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1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.427】Roland S-330 ~1Uに凝縮された普及モデル・サンプラー[1988年]

2019/02/10

 

 

 今回の一台は、ローランドが1988年に発売したデジタル・サンプラー「S-330」です。発売当初の価格は198,000円でした(1989年4月の消費税導入後は価格改定)。

 

Roland S-330

 

 これはざっくりいうと、前年に発売されたサンプラー「S-550」(2Uラック)の1U版といったところでしょうか。一部スペックはS-550に劣りますが、大幅な軽量化とコストダウンを果たし手に入れやすくなった普及モデルと言えます。
 
 
 なおS-50(鍵盤付きモデル)、S-550(2Uラックモデル)は両方とも本ブログの記事にしてあるので、それらとの比較も交えつつS-330の話を広げてみたいと思います。
 
 
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基本仕様

 S-550の機能を凝縮しコンパクトな1Uサイズに収めたラック型サンプラー。同時発音数16ボイス、サンプリングレイト最高30kHz、16ビット・シグナルプロセッシング(12ビット録音、16ビット再生)などの基本性能は、S-550、ひいてはS-50譲りといったところ。
 
 
 CRT端子を標準装備し、ディスプレイ上でマウスを使ってのオペレーションが可能になるなど、S-550と同様にラック型モジュール機の宿命とも言える操作性の低さをカバーした仕様となっています。さらに1Uながら8パラ・アウト端子も装備。
 
 
 

サンプリング容量&メモリ容量

 S-330でのサンプリング周波数は、S-50(S-550)と同様に30kHz/15kHzの2つが使い分けが可能。サンプリング・タイムは以下のようになっています。
 

 30kHz時:7.2秒×2バンク
 15kHz時:14.4秒×2バンク

 
 はい、これは実はS-50のサンプリング・タイムと全く同じです(※S-550と比較するとちょうど半分)。
 
 
 メモリ容量は、32トーン、16パッチ(S-50では8パッチだった)となっており、当時の同価格帯のサンプラーと比較しても容量的には何ら遜色はなかったという感じと言えるでしょう。
 
 
 

多彩なエディット機能

 音色データはS-550とコンパチブルであり、音色エディットについても「TVF【Time Variant Filter】」というデジタル・フィルターを継承しています。このTVFというのは同社のD-50などにも見られた機能ですが、音質劣化を極力抑えつつメリハリのある音色変化を施すことができるというもの。
 
 
 他にも、TVAやLFOなどもついており、アナログシンセの感覚で好みの音色にエディットすることが可能といった感じですね。
 
 
 もちろんサンプラーの基本機能として、ウェーブ・ミックス、トランケート、さらにはウェーブ・データの手描き入力などにも対応しています。サンプル波形のエディットは、CRT画面にてグラフィカルでイージーに行うことができるといったところです(後述します)。なおエフェクターは内蔵していません。
 
 

Roland S-330(advertisement)
S-330/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

外部メディア

 3.5インチ(2DD)のFDDを1基装備。このFDDにより、S-50用の音色ディスク(サウンド・ライブラリー)がS-330でもそのまま読み込むことができます(本体付属のユーティリティ・ディスクにてコンバートする。ただしS-50のシーケンス・データは読み込めないので注意)。
 
 
 ちなみにこの頃のサンプラーといえば、電源を入れただけでは何もできない(音が鳴らない)というのは常識であり、最初にシステム・ディスクをロードさせてプログラムを読み込ませる必要がありました。なおS-330では、そのシステム・ディスクとは別に音色ディスクが2枚同梱されており、ひととおりのベーシックな音色(ピアノ、ドラム、ベース、ブラスなど)は読み込ませてすぐに鳴らせます。
 
 
 

S-330用シーケンサー・ソフトウェア「SYS-333」について

 『DIRECTOR-S』を銘打たれた一連のローランドSシリーズ向けシーケンサー・ソフトウェアの中の一つ。S-550では「SYS-553」といったように、本機S-330では専用の「SYS-333」というソフトが供給されました(当時の定価は25,000円)。
 
 
 これはS-330をサンプラー音源付きのMIDIシーケンサーに変えるシステムであり、S-330自身で記憶したシーケンス・データでS-330自身を発音させることができます。内容物は3枚の3.5'FD(2DD)でした。
 


DIRECTOR-S/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

補足・ローランドSシリーズの「DI方式」について

 本機S-330に限らず、同社のサンプラーSシリーズの多くに搭載されていた「DI方式」についても触れてみましょう。これは、当時のサンプリング・マシンによく見られたデータ読み出し時(=再生時)に発生するノイズを軽減し、ハイクオリティな音質を実現しているという触れ込みでした。
 
 
 当時最先端の高速計算エンジンによる差分補間を行い、ノイズの発生を大幅にカットしているそうですよ。

 

 

 

オプション類について

 別売りの専用マウス(MU-1)やリモート・コントローラー(RC-100)を買い足せば、CRTモニタと接続して直感的な操作が可能。この辺りの拡張性というか操作性のよさもS-550を踏襲している感じですね。
 
 
 

つぶやき的な

 基本的な機能はS-550とほぼ遜色なしに、8パラ・アウトやFDDも1Uに収めてさらに低価格化を実現した、当時としては画期的なサンプリング・マシンだったと回想します。S-50/S-550の豊富なサウンド・ライブラリーがそのまま使えて、さらにこの時代(80年代後半)で本格派サンプラーが “気軽に運べる”なんて、かなりレアな一台だったわけです(笑)
 
 
 なおS-550の記事でも書きましたが、今日ジャンク品を入手する際でも、起動ディスクの有無は最低限確認しておいた方がよいでしょう(FDDが完動なのかも併せて)。前述したようにこの時代のサンプラーはシステム・ディスクがなければただの箱ですからねぇ。。
 
 
 
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仕様
■最大同時発音数:16音
■RAM容量:750Kバイト
■シグナル・プロセッシング:エクスパンデッド16ビット(録音12ビット、再生16ビット)
■最大サンプリング・タイム
 30kHz時:最大7.2秒×2バンク
 15kHz時:最大14.4秒×2バンク
■最大記憶音色数:32トーン
■パッチ数:16
■搭載ドライブ:3.5インチフロッピー・ディスク(2DD)
■外形寸法:482(W)×44(H)×340(D)mm
■重量:4.3kg
■発売当時の価格:198,000円(消費税導入前の定価)
■発売開始年:1988年

 

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