【Vol.430】KORG NS5R ~多くの音色配列に対応したコルグ製DTM音源モジュール[1996年]
2019/03/09
今回ご紹介する機材は、1996年末頃に発売されたコルグのDTM音源モジュール「NS5R」です。発売時の定価は69,800円。パソコンの進化・普及に伴い、主に90年代後半から盛り上がったDTM向け音源モジュールの中の一機種ですね。 小型なハーフラック・サイズです。
この時代のDTM音源といえばローランド(GS音源)とヤマハ(XG音源)が2強として君臨しており、その他のメーカーはいかにGS/XGとコンパチビリティ(互換性)を確保し、数多くの音源フォーマットに対応するかという傾向が見られました。
それではNS5Rの全容をざっくり説明してみましょう。本機の前身機であるX5DR(1995年)も時々引き合いに出してみます。
関連記事:「KORG X5DR ~ライブでも使えるGM音源モジュール[1995年]」
音源/音色ほうめんのスペック
心臓部の音源は、同社伝統の「aiスクエア・シンセシス・システム」を搭載。最大同時発音数64ボイス/32チャンネル・マルチ仕様ととなっています。内蔵音色(ROM)は標準状態で以下。
1,177音色プログラム(GM含む)、512コンビネーション+31ドラムプログラム
X5DRの「128音色プログラム(GM)+8ドラムプログラムおよび、プリセット100プログラム/100コンビネーション」と比較すると、大幅なアップになっていますね。実際波形メモリも、8→12MBに増えてます。
これに加え、RAM領域(=書き換え可能)では「128音色プログラム、128コンビネーション+2ドラムプログラム」が確保されていました。後述しますが、本機では本格的な音色エディットにも対応しオリジナル音色は本体内に保存しておくこともできたのです。
なおコンビネーション音色(→8つまでのプログラムをレイヤー/スプリットスプリットすることが可能)はいわゆる手弾き演奏として使ってもアリと言え、本機をライブ用の拡張音源として使用することも現実的に行えました。
音色配列の互換性について
世界標準のGM(Level1)やKORGスーパーシリーズ(X5音色配列)互換はもちろん、GS/XG音色配列バンクにも対応。当時市販されていた曲データのほとんど全てを再生できたという感じですね。
まあ実際のところは本機でXGデータなどを演奏させると、音色間の音量バランスが変わってしまったり、音色のニュアンスが異なる感じになってしまったという話は聞きますね。。ちなみに本機の後継機である「NX5R」(1999年)では最初からXG音源のドーター・ボードが搭載されるようになり、文字通り “XG音源完全コンパチ”を実現することになるのでした。
音色エディットおよび操作性について
本機のエディット・パラメーターは、オシレーター、フィルター、アンプ、LFO、各々エンベロープ・ジェネレータなどを調整可。当時の一般的なデジタルシンセ並みのエディット機能があったと見ていいでしょう。
エフェクトも2系統(47種類)が内蔵されており、空間系から歪み系まで幅広く用意されています。もちろんエフェクトのエディットやルーティングも可能。
パネルに配されたスイッチ類は大きく押しやすく、さらに大型のダイヤル(ロータリー・エンコーダー)によりこのクラスのモジュールとしては操作性は高い方だったと思います。144×40 フルドットLCDを採用したディスプレイ部も見やすく分かりやすかったと回想します。
各種パソコンとの接続について
PCとの接続はMIDIを介しても行えますが、本機には専用のシリアル端子を備えていたため、ケーブル1本で直接PC側とデータのやり取りが行えます。
AG-001B(PC/AT互換機用。D-sub9ピン)
AG-002B(Macintosh用)
AG-003B(NEC PC-98用)
AG-004B(PC/AT互換機用。D-sub25ピン)
上記ケーブルはいずれもオプション(別売)でした。PC/AT互換機というのは現代でも見られるいわゆる “DOS/V機”のことであり、当時で言うとWindows3.1/95に対応するソフトが多く出回っていました。
ちなみにホストコンピューターの選択はNS5R本体内のパラメーターで行うようになっています。ローランド(例SC-88)、ヤマハ(例MU80)ではHOSTを物理スイッチで選択する方式であり、ちょっとした差別化が見られる部分ですね。
拡張性について
Wave Blaster互換のドーター・ボード(AG-WB。定価は当時20,000円)を増設すれば、音色を増やしたり最大同時発音数をMaxで96ボイスまで拡張可能でした。
NS5R/(株)コルグ 雑誌広告より画像引用
嗚呼つぶやき
当時のRoland(SC-88)、YAMAHA(MU80)の2強の牙城を崩すべく、KORGさんが放ったハイコストパフォーマンス・DTM音源モジュールといったところでしょうか。
クラスを超えた内蔵音色数、大きく回しやすいダイヤル、フルグラフィカルで見やすい画面、高い互換性などなど、後発だけあってよく練られた良品だと思います。液晶バックライトもオレンジ(アンバー)/グリーンに変わったりして、見た目的にも斬新なギミックと言えるかもです。
とはいえほぼ同時期にローランドから「SC-88pro」が発売されており、セールス的にはコルグさん苦労されたんじゃないかな。。という気がしないでもないですね。。
ちなみに発売当時の広告では “NS5Rの愛称大募集!”なるキャンペーンが催されていました(→最優秀賞にはNS5Rプレゼント)。その後どのようなニックネームが付けられたのかは謎ですね。。どなたかご存知の方いらっしゃったらご一報ください。
【後日追記】
本ブログの読者様からNS5Rの愛称を教えて頂きまして、その名も『NS五郎』だったそう。“5R” → “ゴロー”ということでしょうか。。
別に56ボイスじゃないし(※本機は64ボイス)、単なる語呂合わせのみだとすれば個人的には腑に落ちない感じではあります(笑)。情報提供ありがとうございました!
仕様
■音源方式:aiスクエアシンセシス・システム
■パート数:32
■最大同時発音数:64ボイス
■波形メモリー:PCM 12Mバイト
■内蔵エフェクト
47種(完全独立2系統デジタル・マルチ・エフェクター)
■プログラム数:
ROM: 1177音色プログラム、512コンビネーション+31ドラムプログラム
RAM: 128音色プログラム、128コンビネーション+2ドラムプログラム
■ディスプレイ:144×40 フルドットLCD(2色バックライト)
■外形寸法:218(W)×45(H)×241.5(D)mm
■重量:2.0kg
■発売当時の価格:69,800円
■発売開始年:1996年末頃