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1990年代 KORG 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.256】KORG S3 ~リズムマシンの概念を変えた “リズム・ワークステーション” [1990年]

2018/11/26

 

 

 今回紹介する機材は、1990年にコルグから発売された「S3」というリズム・ワークステーションです。発売時の定価は124,000円。“リズム・ワークステーション”というのはコルグさん独自の呼び名であり、S3はざっくり言ってリズムマシンの一種ですね。

 

KORG S3

 

 当時の同社のミュージック・ワークステーション(Mシリーズ、Tシリーズ)の概念を受け継ぎ、これ1台でリズム・パートに関するほぼ全てを完結できるという触れ込みでした。
 
 
 

概要

 音源部には16ビット処理のPCM波形を75種類内蔵。バスドラやスネア、ハイハットなどの他、タム、コンガなどのパーカッション音色なども収めています。波形はいわゆるシンセのようにエディットすることが可能で、タッチセンス付きのパッド8つに自由に割り当てることができます。
 
 
 なお、オプションとして様々な拡張PCMカード(KSCシリーズ。プログラムカードと合わせて2枚一組)も発売されました。
 
 
 

S3のサウンド・システムについて

 本機では「si(sonic integrity)」と呼ばれるシステムによって全体の音作りをデザインしていきます。このsiシステムとは、原波形をエディットし(エンベロープなど)組み合わせ、最終的にエフェクト処理を施すことによって1つのサウンドにする方式です。
 
 
 これは当時のデジタル・シンセサイザーの音作りの考え方に非常に近く、打楽器音でもワンショットごとに様々なシンセサイズができるという点で画期的でした。本機では上記のように素材として作った “音色”を、一つのパッドにつき2つまで組み合わせて割り当てることができます。
 
 
 

siシステムの補足

 いわゆる皮モノ(ドラム)の音色波形には、「ヘッド音」(→いわゆるアタック音)、「シェル音」(→いわゆる胴鳴り・共鳴音)が別々に用意されており、これらを様々な形で組み合わせて音作りが可能になります。スネアのヘッド音にバスドラのシェル音を足し合わせてみたり、あるいはタムのヘッド音にコンガのシェル音を組み合わせるとか、ちょっと想像がつきにくい音色も作れそうですね。
 
 
 この価格帯のリズムマシンに関して、これほど音色作りの自由度が高いものは当時ほぼ見当たりませんでした。
 
 
 

内蔵エフェクトについて

 本機には2系統のデジタル・エフェクトを内蔵しており、音色ごとに個別のエフェクト処理を施すことが可能です。各種リバーブをはじめ、ディレイ、コーラス、フランジャー、フェイザー、トレモノ、EQ、エキサイターなど、全28種類のエフェクターを備えています。
 
 
 この辺りも当時のワークステーション・シンセに近い感じの作りになっていて、従来の “最後に全体的にリバーブを掛けて音場を整える”といった感じの使い方から、各音色ごとに細かなエフェクティングができるようになっています。
 
 
 つまりは外部の単体エフェクターを使わなくても、本機のみでエフェクト処理もほぼ完結できるといった感じですね。ちなみにS3のアウトプットは、ステレオアウト(L/R)、マルチアウト(1/2/3/4)となっています。

 

 

 

シーケンス・トラックについて

 S3には上記のように音源部だけでなく、もちろんリズム演奏を作るシーケンス部も内蔵しています。本機には8つのシーケンス・トラックを備えていて、通常は1~4トラックが「パターン・トラック」、5~8トラックが「ソング・トラック」として組み立てていきます。
 
 
 パターン・トラックは従来のリズムマシンの考え方に近いですね。例えばスネアやバスドラから1~4小節単位の「パターン」を作り、それらパターンを組み合わせて「ソング」にしていきます。
 
 
 上記のようにいわゆるベーシックな基本ビートはパターン・トラックで組み立てるとして、「ソング・トラック」ではオーバー・ダビング(オーバーダブ)するためのトラックとなっています。これはレコーディングされた区間のデータは消去され、新しいデータに書き換えられるというトラックになっています。
 
 
 フィル・イン(おかず)などを加える際は、このソング・トラックにてオーバーダブすることにより効率的に演奏データを管理することができそうですね。ちなみにS3のシーケンサー部は、合計8トラックをそれぞれ独立したシーケンス・トラックとして使用することも可能であり、外部音源の制御用に使うこともできます。
 
 
 

同期について

 本機ではMIDIによるシンクはもちろん可能なのですが、それに加えSMPTEシンクロナイザーを搭載しています。これによりMIDIとVTRなどとの映像同期も可能になります。
 

KORG S3(advertisement)
S3/(株)コルグ 雑誌広告より画像引用
 
 
 

つぶやき的な

 まあ従来のリズムマシンだと音色のシンセサイズというのは非常に限られていて、エフェクトも(リバーブ中心で)数種類のみという機種が多かったものでした。そこで本機は、音色のエディットおよびそれらの組み合わせ、さらに個別のエフェクティングなどを実現し、これ一台でとことん作り込みたい人にとってはうってつけのマシンだったと思います。
 
 
 とはいえ本機のみでの音色作りは結構な難易度だったそうで、単純にアタック音と共鳴音を足してもなかなか自然な感じに鳴ってくれないことが多かったそうな。。“MIDIで(2台のシンセ内のドラム音色を)レイヤーする方が楽”なんて話も。。まあ僕も聞いた話ですのでご参考までに。
 
 

仕様
■方式:si(sonic integrity)システム
■ウェーブ・フォーム数:75
■ティンバー数:160(80プリセット+80ユーザー)
■キット数:20(10プリセット+10ユーザー)
■シーケンサー・セクション:
 最大30ソング、100パターン、8トラック(4パターントラック+4ソングトラック)
■外形寸法:348(W)×57(H)×337(D)mm
■重量:2.6kg
■発売当初の価格:124,000円(税別)
■発売開始年:1990年

 

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