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E-mu 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.194】E-mu Planet Phatt ~ヒップホップ、ラップ等向けサウンド・モジュール[1997年頃]

2018/11/25

 

 

 さて今回の一台は、E-muの1Uラック音源「Planet Phatt(プラネット・ファット)」です。日本発売は1996~97年頃で、以前本ブログでも紹介した「E-mu Orbit V2」とほぼ同時期に発表されました。ダンス・ミュージックの中でも、特にヒップホップなどに特化したサウンドが特徴的と言えますね。

 

E-mu Planet Phatt

 

 

概要

 ヒップホップやラップ、トリップホップ、ソウルなどの、(当時の)最先端のブラック系音楽シーン向けに投入された音源モジュール。本機は「THE SWINGING SYSTEM」というサブ・ネームを持っており、まさに “揺らす”ためのスウィング・ビートが多数内蔵されています。
 
 
 収録音色もいかにもなシンセ音というものは少なく、ボイス系やヒット系、ギターなどのアコースティック楽器系、はたまた無音のレコード・ノイズなど、「ロービット・ローファイ」なサンプラーから出てくるようなサウンドが多く収録されていますね。
 
 
 

仕様

 16マルチティンバーで同時発音数は32音。640種のファットなプリセット・サウンドを内蔵しています。またOrbit同様、17タイプの6Poleレゾナンス・フィルター(Z-Plane Filter)を搭載しており、このフィルターのエディット具合で変化に富んだサウンドを創り出すことも可能。
 
 
 

音色エディットについて

 プリセットの元となる波形は480種類用意されており、「プライマリー・インストゥルメント」「セカンダリー・インストゥルメント」という2つの波形を組み合わせて音を作っていきます。ADSRタイプのエンベロープ(→正確にはHOLD TIMEを加えた "AHDSR"というタイプ)や、2系統のLFOも装備しており、それぞれのインストゥルメントに対して掛けて自分好みの音色も作成可能といった感じですね。
 
 
 あと全ての波形は「リバース」ができ、もう一方のインストゥルメントとの組み合わせによっては非常に面白い音が出たりします。
 
 
 

Beat Mode™について

 本体にプリセットされている2小節のリズム・シーケンス・パターンをループさせるという再生モードのこと。要するにプリセット音色と同様の扱いでリズム・パターンの演奏データを持っているといった感じです。Planet PhattではこのBeat Modeを100ループ内蔵しています。
 
 
 この辺りの仕様はOrbitシリーズで見られたものとほぼ同等であり、後述する「Launch Pad」を使えば、さらに直感性の高い制御を行えるようになるというのもOrbitとの共通点と言えます。

 

 

 

Launch Pad(オプション)について

 Planet Phattを、ライブや打ち込みの際にリアルタイム制御するための別売りコントローラー。Launch Padについては「Orbit」の記事でも書きましたが、Planet Phattでもそっくり使えるので以下改めて記してみましょう。
 

E-mu Launch Pad

 

 Launch Padとはひと言でいうと、様々なMIDI機器で使える “汎用MIDIコントローラー”であり、Planet Phatt(やOrbit)以外には使えないということはありません。
 
 
 またPlanet Phatt(やOrbit)の全てのパラメーターを制御できるというものでもありませんが、この音源とコントローラーの組み合わせは高い親和性を発揮してくれます。主な操作パラメーターを挙げてみましょう。

●任意のコントロール・チェンジの可変
 →パネル上の5本のスライダーに自由にアサイン可能。フィルター開閉、モジュレーション可変など。
●トランスポーズおよびピッチの可変
 →右上にあるツマミにて操作。
●外部シーケンサー(およびMMC対応レコーダー)の制御
●プリセットおよびバンクの切り替え
●Beat Mode™の操作

 
 また、パネル手前にある12個の大きめのボタンは “1オクターブ分のベロシティ・センス付きパッド”となっていて、これは要するに鍵盤のようなものです(実際は-4~+5オクターブまでの鍵域をカバー)。またこれらはテンキーとしてのボタンも兼ねているので、BPM指定などの数値入力でも使えます。
 
 
 

つぶやき的な

 印象としては、同社のOrbitが(おおざっぱに)テクノ系とすれば、本機は(おおざっぱに)ブラック系とでも言いましょうか。「テクノっぽいノリよりも黒っぽいノリの方が好み」という人にとっては間違いなくPlanet Phattの方です。実際、当時のヒップホップ系トラックでは本機のプリセット音色がよく聴かれたそうですよ。
 
 
 キーボーディストとしては、とりあえず本機でループを鳴らしながら、イマジネーションが湧くがままに、ハマるベースラインとかを作っていくのが楽しそうです。
 
 
 
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仕様
■最大同時発音数:32音
■サウンドメモリー:8MB(16bit、39kHzサンプリング)
■内蔵音色数:640種
■内蔵ドラム・ループ数:100

■外形寸法:482(W)×44(H)×216(D)mm
■重量:3.1kg
■発売当時の価格:オープンプライス
■発売開始年:1996~97年

 

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