【Vol.294】Roland JS-30 ~フレーズ・サンプリングに特化したDJ向けギア[1995年頃]
2018/11/26
今回紹介する電子機材は、ローランドが1994~95年頃に発売したサンプリング・ワークステーション「JS-30」です。当時の価格は159,000円(税抜)。そもそも “サンプリング・ワークステーション”とは何ぞや? というと、サンプラー、シーケンサーなどの機能を一体化させ、DJパフォーマンスなどで活用してくれいという、かつてローランドさんが独自に提唱した製品コンセプトなのです。
ちなみに本機は以前本ブログでも紹介した「Roland MS-1」とほぼ同時期に発表され、MS-1の上位機種とも捉えられる位置付けのマシンでした。どのような製品だったのでしょう。
関連記事:「Roland MS-1 ~気軽に使えるハンディ・サンプリング・マシン[1994年頃]」
概要
リミックスやダンスミュージックなどのフレーズ・サンプリングを多用する音楽制作スタイルに適したサンプリング・ワークステーション。基本的な作りはいたってサンプラーであり、ソースから取り込んだ音声(フレーズ)を簡単サンプリングでき、本体パネルのパッドにアサインし瞬時にプレイバックできるというものでした。ちょっとしたシーケンサーも付いてます。
サンプリング性能
サンプリング周波数は44.1/22.05kHzの2段階、最大同時発音数は8音。メモリーは標準1Mバイト(最大4Mバイトまで拡張可能)で、最大拡張時には16ビット・44.1kHz(→つまりCD音質)で45秒のサンプリングが可能。なお外付けメモリーは、当時Macintoshなどでも使われていた汎用のSIMMが使えました。
基本操作
①マイクもしくはラインで音やフレーズをサンプリングし、各パッドに割り当て
②必要に応じてサンプルをエディット
③パッドを押して発音
本体右上にある「SAMPLING START/STOP」ボタンを押すと押すと録音が始まり、もう一度押すとストップします。そうして素材をサンプリングすると即座にパッドにアサインされ、サンプルを再生しつつ簡単にスタート・ポイントやエンド・ポイントをエディットできるようになっています。
その後、不要な部分を消す(→トランケート機能)、レベルの補正(→ノーマライズ機能)などの編集もボタン一つで可能であり、この辺りの操作感(スピード感)は悪くないと思います。
BPMアジャスト機能について
複数のサンプル同士のBPM(Beats Per Minute…演奏のテンポを示す単位)を合わせる際にスピーディーに行えるようにする機能。JS-30では直接数値で入力したり、ボタンを叩く(→タップ)ことでテンポを刻み簡単に調節可能ということで、フレーズ・サンプリングを得意とする本機の売りと言える機能でした。
なおパネル上に配されている、12個の発音用のパッド(キーボード)はテンキーにもなります。
シーケンサー部について
ローランド独自のRPS(リアルタイム・フレーズ・シーケンス)を採用。これは複数のサンプルの再生順を記憶し、鳴らしたいタイミングで次々と自動演奏させるといった機能であり、同時期にリリースされたワークステーションXP-50にも採用されていますね。ただし通常のシーケンサーのような細かな音符単位のエディットはできない「簡易シーケンサー」といったところ。本機では最大4種類までのフレーズが同時再生可能となっています。
また演奏中でもデータロードができる「ロード・ホワイル・プレイング機能」も搭載(→これもXP-50で見られる機能)
関連記事:「Roland XP-50 ~マイ・ファーストシンセ回顧録[1995年]」
SCSIポート装備!
本機ではSCSI(スカジー)ポートを標準で搭載。これにより外部ハードディスクやMOドライブ、CD-ROMドライブなどとダイレクトに接続することができました。またCD-ROMに関しては、当時多数のサウンドライブラリー資産を誇っていたAKAI製CD-ROMサンプルデータを読み込むことができます。
SCSIポートを使用しての曲ロードは、上記の「ロード・ホワイル・プレイング機能」により、ロードしている間の実時間を気にすることなく本体にデータを読み込めたということで、特にライブ時では有効だったと思われます。
ただし本機にはフロッピーディスク・ドライブが搭載されていないんですよね。。SCSIもいいけど、この頃のサンプラーでFDドライブを内蔵していないというのはちょっと残念といったところ。ちょっとしたサンプルを収めるくらいだったら手軽なフロッピーが便利だったんですけどね。。
データ保存について
この頃の一般的なサンプラーの御多分に漏れず、本機でも本体内にバックアップ用メモリーを搭載していません。よって電源を落としてしまうとデータは消えてしまいます。データ保存をするためには、SCSI経由で外部HDDや記憶媒体に書き込むか、あるいはテープ・インターフェイス経由でカセットテープやDATなどにセーブします。
JS-30/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
個人的つぶやき
これは以前本ブログでも紹介したRoland DJ-70などと同様、DJがターンテーブルとは別の飛び道具的なギア(サンプラー)として使うことを想定していたと思われます。
関連記事:
「Roland DJ-70 ~キーボード付きサンプラー for DJ [1992年]」
「AKAI REMIX16 ~アカイが作った変化球サンプラー for DJ [1995年頃]」
なお本機はローランド・ヨーロッパ(イタリア)製であり、当時国内でもあまり取り扱われていなかったため知名度が極端に低いサンプリング・マシンといったところですね。フレーズ・サンプリングに特化し、MS-1よりも贅沢な機能を盛り込んだいわばプロ仕様みたいな感じだったのですが、本機の159,000円という定価は決して安くなく、コスパという面では39,800円のMS-1の方に圧倒的に軍配が上がったという感じです。
仕様
■最大同時発音数:8音
■サンプリング周波数:44.1kHz/22.05kHz
■サンプリング分解能:16ビット(A/D)、20ビット(D/A)
■内蔵メモリー:1Mバイト(最大4Mバイトまで拡張可能)
■シーケンサー・トラック数:4
■外形寸法:480(W)×95(H)×272(D)mm
■重量:4kg
■発売当時の価格:159,000円(税抜)
■発売開始年:1994~95年頃