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2000年代~' Roland 【ショルダーキーボード】 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.301】Roland Lucina AX-09 ~シンセ音源内蔵の軽量ショルダーキーボード[2010年]

2019/07/15

 

 

 今回ご紹介する鍵盤楽器は、ローランドから2010年に発売されたショルダー・キーボード「Lucina(ルシーナ) AX-09」です。前年にリリースされた同社の「AX-SYNTH」と同様にシンセ音源を内蔵したショルダー・モデルであり、コンパクト(かつ軽量)な37鍵仕様となっています。なお2017年現在では生産完了となっています。

 

Roland Lucina AX-09

Lucina AX-09

Roland Lucina AX-09 Black Sparkle

Lucina AX-09 Black Sparkle

 

 ローランドのショルダー・キーボードに代々冠せられてきた伝統の「AXシリーズ」の一つですね。音源内蔵なのでMIDIケーブルは必須ではないし、もちろん電池駆動もOK。ストラップも標準で付属。(スピーカーこそ内蔵していませんが)いつでもどこでも単体で楽しめる、実に現代風なショルキーに仕上がっているといったところです。
 
 
 

内蔵音色について

 6種類のスペシャル・トーンと、144種類のレギュラー・トーンを選択可能(合計150音色)。まず “スペシャル・トーンとは何ぞや!?”と感じる人も多いかと思います。以下です。

SYNTH1
SYNTH2
SYNTH BASS
VIOLIN
TRONBONE
JAZZ SCAT

 
 主にリード系に絞った6音色といった感じですね。ソロ向けであり、抑揚をつけながら歌うように演奏すると非常に効果的といった印象です。なお “JAZZ SCAT”は男声コーラスのスキャット音であり、これはちょっと飛び道具的な感じですね(笑)
 
 
 144種のレギュラー・トーンは、いわゆる通常のキーボード音色にも対応する幅広い音色キャラクターが揃っています。ピアノ、エレピ、クラビ、オルガン、ストリングス、シンセ系などといったところ。これらは6つの音色カテゴリーに分かれており、それぞれ24音色が含まれています(→つまり6×24=144音色)。
 
 
 また、これら音色の中でよく使うものは “FAVORITE”メモリーに12個まで記憶することが可能です。
 
 
 

取り扱いについて

 37鍵(ベロシティ付き)仕様の標準スケール鍵盤を採用。ミニ鍵盤になじめないという人にとっては、標準スケールの鍵盤はありがたいところです。なお音色選択ボタンや、オクターブ/トランスポーズ・ボタンは鍵盤の下側(手前側)にまとめて設置されています。
 
 
 鍵盤の下(手前)にボタン類があるという設計は個人的にはちょっと怖くて、過去に演奏中エキサイトして誤って音色変更ボタンを押してしまい、図らずも全く違う音色に変わってしまいライブで大恥をかいたなんてことも。。えーと、具体的にはHAMMOND XB-2です。
 
 
 本機でもそういった恐れがあるのではと思ったのですが大丈夫! 本体右下には “LOCK”というボタンがあって、これを押すと音色変更を受け付けなくなり誤切替を防いでくれます。

 

 

 

各種コントローラーについて

 ショルダーキーボードといえば、リアルタイムで音色を変化させる “コントローラー部”もどのような仕様になっているかも重要なポイントですね。本機では主に以下3つです。
 

モジュレーション・バー

 左手グリップ部に備え付けられている可動式のバー。初期状態ではこれを押すことによりビブラート効果が掛けられます。また設定を変えると、モジュレーション・バーを押している間は演奏音がホールド(保持)されるというピアノで言うところのダンパーペダル的な使い方もできます。また上記2つをミックスした「ビブラート+ホールド」効果も設定可能ですね。
 
 

タッチ・コントローラー

 左手グリップ部に備え付けられている横長のタッチセンサー。こいつを指を触れたまま左右に動かすとピッチ(→音の高さ)が変化します。中央より左に触れると音が低く、右側に触れると音が高くなるといった感じ。
 
 この辺りは昔からのショルキー・プレイヤーにとっては勝手知ったる感じですね(→KX5のリボンコントローラー等)。ギターのチョーキング奏法っぽいピッチ変化が可能になります。
 
 

Dビーム・コントローラー

 この頃のローランドシンセとしてはおなじみの「Dビーム」も装備。このDビームに手をかざせば、リアルタイムでピッチ変化やフィルターの開閉(音の明るさの調節)、あるいはビブラート効果を掛けることもできます。
 
 
 なお本機のDビームはパネルの左上(左奥側)に備えられており、「右手・左手、どっちの手でかざすか」というのが実はちょっと悩ましい(笑)。というのも左手のグリップ部の四方は筐体で囲まれており、左手で行う場合は一度下に腕を抜いて、手を鍵盤上に移動した後にかざすという面倒なモーションをしなければいけません。
 
 
 実際のところは、上記のモジュレーション・バーにて音をホールドさせた状態にしておいて右手でかざすという使い方もありだと思います。ただしそれだと、演奏中にモジュレーション・バーの設定を変更しなければならないケースも出てくるわけで、やっぱり悩ましいわけです(笑)
 

Roland Lucina AX-09(advertisement)
Lucina AX-09/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

その他機能

 Lucinaの背面にはステレオ・ミニジャックのEXT IN端子が備えられており、ここに携帯音楽プレイヤーを接続すれば本機の演奏音とミックスして再生してくれます。またパネル左上にはUSB端子も装備されており、オーディオファイル(MP3/WAV/AIFF等)の入った汎用USBメモリーを挿せばやはり再生が可能。ちょっとした個人練習に便利ですね。
 

長野県の楽器店で撮影。下段がLucina。
 
 
 

ひとりごと的な

 昔のショルダーキーボードといえば、コスト的/重量的な観点から本体に音源を積んでいない(→つまり本体のみでは音が出ない)ものが大多数だったのですが、本機ではシンセ音源も豊富に内蔵したこのボディでわずか3.7kg(本体のみ)を実現しているということで、技術の進歩はすごいなーというのがおじさん的な感想です(汗)
 
 
 そんなLucinaですが2014年末頃には生産完了になってしまい(AX-SYNTHも生産完了)、2017年10月現在、後継機のアナウンスは無し。ローランドさんのショルダー・キーボードの系統は断絶してしまっているという状況です。うーーん、ショルダー・キーボードってやっぱり需要が少ないんですかね。。本機は音源も内蔵していて非常によくできたモデルだと思うのですが。
 
 
 

2018年9月17日追記

 そんな沈黙を守ってきたRoland AXシリーズですが、2018年9月に「AX-Edge」として待望の新製品のリリースが発表されました! 鋭角的なデザインで何やらスタイリッシュじゃないですか~
 

 カラーはブラックとホワイトの2色ですが、交換可能な「エッジ・ブレード」によって見た目にアクセントを加えることができるそうですよ。
 
 
 

余談的な

 なおLucinaはショルダーとしてだけではなく、いわゆる据え置き型のシンセとしても使えます。サブ的なセカンド・キーボードとして2段スタンドの上段に据えるといった感じ。普段は持ち場から動けないキーボーディストが、曲中のここぞというタイミングでおもむろに本機を外してステージ前方に出てソロを弾くなんて相当なインパクトじゃないですか!!
 
 
 東京スカパラダイスオーケストラの沖祐市さんは、ライブでソロになると据え置きの鍵盤を抱えて前方に出るというパフォーマンスをしばしば行っていましたが、一般人でもやりやすくなったという感じですね(笑)
 
 
 
 関連記事(ローランドショルダー AXシリーズ):
 「Roland AXIS-1 ~ローランド最初期のMIDIショルダーキーボード[1984年]
 「Roland AX-Edge ~2018年9月発売! 待望のローランド・ショルダー・キーボード(キーター)
  

仕様
■鍵盤:37鍵(ベロシティ対応)
■最大同時発音数:128音
■パート数:1パート
■搭載音色数:150(レギュラートーン144+スペシャルトーン6)
■コントローラー:Dビーム・コントローラー、モジュレーション・バー、タッチ・コントローラー
■電源:ACアダプター(付属)、充電式ニッケル水素電池単3型×8本(別売)
■外形寸法:832(W)×95(H)×245(D)mm
■重量:3.7kg(本体のみ)
■発売当時の価格:オープンプライス(発売当初の市場実勢価格:70,000円前後)
■発売年:2010年

 

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