-mu1U音源モジュールの記事は本ページの末尾にまとめてリンクを貼ってありますので必要に応じて参考にしてみてください。
Xtreme Lead-1概要
かつての同社の「Orbit」の流れを汲む、ハウス/テクノなどのダンス・ミュージックに適したサウンドを収録した音源モジュール。内蔵された多数のアルペジオ・パターンやLFOをMIDIクロックに同期させることができ、好きなようにBPMを変化させてグルーヴィなフレーズを鳴らすことができます。
またサンプル・プレイバックのみにとどまらず、最大50種類ものフィルターを内蔵しフィルタリングにも対応。音質(S/N)もよく、フロアで大音量で鳴らしても存在感が際立つ、実に現場向けの一台といった趣き。
音源部/音色について
内蔵ROMには当時大容量だったと言える32MB(標準状態)の波形メモリーを搭載し、512ROM+512ユーザーのプリセットを搭載。この512音色は細かくカテゴリー分けがされており、たとえば「bas」「pad」「hit」「sfx」「vox」みたいに3文字に略されてLCD窓にも表示されます。これら音色は鍵盤等につなげなくても、パネル上の「AUDITIONボタン」で簡単にフレーズを確認できますね。
あと内蔵LFOや、強烈な変化を生み出す12ポール「Z-Plane」フォルマント・フィルター(全50種類)などにより、単なるプレイバックにとどまらない音色変化も施すことが可能になっています。
コントローラー
パネル上にある4つの “リアルタイム・コントロール・ノブ”には様々なパラメーターから選択することが可能であり(全12系統)、簡単な操作で直感的な音色変化に対応します。まあこれはProteus2000および姉妹機の共通設計ですね。
本機ではいわゆるリズム・ループが数多く収録されているので、パターンを鳴らしっぱなしにして、LFO(RATE)やフィルター(カットオフ)などをノブに割り当て、リアルタイムにグリグリすると相当面白いと思います。
Super Beats Modeについて
同社のOrbitに搭載されていたBeats Modeを進化させた「Super Beats Mode」を搭載。これは何かというと、各リズムパート(スネア、キック、ハットなど)の再生専用16トラック・シーケンスといったところであり、数百種類もの様々なリズムパターンを内蔵しています。
特にカテゴリー「bts」(beatsプリセットの略)の音色には、ダンサンブルなリズム(および音色)ネタがループ状態でサンプリングされており、鍵盤の各ノートを押すだけで様々なフレーズを次々と繰り出すことが可能。もちろん外部からのクロック(BPM)にも同期して動きます。
なお内蔵のアルペジエーターは、UP、DOWN、RANDOMなど全8パターンを搭載。パラメーターは多く、細かな作りこみにも対応します。
拡張性について
別売りのExpansion Sound ROM(当時の定価39,800~49,800円)を追加することにより、16~32MBの波形を追加することができました。なおこのオプションROMは姉妹機のProteus2000、B-3にも使用可能となっています。
さらに、同社のサンプラー「E4 ULTRA SAMPLER」のFlash ROMにセーブしたサンプルを、Xtreme Lead-1(およびProteus2000、B-3)のサウンドROM拡張スロットに装着すれば、自前でサンプリングした音ネタも移植することができます。これはオプションとはいえ特筆すべき仕様ですね!(ただし当時16MBの純正Flash ROMの定価は45,000円と安価ではなかったが)
E-mu B-3, Xtreme Lead-1/エンソニックジャパンインコーポレイテッド 雑誌広告より画像引用
個人的つぶやき
“BPMシンセサイザー”ってそもそもどういう意味よ? というのが当時の僕の第一印象(笑)。出音は輪郭がはっきりしていて存在感はあり、E-muらしさを感じられる機種ではありました。拡張ROMのクオリティが高いなんて口コミを耳にしたことがありますが、1枚につき本体価格の約半分のコストってなかなかだったですね。。
さておき、本機は直感的なアイディアをリアルタイムにサウンドに反映させることができることから、フロア向けのパフォーマンス・シンセサイザーな一台といったところでしょうか。今どきのEDMでも使いどころがあるのかも、ないのかも。。
■関連記事(E-mu 1Uラック)
【初期シリーズ】:
「E-mu Proteus /1 ~イーミュPROTEUSシリーズの初号機[1989年]」
「E-mu Proteus /2 ~オーケストラ音源特化型モジュール[1990年]」
「E-mu Proteus /3 World ~世界中の楽器のサウンドを集めた音源モジュール」
「E-mu PROTEUS/MPS ~PROTEUSに鍵盤が付いた!」 ※本機のみ鍵盤付きモデル
「E-mu PRO/CUSSION ~90年代初頭のドラム/パーカッション専用音源」
【中期シリーズ】:
「E-mu MORPHEUS(モフェウス) ~Z-Planeフィルターを初搭載したPCMシンセ…」
「E-mu Orbit/Orbit V2 ~90年代のダンスミュージック特化型音源モジュール」
「E-mu Planet Phatt ~ヒップホップ、ラップ等向けサウンド・モジュール」
【後期シリーズ】:
「E-mu B-3 ~E-muが作ったジョン・ノヴェロ仕様オルガン[2000年]」
「E-mu Planet Earth ~世界中の民族楽器を収めた音源モジュール[2000年頃]」
仕様
■最大同時発音数:64音
■MIDIチャンネル数:16
■サンプル再生レート:44.1kHz
■プリセット数:512ユーザープリセット、512ROMプリセット、(Proteus2000用エクスパンション・サウンドROMにより拡張可能)
■サウンドメモリー:32MB(最大拡張時64MB)
■フィルター特性:最大12ポール(50種類)
■外形寸法:482(W)×44(H)×216(D)mm
■重量:3.1kg
■発売当時の価格:99,800円
■発売開始年:2000年