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1970~80年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.105】YAMAHA SY77 ~2つの音源を持つオールインワン・シンセ[1989年]

2018/11/25

 

 

 今回ご紹介するシンセサイザーは、1989年にヤマハから発売された「SY77」です。うーん懐かしいですね。定価は300,000円でした。
 
 同社の「SYシリーズ」といえば1970年代のアナログ・シンセ「SY-1」「SY-2」にまでさかのぼるのですが、80年代末~90年代前半にかけて発売されたデジタル・シンセサイザーとしての「SYシリーズ」は、このSY77が初出となります。時代はバブル末期頃でしょうか。。

 

YAMAHA SY77
 
 
 

時代背景

 多少乱暴な言い方ですが、80年代の音源トレンドといえばFM方式の音源であり、まさにヤマハはその部分に関して80年代のシーンを牽引してきたと言っていいでしょう。そんな中、コルグが1988年5月に出した「PCM方式」音源を搭載したオールインワン・タイプのシンセサイザー「KORG M1」のメガ・ヒットは、来たるべき90年代の、新しいシンセサイザーの方向性を示したといっていいと思います。
 
 
 PCM音源内蔵デジタル・シンセの台頭、そして生楽器の音が出せるサンプラーの低価格化の波が押し寄せ、一世を風靡していたFMサウンド(DX7に代表されるようなキラキラ音色)の人気にも若干翳りが見え始めていた時期でした。ヤマハとしても “次の一手”を考じる必要が出てきたのかもしれません。
 

YAMAHA SY77(advertisement)-1
SY77/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

SY77の基本スペック

 61鍵、32音ポリフォニック。PCM音源部は4MBのWAVE ROMで、112種類の波形を収録。3つのコントロール・ホイールを装備し、2つのモジュレーション・ホイールには様々なコントロール情報をアサイン可(フィルターのカットオフなど)。2系統のデジタル・エフェクター、シーケンサー、さらには3.5'FDDも装備。
 
 
 

SY77の音源部 ―「AWM2+AFM=RCM」

 SY77の音源方式は「AWM2(Advanced Wave Memory2)」と「AFM(Advanced FM)」の2つの音源を搭載したハイブリッド型です。原理的には、AWMというのは早い話 “PCM音源”のことであり、AFMは “FM音源”のことです。いずれも、発展させた(Advanced)ということを強調していますね。
 
 
 この2つの音源セクションを統合的かつ有機的にコントロールするシステムを、ヤマハでは「RCM(Realtime Convolution & Modulation)」と呼んでいました。
 
 
 

デジタル・フィルター搭載

 2つの音源セクションにはそれぞれデジタル・フィルターが搭載されていて、波形編集も各々行うことができます。つまり、これまでにありそうで無かった「FM音源にもフィルター操作ができる」ということを実現したのです。この意義は大きいと思います。耳障りな高域成分を抑える(→ロー・パス・フィルター)といったことがPCM感覚で行え、時系変化を付けることでバイオリンなどの擦弦楽器の音作りも幅が広がるでしょう。

 

 

 

シーケンサー部について

 MIDIシーケンサーは、16トラック、約16,000ステップ、1ソング。リアルタイムおよびステップ入力ができます。音符分解能は4分音符あたり96と、同社のQX3相当のものとなっています。
 
 
 

教則ビデオを無料で貸し出し!

 ヤマハさんでは『SY77 その魅力と活用』というビデオを、希望者に無料でレンタルするという太っ腹なサービスを行っていました。このビデオでは、RCMシステムの音作りの方法や、シーケンサーの使い方、実際のオペレーションなどを分かりやすく紹介してくれる内容となっています。さらには当時の著名なキーボーディスト(坂本龍一、小室哲哉、向谷実、福田裕彦、etc..)が多数登場しています。ちなみに本ビデオでインストラクターを務めているのは若き頃の浅倉大介さんですね。
 

YAMAHA SY77 video(advertisement)
SY77ビデオ 無料レンタル/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用

 
 
 
 個人的には、SY77は操作が非常に難しかったという印象が強いです。そして、同じように難しさで頭を抱えていた人も多かったと思います。そこでこのビデオ無料レンタルは相当魅力的なサービスだったのではないでしょうか。
 
 
 

電話窓口も設置!

 ビデオの他にも、「SYインフォメーション・センター」という電話窓口を開設し、SYシリーズ(SY77/SY55/SY22等)についての様々な問い合わせを受け付けてくれるサービスも行っていました。機能のこと、操作のこと、高度な質問まで、電話で週5日対応していたそうです。フリーダイヤルではありませんでしたが、通話料以外の料金はかかりませんでした。
 
 
 

個人的に思う処

 どんなに魅力的なハードウェアを作ったところで、その魅力を分かりやすく伝え、多くの人にアピールしようとする企業努力がなければ、「一部のプロかマニア」だけにしか売れないでしょう。
 
 
 当時のヤマハさんも「こんな新機軸の機種は受け入れられるのだろうか?」という不安があったのかもしれません。そして上記のような、購入検討者(あるいは購入者)のための手厚いフォロー広告を次々と打ち、積極的にアピールに努めたのでしょう。コストもかかったと思います。
 
 
 今日では、メーカーWEBサイトから、商品イメージを伝えるオシャレな動画なども公開されていますが、このSY77のプロモーションの「メーカー側の本気度」を超えるものは見たことがありません。メーカーや小売店がもっと積極的に無料(Web)セミナーなどを告知・開催し、SY77のような本気のプロモーションをしてくれるといいのにな、と個人的には思います。
 
 
 
 関連記事(ヤマハSY/TGシリーズ):
 「YAMAHA SY22 ~ベクター・コントローラー搭載シンセ![1990年]
 「YAMAHA TG55 ~新音源AWM2を搭載したモジュール版SY55 [1989年]
 「YAMAHA TG77 ~SY77の音源モジュール版[1990年]
 

仕様
■鍵盤:61鍵(イニシャル・タッチ、アフター・タッチ付き)
■最大同時発音数:32(AWM2:16音/AFM:16音)
■音源:RCM方式
     AWM2:16ビットリニア波形(サンプリング周波数24/36/48kHz)
     AFM:6オペレータ/45アルゴリズム/3系統フィードバック/16波形
■プリセットメモリー:128ボイス+16マルチ
■インターナルメモリー:64ボイス+16マルチ

■音色:XG(480+11ドラムキット)、TG300B(579+10ドラムキット)、プリセット128、ユーザー128(280エレメント)、ユーザー・ドラム・キット
■シーケンサー部
 トラック数:16(含むパターントラック×1)、 ソング数:1
■LCDディスプレイ:240×64ドット

■外形寸法:1046(W)×119(H)×407(D)mm
■重量:17kg
■価格:300,000円
■発売開始年:1989年

 

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