【Vol.426】Roland SR-JV80-13~19 ~90年代ローランドのエキパン!(その3・後期製品モデル)
2019/06/23
さて今回も、主に90年代に活躍し一時代を築いた音源ボード「SR-JV80シリーズ」について記述してみたいと思います。今回は末尾「13」から「19」までということで、一気に最後までおさえてみたいと思いますよ。
検索エンジン等でいきなり本記事が引っかかっちゃった人は、ぜひとも前記事にも目を通してみてください(笑)
前記事:
「SR-JV80-01~06 ~90年代ローランドのエキパン!(その1・初期製品モデル)」
「SR-JV80-07~12 ~90年代ローランドのエキパン!(その2・中期製品モデル)」
では早速行ってみましょう!
SR-JV80-13 “Vocal Collection”
SPECTRASONICS社との共同製作による、ステレオ・サンプリングされたボーカル・フレーズ集。数あるエキパンのラインナップ中、非常に個性的な一枚といったところです(笑)。パッチも131種類と少なめですね。
「アーメン」「ハレルヤ」などのフレーズから、荘厳なコーラス、クワイヤ、はたまたVOX、スキャットまで “声の素材”だけに絞ったボードとなっています。また、ベロシティの強弱により “Dat”、“Doo”、“Doot”、“Bat”、“Daw”の発音を弾き分けることができるなど、ライブでも使える面白い仕掛けのパッチも見られますね。
以前本ブログでも紹介したキーボード「Roland VP-550 ~“声”を演奏できるボーカル&アンサンブル・キーボード[2006年]」に近い感じでしょうか(リリースとしては本ボードの方が遥かに先)。
■ウェーブ数:82
■パッチ数:131
SR-JV80-14 “World Collection ASIA”
その名の通り、アジア諸国の民族楽器を中心に網羅されたコレクション。収録楽器はガムラン、シタール、タブラ、三線(さんしん)などなど。
「SR-JV80-05 “World”」の、さらにアジアだけに的を絞って充実させたボードと見てよさそうですが、現地ミュージシャンによる演奏から組まれたフレーズ・ループも収録されているなど、後発らしくブラッシュアップされている印象です。BPMもXP-80/JV-2080などのテンポ・シンク機能で制御可能。
■ウェーブ数:175
■パッチ数:256
SR-JV80-15 “Special FX Collection”
サウンドエフェクト(効果音)、アンビエントなどを中心に収められたコレクション。
雨や風、雷などの自然音から、都会の騒音・工業機械などの日常音、あるいは自然界に存在しない非現実音まで、さまざまなSFX音が網羅されています。本ボードの多くのウェーブは、アフタータッチやスライダー、ホイールなどのコントローラーによって音色が変化するという仕掛けがされていますね。音効さんなどに便利に使われたのかも。
なお本ボードはローランドとSPECTRASONICS社との共同開発であり、ボード上の多くの波形はSPECTRASONICSのベストセラーCD-ROM「Distorted Reality」から採用されているそうです。
■ウェーブ数:248
■パッチ数:256(JV-1010/1080/2080、XPシリーズ専用)、204(JV-80/880/90/1000専用)
SR-JV80-16 “Orchestral II”
ストリングス・アンサンブル、木管、金管、打楽器など、オーケストラで使用される楽器を中心に収録されたボード。リリースは1999年頃。
「SR-JV80-02 Orchestral」(1992年リリース)の続編というか、これも当時の最新風にリニューアルしたような感じですね。ステレオ・サンプリングされたストリングが特に充実している印象です。あとケルト系民族音楽サウンドも収録されていますね。
■ウェーブ数:153
■パッチ数:パッチ数:256(JV-1010/1080/2080、XPシリーズ専用)、214(JV-80/880/90/1000専用)
SR-JV80-17 “Country Collection”
バンジョー、ペダルスティールギター、マンドリン、フィドル(バイオリン)など、カントリーテイストなサウンドを詰め込んだコレクション。バンジョーやギターの一部のパッチではフレーズも収録してあります。
■ウェーブ数:247
■パッチ数:256
SR-JV80-18 “World Collection "Latin"”
ラテン系音楽で頻繁に使用されるコンガ、ボンゴなどのパーカッションなどを中心に、トランペットなどの金管楽器なども収録された “ラテン向け”な一枚。
■ウェーブ数:255
■パッチ数:256
SR-JV80-19 “House Collection”
ハウス・ミュージックをはじめとするダンス系サウンド制作向けの素材を数多く収録したコレクション。ドラムループやパーカッションループ、ピアノフレーズやギターフレーズ、ベースにストリングス、さらに各種ボイス、ヒットなど、即戦力となる音色を収めてあります。
本ボードのウェーブフォームは、ドイツのUeberschall社のCD-ROM「HOUSEWORX!」からセレクトされたものだそうですね。
■ウェーブ数:255
■パッチ数:256(JV-1010/1080/2080、XPシリーズ専用)、156(JV-80/880/90/1000専用)
■リズムセット:8(JV-1010/1080/2080、XPシリーズ専用)、2(JV-90/1000専用)
ローランドからのお知らせ(2017年)
本ブログ記事でも何度か掲載していますが改めて記述しておきます。
2017年1月27日、「SR-JV80シリーズ」に関して、ローランドから使用中止のお願い告知がHP上で発表されました。詳細は以下ローランドサイトからご確認ください。
エクスパンションボード SR-JV80 シリーズをご愛用のお客様へ
https://www.roland.com/jp/support/support_news/170119/
個人的つぶやき
というわけで3回に分けて執筆させて頂いた全19種類のローランドSR-JV80エキパンシリーズ、いかがだったでしょうか?(疲れた。。)。この他にも、新製品のシンセを買った際にお試しとして無料で配布された「EXPERIENCE」というボードも3種類ほどありました。
発売当初(1992年)は波形拡張メディアというと80年代主流のカード型がまだ残っていて、大容量のCD-ROMなんかも登場してきた時代であり、そこに来てローランドさんから「音源チップを直接増設する」という斬新な方式が提示されたわけです。
チップむき出しのボードを、これまた基板むきだしの本体に差し込むという素人にはちょっとハードルが高いような作業を、簡単取り付けできる構造にして個人でも気軽に行えるようにした功績は大きいと言えるでしょう。結果として、他社も後年エキスパンション・ボードを採用したりと少なからず当時のシンセ業界に影響を与えたのかなという印象です。
今回細かく各ボードを紹介していったのですが、残念ながら上記ローランドさんのアナウンスの通り、今後中古を入手して活用していくというのは現実的ではなくなってしまいました。90年代のデジタルシンセ音源において、こういった製品群があってシーンを彩ったということだけでも記憶して帰って頂ければ幸いに思います(笑)
関連記事(SR-JV80シリーズが挿せるシンセサイザー):
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