【Vol.416】Roland RD-600 ~ピアノサウンド・操作性が向上した90年代製ステージピアノ[1997年]
2018/11/28
今回は、ローランドが1997年に発売したステージ・ピアノ「RD-600」を紹介してみたいと思います。価格は198,000円(税別)。これは、以前本ブログでも紹介した「Roland RD-500 ~1994年発売のステージ向けデジタル・ピアノ」の後継モデルといえるデジタル・ピアノですね。90年代に多くのミュージシャンに使われました。
RD-500から3年後にリリースされた本機ですが、セールスポイントである “高音質なピアノ音色”をはじめ、RD-500からは様々なグレードアップ点が見受けられます。RD-500との違いをちょいちょいはさみつつ話を広げてみましょう。
RD-600概要
同時発音数64ボイス(16パート・マルチティンバー)、88鍵ハンマーアクション構造鍵盤を採用した本格ステージ・ピアノ。フルコンサート・グランドピアノからサンプリングされた高品位なアコースティック・ピアノをはじめ、ライブで使用頻度の高いエレクトリック・ピアノ音色なども数多く収録。
使いやすいインターフェイスと、充実したマスターキーボード機能を備えた、とりわけステージ仕様にこだわった当時のハイクラス・デジタルピアノ・モデルといったところです。
内蔵音色について(個人的所感入り)
(当時としては)ぜいたくに24Mバイトの波形メモリーを内蔵したプリセットは、アコピ系が32種、エレピ系が16種、ほかにもクラビネット、シンセ系やオルガン音色まで合わせて全128種類の音色パッチを搭載しています。
本製品でやはり注目すべきはピアノ音色なのですが、クラシカルなソロ曲で使いやすい温かい音色から、バンドでのロックな曲でも存在感を放つ固めの音色まで、使い勝手のよいピアノ・サウンドがなかなか充実しているという印象です。
現代のハイエンド・ステージピアノのように全鍵サンプリングがほどこされているわけではありませんが全体的な鳴りはナチュラルであり、ハリのあるつややかな高音域は個人的には好みでした。
鍵盤部/タッチについて
同社の定評ある88鍵のハンマーアクション鍵盤を採用。タッチは重すぎず軽すぎずという(個人的)印象。演奏者の好みに合わせて、タッチの感度と音量を調節する「ベロシティ・センシティビティ機能」を搭載。ライト/ミディアム/ヘビーの3段階に設定でき、さらに-32~+32まで細かく調節することも可能です。
同時発音数について
RD-600の同時発音数は64音となっており、RD-500の28音に比べたら実に倍以上に増えています。64音になったことにより、複雑なコード演奏やダンパーの多用による音切れの心配もほぼないですね。
なおRD-600は16パートのマルチ音源としても使用することができます(※RD-500では8パート)。一応バンド向けの様々な楽器音色も内蔵しているし、外部シーケンサーと併用することによりこれ一台でアンサンブルを奏でることもできます。
内蔵エフェクトについて
本機では以下のエフェクトを内部に搭載しています。なおリバーブとコーラスはパネル上のボタンで簡単にON/OFFが可能。
■リバーブ
音場の異なる全8種類の中から選択可能。リバーブの深さ(Reverb Level)、残響時間(Reverb Time)、高域成分のカット(Reverb HF Dump)、ディレイ音の繰り返し回数(Delay Feedback)といったパラメーターが任意に調整できます。
■コーラス
コーラス音の大きさ(Chorus Level)、揺れの速さ(Chorus Rate)、揺れの深さ(Chorus Depth)などが設定可能。リバーブでもそうですが、これらパラメーターはパネル上のコントローラーでリアルタイム調整ができるようになっています。
■3バンド・イコライザー
LOW/MID/HIGHごとに調整が可能。ちなみにこの3バンドというのはRD-500と同じですが、RD-600ではスライダーからつまみに変更されています。個人的には本機は若干低音の響きが弱いかなという印象であり、そういった時にEQである程度のフォローができるのがGOODだと感じていました。
■EFX(ステレオ・マルチ・エフェクト)
同社のJV/XPシリーズでも採用されていた様々なエフェクトがセットになっているセクション。全40種類。これらはRD-500にはなかったものであり、RD-600の売りと一つとも言えるかもしれません。
そしてエフェクトというのかは不明ですが、ハンマーを叩いている時のノイズ音や、ダンパーを解放した際の共鳴効果を再現する「シンパスティック・レゾナンス効果」を採用している点も面白いですね。
あとエフェクトではありませんが、パネル上の4本のスライダーを使えば、音色のアタック/ディケイ/リリースタイムおよび、ブライトネス(→音色の明るさ)を調節することができます。
操作性/マスター・キーボード機能について
前述したようにパネル上には、様々なパラメーターを操作できるスライダー/つまみが設置されており、ステージ・パフォーマンス時などリアルタイムに調整することが可能になっています。もちろん鍵盤スプリット(およびレイヤー)もOKで、鍵域を左右(ロワー/アッパー)別々の音色を割り当てて独立してコントロールすることもできますね。ロワー/アッパーごとのトランスポーズや音量なども設定可能。
またRD-500に引き続き、本機は外部音源をコントロールするマスター・キーボードとしての機能も装備。RD-600の内部音源はINTパートとしてコントロールできるのは当然として、外部音源はTXパートとして管理され、これまた鍵盤スプリット(および左右パートの音量調節)なども簡単に行うことができます。
あとマスターキーボードらしく、ベンダー・レバーも搭載されていますね。
出力端子について
RD-500から引き続きなのですが、本機でも「FIXED OUT(L/R)」というステレオ出力端子が、通常のLINE OUT(L/R)とは別に装備されています。このFIXED OUTとは何ぞや?というと、
本体で音量やEQを操作しても、この端子(FIXED OUT)からの出力には影響しない
というもの。ミキサーに立ち上げて外部エフェクターで細かく作りこむもよし、ライブで自身のモニター用(あるいはPA送り用)として使ってもよしといったところ。出力がステレオ2系統あるというのは、地味だけどけっこう便利なんですよね(笑)
RD-600/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
回想します
RD-500と共に、90年代ローランドの(ライブ寄りの)デジタルピアノ製品ラインを支えたヒットモデルといったところでしょうか。アマ・プロ問わず当時多くのミュージシャンがステージ/スタジオで愛用し、20年以上経った現代でもまれに目にすることがあります。
個人的には、勤めていた楽器店で入荷された本機を、ヒマな時によく弾いていたのが思い出されますね。僕は1996年頃に同社の「A-90EX」というステージピアノ(というかマスターキーボード)を購入していたのですが、RD-600ではピアノのバリエーションが増えていたりと、『やっぱり(ピアノ)専用機は違うな~』と感じたのを回想します。
現行モデル「RD-2000」(2017年発売)から20年前に発売されたクラシカルな本機ですが、90年代にこんな機種もあったということで若い人の記憶にとどめておいて頂ければ僕は満足です(笑)
関連記事(Roland RDシリーズ他):
「Roland RD-1000 ~ローランドのデジタルピアノ・RDの源流[1986年]」
「Roland RD-300(/RD-300S) ~MIDIコントローラーが充実した80年代製・RD」
「Roland RD-500 ~1994年発売のステージ向けデジタル・ピアノ[1994年]」
「Roland A-90EX ~90年代半ばのおしゃれマスター鍵盤 兼ステージピアノ」
仕様
■鍵盤数:88鍵(ハンマー・アクション構造、ベロシティ対応)
■最大同時発音数:64音
■インターナル・メモリー(内蔵音色):
セットアップ×64、トーン×128(リズム3セット含む)
■エフェクト:コーラス、リバーブ、EFX(ステレオ・マルチ・エフェクト)、イコライザー(3バンド)
■外形寸法:1419(W)× 391(D)× 141(H)mm
■重量:24.5kg
■発売当時の価格:248,000円
■発売開始年:1997年