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1990年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.374】YAMAHA RY30 ~ドラマーのノリを再現する “超リズム・マシン” [1991年]

2018/11/28

 

 

 今回紹介するなつかし機材は、1991年にヤマハから発売されたリズムマシン「RY30」です。当時の定価は70,000円(税別)

 

YAMAHA RY30

 

 「RY」シリーズといえば、90年代に発売された同社の一連のリズムマシンに冠せられていた型名として名を残していますね。そしてこのRY30は、RYシリーズの先陣を切った初号機でもあります。では早速内容を見ていきましょう。
 
 
 

RY30概要

 12個のタッチセンス付きキーパッド(インスト・キー)を採用し、ベロシティによる音の強弱も含んだリアルタイム入力が可能なリズムマシン。リズムマシンとしては初めて(唯一?)リアルタイム・パラメーター・ホイールを装備。実際のドラマーが叩いたかのような微妙なタイミングのズレも再現可能であり、当時のシンセばりの豊富なパラメーターによる多彩な音作りにも対応。
 
 
 本体にカードスロットを備えており、別売りカードによる波形の供給が可能。また同社のシンセ・SY77やTG55などの波形データも取り込むことができます。
 
 
 関連記事:
 「YAMAHA SY77 ~2つの音源を持つオールインワン・シンセ[1989年]
 「YAMAHA TG55 ~新音源AWM2を搭載したモジュール版SY55 [1989年]
 
 
 

音源部について

 同社のサンプリング路線である「AWM2音源」を搭載。同時発音数は16(クロック音含む)。
 
 
 プリセット音色は本体内に96ボイス(音色)で、前述したようにオプションのカードから追加することも可能。音色の元となる原波形は174種を内蔵しており、当時のポップス、ディスコサウンド、ハードロックまで、幅広いジャンルの音色を網羅していました。以下、96音色の中の基本音色をざっと挙げてみましょう。
 

●スネア×19種 ●キック(バスドラ)×15種 ●タム×16種 ●ハイハット×9種 ●シンバル×6種

 
 あとはパーカッション系が×21種、SE系が×10種といったところ。音色としてはいい意味でクセが弱く、オケになじませやすいキャラクターだったと回想します。メーカーさんとしては音圧の高さも推しポイントの一つだったそうですが、個人的にはそれほど感じませんでしたね。。
 
 
 

キーパッドについて

 12個の独立したキーパッド(本機ではインスト・キーとも呼ぶ)を備え、各パッドはベロシティ・センス付き。これにより、1打ごとの強弱(→ベロシティ操作)や、実際の打点位置の違いによる音色変化(→フィルター操作)を演出することもできそうですね。
 
 
 

音色エディットについて

 本機では、原波形を元に2波形をレイヤー(重ね)して音色作りが可能。
 
 この辺りは以前本ブログでも紹介した「KORG S3」(1990年)にも通じる感じといいましょうか。そうしてレイヤーした波形は、フィルター(発振可能。レゾナンス付き)やフィルターEG、あるいはディケイ、レベル、パン、ピッチEGなどのパラメーターを変えることができ、当時のシンセサイザー並みの音色エディットができたといったところです。

 

 

 

リアルタイム・パラメーター・ホイール装備!(世界初)

 本機には、パネルの左側にシンセサイザーでよく目にするホイールを埋め込んであります。このホイールによって、ボイスごとに独立してピッチ、ディケイ、フィルター、パン、バランス(→2レイヤー時の音量バランス)を可変することができます。このホイールを搭載したというのが当時本機が世界初だったらしいですよ!
 
 
 もちろんリアルタイムに反応してくれて、その変化情報はそのままパターン・データとして記憶することが可能。それまでのリズムマシンでも細かくパラメーター・エディットができる機種はあったのですが、入力後にちまちま1音ずつエディットとしていくというちょっと面倒な感じでした。
 
 
 特にピッチをリアルタイムで揺らして面白い効果を付けるのは本機の得意?とするところであり、簡単にトリッキーなデータが入力できるということで重宝されたと思います。またこのホイールによって、ジャストではないいわゆる「前ノリ」「後ノリ」も簡単に表現することができました(→クロック・ムーブ機能)。ちなみに本機の音符分解能は1/96分音符。
 

YAMAHA RY30(advertisement)
RY30/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

つぶやき的な

 ヤマハのシーケンサー製品ラインナップが「QX」→「QY」になったように、リズムマシンも「RX」→「RY」と呼応する形になったという感じでしょうか。。基本設計はRXを踏襲しつつも、本機では発音タイミングを細かくクロック・シフトできたということでいくつか進化点も見られますね。
 
 
 RY30といえば、同時期のリズムマシンであるローランドの「R-8」と熾烈な販売競争?を繰り広げていたことが思い出されます。リズムマシンも90年代に入るとだいたい基本仕様が固まってきており、あとはいかにリアルに、さらに付加機能を追加して独自のカラーを提示していくかという点で各メーカーも頭をひねっていたものと思われます。
 
 
 本機RY30は、いかにも機械的というイメージだった “リズムマシン”に、(リアルタイムで)ヒューマンなニュアンスを加えられるということで、使い込みによっては結構面白くなる可能性を秘めた一台といった感じだったでしょうか。
 
 
 
 関連記事:
 「YAMAHA RX8 ~16ビットPCM音源を搭載した80年代リズムマシン[1988年]
 「Roland R-8/R-5 ~ヒューマン・リズム・コンポーザー[1989~90年]
 

仕様
■音源:AWM2音源(直線16bit、デジタル・フィルター付)
■最大同時発音数:16音(クリック音含む)
■原波形メモリー:174種(内84種はリバース波形)
■音色メモリー:
 プリセット音色:96ボイス
 インターナル:128ボイス(内32ボイスはROMカード・エリア兼用)
■音符分解能:1/96分音符
■インスト・キー:12(ベロシティ・センス付)
■内部メモリー:20ソング(1ソング最大999パート)、100プリセット・パターン、100ユーザー・パターン、17パッド・バンク、ボイス/ノート・アサイン・テーブル×4、パターン/ノート・アサイン・テーブル×1
■入力方法:リアルタイム、ステップ、リアルタイム・パラメーター・モディファイ、リアルタイム・クロック・ムーブ
■ディスプレイ:24文字×2行LCD(バックライト付き)
■外形寸法:370(W)×67(H)×254(D)mm
■重量:2.1kg (付属のACアダプタ PA-1505除く)
■発売当初の価格:70,000円
■発売開始年:1991年

 

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