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その他メーカー 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.372】STUDIO ELECTRONICS ATC-1 ~カメレオンなアナログ・モノシンセ[1996年頃]

2018/11/28

 

 

 今回ご紹介するシンセサイザーは、2Uサイズのアナログ・モノフォニック・モジュールであるSTUDIO ELECTRONICS「ATC-1」です。日本での発売は1996年頃。発売当初はオープンプライスでした。

 

STUDIO ELECTRONICS ATC-1

 

 STUDIO ELECTRONICSといえば、往年の名アナログ・シンセのMIDI改造を施したプロダクトを世に出していたことで有名ですね(本ブログでも何度か取り上げさせてもらってます)
 
 
 本機ATC-1は、そういった過去のノウハウを結集して作られた同社のオリジナル製品なのです。もちろんMIDIは最初から装備。見た目だけでも十分なインパクトのある本機ですが、果たしてどのような内容のアナログシンセだったのでしょうか。
 
 
 

カートリッジによりフィルターを差し替え可能!

 まあ本機はこれに尽きるでしょう。“着脱可能なフィルター・カートリッジ”により、複数の機種のフィルター回路(をシミュレートしたもの)を、ファミコン・カセット感覚で差し替えができるというものです。
 
 
 シンセサイザーの音の発振元はオシレーターと呼ばれる回路なのですが、シンセサイザー(特にアナログシンセ)の音色のキャラクターを大きく左右するのは、一般的にこのフィルター部によるところが大きいのです。
 
 
でもって本機ATC-1は以下のフィルターが用意されていました。

MOOGタイプ …本体購入時に同梱されるカートリッジ。24dB。
ARP 2600タイプ …別売。
Oberheim SEMタイプ …別売。24dB/12dBをカートリッジ側で切替可。
Roland TB-303タイプ …別売。

 
 もちろんオリジナルのフィルター回路をそのままカートリッジに収めたというわけではなく、これらは忠実にコピーされたレプリカですね。上記の4つ以外にもひょっとしたらあったかもしれませんが、僕の記憶している限りではこの4つだけだったと思います。ご参考までに。
 
 
 ちなみに各カートリッジの当時の価格は約150USドル。当時のレートを日本円に換算するとおおよそ2万円弱といったところでしょうか。名機と呼ばれるアナログシンセサイザーの個性的なフィルター部が2万円で手に入るということで、考えようによっては非常にお得と言えるかもしれません。
 

STUDIO ELECTRONICS ATC-1(rear)

 

なおカートリッジ・スロットは本体背面にあります。ラックマウントがほぼ前提の本機において、背面にカートリッジ穴があるというのは何とも不親切な設計といいましょうか。。
 
 
 

操作パネルについて

 整然と並べられたカラフルなボタン類がひときわ目を引きますね。これらボタン類は薄膜タッチ・パネル式となっていて、80年代初頭のデジタルシンセなどによく見られました。80年代当時としては近未来を感じさせる先進的なインターフェイスだったのです。
 
 
 『でも何故90年代半ばにもなって(とっても使いにくい)タッチ・パネル式なんだ?』
 
と疑問を抱くかもしれませんが、これはメーカー側の明確な意図があって、“ツマミによる経年変化(劣化)を追放したい”ということらしいです。まあ確かにツマミの動作不良の原因は、すき間の穴から内部にほこりや湿気などが入ることによる接点不良に依ることが多いので、目の付け所は悪くないと思われます。
 
 
 でも実際はやっぱり使いにくかったりするんですけどね。。以前本ブログでも紹介した「MOOG The Source ~Minimoogの後継機」もタッチ・パネル式アナログシンセの一つとして知られています。

 

STUDIO ELECTRONICS ATC-1
こちらは初期のロット。中央のダイヤルのデザインが異なるようです。
 
 
 

内部構成など

 オシレーターは2基で、三角波(TRI)、ノコギリ波(SAW)、矩形波(PULSE)の波形から選択可能。さらに独立したノイズ・ジェネレーターも備えています。モジュレーション(LFO)は2系統。
 
 
 エンベロープは全3系統で、VCF、VCA用に設定できるADSR方式のものがそれぞれ1つ。そして3個目のエンベロープはちょっと変わっていて、(ターゲットとして)レゾナンス、オシレーター1/2のフリケンシー、オシレーター1/2のレベル等を指定できるなど、様々な使い方ができそうです。レゾナンスにEGを掛けるとか、どんな効果になるのでしょう。。興味深いです。
 
 
なお作った音色は、512パッチまで本体内にメモリー可能です。

 

 

 

その他の機能

 EXT VCF IN端子が備えられており、外部からの信号の加工も可能。あと当時のラック型アナログ・モノシンセには珍しく、ベロシティおよびアフタータッチ情報も受け取ることができます。もちろんモジュレーション・ホイールやピッチベンドにも対応。
 
 
 またCV/GATE INも用意されていますね。MIDI以前のCV/GATE方式のアナログシンセの制御や、MIDI→CVコンバーターからのコントロールも可能となっています。
 
 
 

よだん&つぶやき

 本機の型番 “ATC”とは「アナログ・トーン・カメレオン【Analog Tone Chameleon】」の頭文字を取ったものだそうで、なるほど、1台で変幻自在に化けられるということで的を得たネーミングと言えるかも。カラフルに色分けされたボタン類も、そんな “カメレオン”な製品イメージを端的に表現しているのかもしれませんね。
 
 
 でもって肝心の出音(フィルターの再現具合)ですが、残念ながら個人的には未だ確認できていません。『それっぽいキャラクターにはなる』なんて口コミは聞いたことはあるのですが、ネットに上げられているYouTube動画は海外のものばかりなのでよく分からないですね。。先日行ったWurly'sさんで試奏お願いするんだった。。
 

STUDIO ELECTRONICS ATC-1

STUDIO ELECTRONICS ATC-1 ※Wurly's!さんにて撮影
 
 
 
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仕様
■最大同時発音数:1音
■オシレーター:2VCO(三角波、ノコギリ波、矩形波) +ノイズ・ジェネレーター
■エンベロープ・ジェネレーター:ADSRタイプ×3
■接続端子:オーディオ・アウト、CV IN/OUT、GATE IN/OUT、EXT IN、MIDI IN/OUT、フィルター・カートリッジ
■外形寸法:484(W)×89(H)×260(D)mm
■重量:3.1kg
■発売当初の価格:オープンプライス
■発売開始年:1996年頃

 

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