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1990年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.267】YAMAHA EOS B500 ~【前半】“小室プロデュース&浅倉マニュピレート”、EOS黄金期の一台[1990年]

2019/07/07

 

 

 今回ご紹介するシンセサイザーは、YAMAHA EOS(イオス)シリーズの「B500」です。発売は前モデルB200リリースから約2年後の1990年12月。定価は168,000円でした。
 
 本機B500からは小室哲哉氏が本格的にプロデュースに関わるようになり、外観はB200のデザインを踏襲しつつも、内容的には(音源部を中心に)大幅な変更が加えられました。ちなみにボディ背面の “EOS”ロゴがプリントされるようになったのも本機からですね。

 

YAMAHA EOS B500

 

 さてそのB500ですが、長くなりそうなので記事を前後半に分けることにしました。前半である今回は、主に音源部について取り上げてみたいと思いますよ。
 
 
 

そもそもEOSとは

 YS200/YS100(→EOS初号機)の時の記事でも書きましたが、おさらいの意味を込めて再掲載してみます。
 
 EOSとは「Entertainment Operating System」の頭文字を取ったものです。当時まだまだ専門知識が必要だったシンセサイザーを、誰でも簡単に “高性能なシンセを楽しんで操作できるようにする”、という意味を込めて開発が進められました。操作の分かりやすさへの取り組みは元より、EOSサウンド・コンテストの開催など、ユーザーに寄り添ったメディア展開をしてシンセサイザー人口の拡大に貢献しました。
 
 
 

小室氏、浅倉氏の関わり

 EOS B500は小室哲哉氏とヤマハの共同開発で生まれたシンセサイザー。小室氏はボディのデザインから基本コンセプト、プリセット・ボイスをプロデュース、もちろん自身も広告塔として多くのメディアに登場しました。
 
 
 また浅倉大介氏は、小室氏からのプロデュース案を元に、実際のプリセット音色のマニュピレート(サウンドクリエイト/プログラミング)を担当しています。
 

YAMAHA EOS B500(advertisement)
EOS B500/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

音源部

 定評あるFM音源と、生ドラムなどの音色がリアルなAWM音源(→PCM音源をベースにしたサンプリング音源)の2つの方式を搭載。ヤマハではこれをDASS音源(Dual Architectural Synthesis System)と銘打っていました。聞き慣れないこのDASSというのは、当時の同社のポータトーン・PSRシリーズに採用されたものと同じタイプです。既存の楽器音から、自然界には存在しない音まで自由に創造できるという触れ込みでした。
 
 
 FM音源部は、オペレータやアルゴリズムで複雑にエディットする感じではなく、あらかじめ内蔵してある256のFMウェーブを選ぶだけという簡単さ。そして音色の最小単位であるボイスは、"FM+AWM"あるいは "2FM+2AWM"という要素で構成されます。エンベロープもエディットできます。
 
 
 音源部は、EOS初となるAWM音源が加えられているのが特徴的ですね。FM+AWMのハイブリッド音源を採用しているという面では、以前本ブログでも紹介したSY22(AWM+CWM【2オペのFM音源】)に近い印象です。
 
なお最大同時発音数はB200の8から24ポリフォニックに大幅増となっています。

 

 

 

内蔵音色について

 プリセット100+インターナル100(+カード100)のMax300ボイスを搭載。なお100音色のプリセットは小室氏監修のものであり、上記のように浅倉氏がプログラミングしています。
 
 
 また100パターンのプリセット・リズム(パターン)は、ロックをはじめ、ユーロビート、ディスコサウンドを中心に構成されている他、当時のTMで使われていたリズムパターンもいくつか収録してあります。この辺りはTMN(TM NETWORKから名義変更)のアルバム『Rhythm Red』のコンセプトが影響しているようで、よりハードロック色が強い音色が中心となっているという印象です。こちらもプログラミングは浅倉氏によるもの。
 
 
 特に内蔵デモ曲では、TMNのアルバムから『SECRET RHYTHM』がリアルにプログラムされており、曲中のシャウト("Yeah Secret Rhythm!")まで忠実に再現しているという凝りよう。鳴っているのはもちろん内蔵のプリセット音色だけなのですが、実際のTMNのレコーディングで使用したドラム・キットやシャウトをそのまま波形として収録してあるそうで、なるほどリアルなわけですね。生のドラム音とかを一旦シンクラヴィアに取り込んで、それをB500のROMに焼き付けているとのことですよ。
 
 
 

ここまでのまとめ的な

 TMNのアルバム内で使われた音色がそのままサンプリングされていて本機で簡単に鳴らせるということからも、EOS B500はまさに『誰でも手軽に憧れの小室哲哉になりきれる』一台だったと言えるのではないでしょうか。
 
 
 小室氏はTMN(TM NETWORK)のライブでEOSシリーズを機材システムによく組み込んでいましたし、小室(TM)ファンならずとも、TVCMでもガンガン流れたのでその宣伝効果は絶大だったと思います。実際、B500はシンセサイザーとしては異例の大ヒットを記録したそうですよ。
 
 
さてB500の記事ですが予告通り後半に続きますよ。
  
 続きの記事→「YAMAHA EOS B500 ~【後半】EOSシリーズ中、最も売れたモデル
 
 
 
 関連記事(ヤマハEOSシリーズ):
 「YAMAHA EOS YS200/YS100 ~EOS初号機、現る![1988年]
 「YAMAHA EOS B200 ~EOSにスピーカーが付いたよ![1988年]
 「YAMAHA EOS DS55 ~オート・パフォーマンス機能搭載のお手軽EOS [1988年]
 「YAMAHA EOS BX ~インターネットとリンクする“ネットワークEOS” [2001年]
 

仕様
■鍵盤:61鍵(イニシャル/アフタータッチ付き)
■音源方式:DASS音源(AWM+FM)
■最大同時発音数:24音
■音色メモリー容量:100プリセット+100インターナル(+メモリーカード100音色)
■内蔵エフェクト:34種(1系統)
■シーケンサー部:8トラック+1リズムトラック、容量約12,400音
 録音方法:ノーマル(リアルタイム)、ステップ/本体鍵盤および外部MIDI
■スピーカー:20W×2、2ウェイ
■外形寸法:1017(W)×124(H)×364(D)mm
■重量:17kg
■発売当時の価格:168,000円(税抜)
■発売年:1990年12月

 

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