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2000年代~' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.413】Roland VP-550 ~“声”を演奏できるボーカル&アンサンブル・キーボード[2006年]

2018/11/28

 

 

 さて今回ご紹介する電子鍵盤楽器はローランドの「VP-550」です。発売は2006年、価格はオープンプライス(発売当初の市場実勢価格はおよそ150,000円)。現在では生産終了となっています。

 

Roland VP-550

 

 これは何かというと、マイクを接続し歌いながら鍵盤を弾く(音程を指定する)ことにより、リアルで重厚なコーラスを “演奏”できるというものです。昔からのシンセファンならびに一部のYMOフリークにしてみれば、「ボコーダーの名機VP-330(1979年リリース)が、より進化して21世紀によみがえった」ものと捉えることができるかもしれませんね。
 
 
 本機VP-550はそのボコーダーだけにとどまらないいくつかの機能も有していますね。ちなみにボコーダーについては話すと非常に長くなるので、以前本ブログでも記述したVP-330の記事も必要に応じて参照してみてください。
 
 関連記事:「Roland VP-330 Vocoder Plus ~“TOKIO”な名機ボコーダー[1979年]
 
 
 

VP-550の特徴

 同社のシンセサイザー・V-Synth(2003年)用のオプショナルV-Card「VC-2 ボーカル・デザイナー」をさらにブラッシュアップした、“ボーカル・デザイナー・テクノロジー”を搭載した鍵盤付きハードウェア。見た目はキーボードですが、シンセやサンプラーとは異なる “声を演奏する”ことができる専用機といったところです。
 
 
 明瞭度の高いボーカル・サウンドの実現にとどまらず、VP-550では高品位PCM音源によるアンサンブル・パートも搭載。これにより、ボーカル・デザイナー・パートとアンサンブル・パートを組み合わせた多彩な演奏表現が可能に。また、声の代わりにギターやCD/MP3プレーヤーの音声を入力すれば、従来のボコーダーやエフェクターでは表現できなかったユニークな効果を生み出すこともできます。
 
 
 VP-550は「ボーカル・デザイナー」、「アンサンブル」、「ベース&パーカッション」という3つのパートからなる目玉機能を有しています。では以下に詳しく記してみましょう。
 
 
 

ボーカル・デザイナー・パート

6種類の音色とEXT IN(→外部からの音声入力)を装備。以下内蔵音色を挙げてみましょう。

クラシック、メイル&フィメイル、ゴスペル、ポップ、ボコーダー1、ボコーダー2

 
 いずれも “声”を素材としたものであり、いわゆるボコーダーらしい「ロボットボイス」から、重厚なクワイア(合唱)、荘厳な響きのクラシックまで、種類こそ多くないですが使いどころのありそうなプリセットを備えています。
 
 
 リアルかつ重厚なクワイア・サウンドを得たいならば「クラシック」、YMOの “トキオ~ トキオ~”みたいなロボット・サウンドだったら「ボコーダー2」辺りが使いやすい感じでしょうか。
 
 
 

アンサンブル・パート

このパートではアンサンブル音色を6種類内蔵。いずれもPCM音源となっています。

ストリングス1、ストリングス2、ジャズ・スキャット、ミックスド・コーラス、ボーイズ・クワイア、ハミング

 
上記のボーカル・デザイナーと組み合わせて演奏するとより効果的といった感じですね。

 

 

 

ベース&パーカッション・パート

 鍵盤の低音域で同時に演奏可能な、ベース1/2/3、パーカッションの4種の音色を内蔵。鍵盤の左端から17鍵盤までの音域にボイス・ベース&パーカッションのサウンドが割り当てられています。
 
 
 音色選択時にはスプリット機能が働くので、左手でベース・ライン、右手でコードやメロディー演奏が簡単にできるといった感じですね。本機1台のみで重厚なアカペラ・コーラスを再現できたりします。
 
 
 

見た目&操作系について

 鍵盤は49鍵(ベロシティ付き)。パネルにはこの頃のローランド製品によく見られたD BEAMも見られますね。そして何といってもシンプルな操作系が特筆点です。パネルには液晶ディスプレイはもちろんLED(7セグメント)すら装備されておらず、これはこの頃のハードウェア・キーボードとして見れば異様なほどシンプルに仕上がっています。
 
 
 とはいえ、前述したボーカル・デザイナー、アンサンブル、ベース&パーカッションの各パートごとの操作子はわかりやすく分けられており、使い勝手は思ったよりも悪くないと思われます。先代機VP-330でもディスプレイはなかったですし、その雰囲気を残すため(およびコストカットのため)あえてディスプレイは採用しなかったのかもしれません。
 
 
 あと余談ですが、本機のスイッチ(ランプ付き)は同社のJupiter-6を思わせるようなデザインになっていますね。
 
 
 

よりリアルな演奏表現も可能

 オプションのエクスプレッション・ペダルEV-5を接続することにより、アンサンブル演奏において高度な抑揚表現が可能となっています。この場合単なる音量の制御という働きにとどまらず、音色の変化を無段階で行えるようになるので、非常に表現力あふれるサウンドも演奏可能といったところですね。
 
 
 これは特にアンサンブル・パートにて「ハミング」を選択すると効果が分かりやすいらしいです(マニュアルにも、ペダルの踏み込み量によって「mmh」→「Ooh」→「Aah」にシームレスで変化すると書かれている)
 
 
 また、同様のエクスプレッション効果を声(→マイク接続時)の量でコントロールすることもできます。
 

Roland VP-550(advertisement)
VP-550/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

VP-550まとめ的な

 ボコーダーの名機VP-330の設計思想を2000年代の最新テクノロジーで再構築し、実に27年もの沈黙を破ってリリースされた、正式なるVPシリーズの後継機と見ることができそうです(ちなみに途中VP-9000なるモデルが同社から発売されていますが、これはボコーダーではなくサンプラーです。あーまぎらわしい。。)
 
 
 あと面白いのが、(リアパネルの目立たないところにあるが)微妙なチューニングを調整する「TUNEつまみ」が装備されている点。2000年代のバリバリのデジタル機器に、ピッチが不安定だった1970年代製アナログシンセのようなチューニングつまみが備えられているというミスマッチ感。。いや実にユニーク。
 
 
 端的ではあるのですが、『VP-550はVP-330の直系の後継機なんですよー』ということを、当時のローランドさんは強くアピールしたかったんだなーと感じちゃいますね(ディスプレイなしも含めて)
 
 
 
 関連記事(ボコーダー方面):
 「Roland VP-330 Vocoder Plus ~“TOKIO”な名機ボコーダー[1979年]
 「EMS VOCODER 2000 ~70年代発売のロングセラー・アナログ・ボコーダー
 「CASIO Voice Arranger VA-10 ~ボコーダーでTOKIO!! [1993年]
 

仕様
■鍵盤部:49鍵(ベロシティ対応)
■最大同時発音数:128音(音色や演奏方法に依存して変化)

ボーカルデザイナー・パート
 音色数7種(クラシック、メイル&フィメイル、ゴスペル、ポップ、ボコーダー1、ボコーダー2、EXT IN)

★アンサンブル・パート
 音色数6種(ストリングス1、ストリングス2、ジャズ・スキャット、ミックスト・コーラス、ボーイズ・クワイア、ハミング)
★ベース&パーカッション・パート
 音色数4種(ベース1、ベース2、ベース3、パーカッション)

■アンビエンス:ホール1、ホール2、スタジオ
■コントローラー:Dビーム・コントローラー、ピッチベンド、モジュレーションレバー

■外形寸法:865.4(W)×98.6(H)×346.3(D)mm
■重量:8.5kg
■発売当時の価格:オープンプライス
■発売開始年:2006年

 

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