【Vol.45】Oberheim DPX-1 ~再生専用サンプラーの元祖[1987年]
2018/11/24
今回ご紹介する機材は、Oberheim(オーバーハイム)のサンプラー「DPX-1」です。発売は1987年で、日本での発売当初の価格は348,000円でした。2Uラック・マウント形状のこのサンプラー、なかなか個性的といえるので順を追って説明してみましょう。
発売当時の背景
当時(1985~86年頃)の代表的なサンプラーといえば、「E-mu イミュレーターII」「Ensoniq ミラージュ(DSK-8/DMS-8)」「SEQUENTIAL プロフェット2000/2002」などですが、それらサンプラー用のオリジナル・ディスクからサンプルを読み出し、本機・DPX-1で演奏が可能という、当時としては画期的なコンセプトの元開発されました。
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ちなみにオーバーハイム社の創業者であり、「シンセサイザーの生みの親」と言われることもあるトム・オーバーハイム氏も開発に関わっています。
DPX-1の特徴は?
再生専用なので、本体にエディット機能はありません。操作も簡単で、どのメーカーのソフトでもとりあえずディスクを入れてロード・スイッチを押すだけです。本体へのロードが完了したら、パッチ(メモリー)ナンバーを選択して、MIDI接続したキーボードを弾けば音が鳴るという次第です。
Oberheim DPX-1/(株)ハモンドスズキ 雑誌広告より画像引用
外観上の特徴は?
目を引くのが、「3.5インチFDD」と「5インチFDD」が同時に装備されているフロントパネル。これ地味に珍しいですね。当時のパソコン(NEC PC-9800シリーズ等)でもこんなの見たことないかも。。
他社のサンプル・ディスク(ライブラリー・ディスク)は3.5インチも5インチも混在しているわけで、本機では両方とも対応させる必要があったのでしょう。そして、どちらのサイズのディスクがセットされているか(あるいはどのメーカーのソフトなのか)を本機が自動的に判断してロードしてくれます。ちなみに2枚のフロッピーを同時に使うことはできないらしいです。
コンバーターとしても使える
当時イミュレーターIIは莫大なソフト(サウンド・ライブラリー)を揃えていましたが、採用されていたのは5インチ・フロッピーでした。そこで、イミュレーターII用ソフトを、DPX-1にて3.5インチにデータを移し替えて保管する、という使い方もできました。
実際、5インチのディスクより3.5インチのディスクの方が場所を取らず、取り扱いも簡単かつ信頼性も高かったので、本機はデータ保管用途としても重宝したのかもしれません。
音質は?
DPX-1とイミュレーターIIの音色を比較すると、若干ニュアンスが異なったそうです。これはD/Aコンバーターやアナログ回路の部分まで一緒というわけではないので、当然と言えば当然ですね。
DPX-1では、8ビットによる圧縮方式でフォーマットされた他社のデータ・ディスクであっても、全て12ビットの直線データ(リニア)に変換しているそうです。
まとめ的な
当時は、豊富なサンプリング/エディット機能を装備したサンプラーが続々と登場しましたが、実際のところ「ユーザー・サンプリング」によって質の高いサウンドを得るのは非常に難しくもありました。
複数社の優れたサウンド・ライブラリー資産に着目し、それらを統一して再生できるようにしようという考えは画期的だったのかもしれません。
仕様
■同時発音数:8音ポリフォニック
■データ・フォーマット:12bit
■プリセット:100サンプル・メモリー(PARCH SELECT 00~99)
■内蔵メモリー容量:1Mバイト
■3.5インチ&5インチFDD実装
■接続端子:オーディオ・アウト(モノラル)、MIDI(IN,OUT,THRU)
■外形寸法:482(W)×95(H)×356(D)mm
■重量:8.3kg
■発売開始年:1987年
■発売当時の価格:348,000円