【Vol.127】E-mu PRO/CUSSION ~90年代初頭のドラム/パーカッション専用音源[1991年]
2018/11/25
今回取り上げる電子楽器はE-mu Systemsの「PRO/CUSSION」というドラム/パーカッション専用音源モジュールです。発売は1991年で、日本での発売当初の価格は200,000円でした(→後に値下げ)
概要
内蔵音色は同社のEmulator IIIのライブラリーをベースにコンバートされた「220波形、556スタック(ROM)、128ドラムキット」。いわゆる通常のドラム/パーカッション音色群に加え、結構な数のシンセ・電子音(および若干のベース音)を搭載しています。サンプリングは16ビット、39kHzとなっていて、ロックからラテン・パーカッションまであらゆるジャンルにマッチするキットを内蔵しています。
一世を風靡した同社のデジタル・サンプリング・マシン「Emulator III」の技術(音色)を投入したという意味では、以前本ブログで紹介した「Proteus /1」と近いですね。実際、発音数など他のスペックも共通点がいくつか見受けられます。
基本スペック
波形やらキットやらちょっと分かりにくいかもしれませんので、順に説明してみたいと思います。
220サンプル波形
音色の最小単位となる波形のことで、これが220内蔵されています。計4Mバイトに及ぶその内訳を見てみましょう。
SAMPLED SOUNDS 1~140(いわゆる通常のドラム/パーカッション音色波形群。若干のベース音も)
CLASSIC WAVEFORMS 141~144(Sine Wave、Triangle Wave、Square Wave、Sawtoothの4つ)
HARMONIC WAVEFORMS 145~166(ハーモニーを与える波形)
DIGITAL WAVEFORMS 167~220(実に様々な波形。「181 Moog Lead」などいかにもシンセっぽいものも)
556スタック
スタックとは、上記のサンプル波形にエンベロープ・カーブ等様々なエディットを加えたものです。1スタックにつき4波形までレイヤーが可能。このスタックが実質的な「音色」単位であると見ていいです。
スタックはROMに556、RAMに512用意されており、このスタックを組み合わせて「キット」を作成します。
128ドラムキット
キットとは音色を組み合わせたひとまとまり(セット)のことで、上記のスタックを組み合わせて作成します。ROMキット(ファクトリー・キット)は0~63、RAMキット(ユーザー・キット)は64~127、合計128キットとなっています。キットはワンタッチでセレクトが可能です。
ゾーン
指定した鍵域ごとにスタックを割り当てたもので、24まで設定可能。それぞれボリューム、チューニング、パンなどを設定することができます。
操作系について
パネル上でパラメーターを操作できるボタンは、左から「MASTER」「EDIT」「ENTER」「CURSOR」「DATA」の5つのみ(+ボリュームノブ)。LCDは16文字×2行。取扱説明書は100ページを超えるなかなかのボリュームですが、PRO/CUSSION本体のみでその機能を使いこなすにはかなりの熟練が必要になるかもしれません。。
アウトプットについて
Main(L/R)、sub1(L/R)、sub2(L/R)の3つのステレオ・アウトを装備。サブ・アウトプットでは、「インサーションケーブル」(Yケーブル、センド/リターン・ケーブルとも)を使って外部のエフェクト・プロセッサーと接続することで、メインのアウトプットにエフェクト成分をミックスすることもできます。なお本体内にはエフェクターは内蔵していませんが、LFOは掛けられます。
個人的つぶやき
E-muの音源モジュール群は、日本産のシンセでは見られない独特の音色キャラクターを持っていて、本機にもその太くて落ち着いた鳴りが見られます。さすがに本機1台のみで今どきのドラム音制作をするとなるとちょっと無理がありますが、DTMドラム音源に混ぜて使うなど、ありきたりなドラム音色と差別化を図りたい人にはおすすめですね。
■関連記事(E-mu 1Uラック)
【初期シリーズ】:
「E-mu Proteus /1 ~イーミュPROTEUSシリーズの初号機[1989年]」
「E-mu Proteus /2 ~オーケストラ音源特化型モジュール[1990年]」
「E-mu Proteus /3 World ~世界中の楽器のサウンドを集めた音源モジュール」
「E-mu PROTEUS/MPS ~PROTEUSに鍵盤が付いた!」 ※本機のみ鍵盤付きモデル
【中期シリーズ】:
「E-mu MORPHEUS(モフェウス) ~Z-Planeフィルターを初搭載したPCMシンセ…」
「E-mu Orbit/Orbit V2 ~90年代のダンスミュージック特化型音源モジュール」
「E-mu Planet Phatt ~ヒップホップ、ラップ等向けサウンド・モジュール」
【後期シリーズ】:
「E-mu B-3 ~E-muが作ったジョン・ノヴェロ仕様オルガン[2000年]」
「E-mu Planet Earth ~世界中の民族楽器を収めた音源モジュール[2000年頃]」
仕様
■最大同時発音数:32音(16ステレオ)
■サンプリング周波数:39kHz
■データ・フォーマット:16ビット・リニア
■マルチ・ティンバー数:16
■内蔵音源数:220波形、556音色(=スタック)、128ドラムキット(ROM0~63、RAM64~127)
■オーディオ・アウトプット:6(ステレオ×3系統)
■外形寸法:482(W)×44(H)×216(D)mm
■重量:2.0kg
■発売当時の価格:200,000円 ※のち200,000円→170,000円→145,000円に価格改定
■発売開始年:1991年