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1960~80年代 KORG 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.428】KORG M1R ~大ヒットワークステーション「M1」の音源モジュール版[1988年]

2019/03/10

 

 

 どうもー。今回ご紹介する機材は、1988年秋頃にコルグから発売されたシンセサイザー「M1R」です。発売当初の定価は210,000円。
 
 リアルなPCM音源&本格シーケンサーを搭載したワークステーション型シンセの元祖・「KORG M1」の鍵盤部だけを取り除いた、いわゆる音源モジュールです。

 

KORG M1R

 

 M1(シンセサイザー・キーボード)といえば同年春頃に発売され当初から反響を呼んでいました。そしてM1Rは、そのM1の多彩な内容を純粋に2Uラックに収めたといった感じの製品ですね。鍵盤がない分、価格も248,000円→210,000円と若干お求めやすくなりました。
 
 
 

M1のおさらい

 音源部は、ハイクオリティな16ビット・サンプリングサウンドを搭載した「ai(advanced integrated)シンセシス・システム」を搭載。この音源部を核に、デジタル・シーケンサー(8トラック)および高品位のデジタル・エフェクター(2系統・33種類)を内蔵。それぞれの専用機を用意しシステムを構築することなく、これ一台のみで、個人でも高い質の音楽制作が完結できるようになりました。
 
 
 でもって今回のM1Rですが、ごく細かい部分を除けばM1とほぼ全く同じ性能(内容)を持つ一台と言ってよいと思います。それくらい同じです。なお本ブログでは以前M1の記事を記述しているので、より詳しい情報を得たい方はそちらをご参照ください。今回はその辺りは割愛させて頂きます。
 
 
 関連記事:
 「KORG M1 ~【前編】世界中で記録的大ヒットしたワークステーション…[1988年]
 「KORG M1 ~【後編】ワークステーションタイプ・シンセの出発点[1988年]
 
 
 うーん、なので今回はM1とM1Rの微細な変更点とか、M1の記事では紹介しきれなかった別売りのサウンドライブラリー(カード)なんかを紹介してみたいと思いますよ。
 
 
 

M1とM1Rの違い

■グローバルモード内にて、ダンパーペダルの極性逆転(ダンパー・ポラリティ)機能の省略
■エディットコンビネーションモード内の「COMINATION」において、PROGRAM音色のトランスポーズ可変域が±12→±24に拡張
■グローバルモード内にて、“MIDIオーバーフロー機能”が追加

 
 MIDIオーバーフロー機能というのは簡単に言うと、複数台のM1/M1R接続システムにおいて同時発音数を32音までに増やす機能のこと。M1R本体の最大同時発音数(=16音)を越えた際に発音されなかったノートオン/オフ メッセージがMIDI OUTから出力され、別のM1(もしくはM1R)にて鳴らせるという感じですね。
 
 
 あと、ボタン形状やパネルレイアウトも若干変わっています。ジョイスティック(ベンダー&モジュレーションコントローラー)は当然省略され、VOLUMEやVALUEスライダーは回しやすいツマミ型に変更されていますね。
 
 
 

操作性について

 ラック形状なので本体のみでの操作性には限界がありますが、当時Macintoshなどでサウンドエディットが行える「TINY EDITOR(タイニー・エディター)」というコンピュータ向け音色エディットソフトも販売されていました(→M1/M1R共通)。
 
 
 aiシンセシスの音作りや音色管理を、広いCRT上で合理的に行えるということで、当時のMac&M1(M1R)ユーザにとっては便利に使われたと思われます。
 
 
 

M1REXについて

 M1Rのインターナル・メモリーを強化し、当時のコルグ製次世代ワークステーション「Tシリーズ」の波形を搭載したモデル。発売は1990年、定価は235,000円でした。
 
 
 内容としては、2UラックのM1Rを踏襲した音色増強版といったところ。190種類のマルチサウンドと85種類のドラムサウンドを扱うことができます。見た目的にはM1Rとほぼ違いはありませんね。
 
 
 なおエクスパンションキット「EXK-M1」(M1専用)、「EXK-M1R」(M1R専用)を取り付ければ、手持ちのM1/M1RをEX仕様にバージョンアップすることも可能でした。

 

 

 

別売りの音色カード(プログラムカード)について

 オプションの音色カードも非常に充実していたのがM1/M1Rの特徴の一つ。以下が全てではありませんが、ざっくりさらってみましょう。
 

MSCシリーズ
※2枚1組 定価各13,000円 50プログラム₊50コンビネーションを収録したカードセット
 
 MSC-1S “STRINGS etc.”
 MCS-2S “SYNTH1”
 MSC-3S “DRUMS1”
 MSC-4S “ORCHESTRA1”
 MSC-5S “PIANO”
 MSC-6S “FRETTED INSTS1”
 MSC-7S “SYNTH2”
 MSC-8S “PERCUSSION”
 MSC-9S “ORGAN”
 MSC-10S “ETHNIC”
 MSC-11S “BRASS”
 MSC-12S “SYNTH3”
 MSC-13S “ETHNIC2”
 MSC-14S “SOUND EFFECTS”
 MSC-15S “DRUMS2”
 MSC-16S “ENVIRONMENT”
 
 
★MPCシリーズ
※1枚 定価各8,500円  100プログラム₊100コンビネーション収録
 
 MPC-11 “AKIRA”  ※石黒彰氏制作
 MPC-12 “WORLD OMNIBUS”
 MPC-13 “BUNMAY”  ※小川文明氏制作

 
 なおM1/M1Rのサウンドカードは、いくつかのサードパーティーからも出されていました。特にリットーミュージック社が発売した『生福』(生方則孝&福田裕彦)シリーズなんかは有名どころと言えるでしょう(笑)。まあ生福といえばDX7用がよく知られていたですが、M1用でも出してます。

 

KORG M1R(advertisement)
M1, M1R/(株)コルグ 雑誌広告より画像引用
 
 
 

つぶやき

 M1の基本仕様をそのまま2Uに凝縮した、“ラックモジュール化された純粋なM1”といったところでしょうか。前述したようにM1+M1Rという組み合わせだと32音ポリフォニックという恩恵に預かれたわけだし、M1の拡張音源という目的でも使いやすくなっている一台と言えます。
 
 
 なお「『キーボード・マガジン 2019 WINTER (No.403)』(リットーミュージック発行)」でも、B'zのライブツアー「LIVE-GYM Pleasure 2018 -HINOTORI-」のサポートキーボーディストを務めておられた増田隆宜さんが、M1Rを同ツアーの機材システムに組み込んでいたという記述がありました。
 

 
 
 “過去の楽曲を急遽演奏することになった時のために”とのことですが、バックアップ用とはいえ30年前の機材を最新ツアーで導入しているのはすごいことですよね。。B'zファンの人でM1およびM1Rをもし中古ショップ等で見かけたら、ぜひお約束で『ZERO』のイントロをかましてみてください(笑)。音色はPROGRAM 01の「Piano 16'」辺りがおすすめですよ。
 
 
 
 関連記事:「KORG M1 ~【前編】世界中で記録的大ヒットしたワークステーションタイプ・シンセサイザー[1988年]
 

仕様
■最大同時発音数:16音(シングル・モード時)
■音源方式:aiシンセシス・システム
■波形メモリー容量:2Mワード(4Mバイト相当)
■音源フォーマット:16ビット
■プログラム数:最大100プログラム
■コンビネーション数:最大100コンビネーション
■シーケンサー部:
 8トラック/8マルチティンバー、最大7,700ステップ(ROMカード使用時最大15,400ステップ)
 10ソング、100パターン
■ディスプレイ:40文字×2行 バックライト付きLCD
■外形寸法:430(W)×88(H)×405(D)mm
■重量:5.9kg
■発売当時の価格:210,000円
■発売開始年:1988年

 

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