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1970~80年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.202】YAMAHA TG55 ~新音源AWM2を搭載したモジュール版SY55 [1989年]

2018/11/25

 

 

 今回紹介するシンセサイザーは、1989年にヤマハから発売された「TG55」です。当時の定価は110,000円。ギリ80年代シンセなのですね。
 
 なお同社のTGシリーズといえば「大昔(Windows95登場以前)のヤマハDTM音源モジュール」みたいな印象を持っている人も少なからずいると思いますが、本機は、同社の鍵盤付きシンセサイザー「SY55」の1Uラック版と言うべき内容になっています。“TGシリーズの1号機”であるこのTG55、ちょっと色々書いてみましょう。

 

YAMAHA TG55
 
 
 

TG55の概要

 ヤマハ独自のサンプリング音源であるAWMが進化した、当時の新音源「AWM2 (Advanced Wave Memory 2)」を搭載した1Uラック音源モジュール。内容としては、同時期に発売された同社の「SY77」のAWM2セクションを独立させた、いわば「SY77から鍵盤とFM音源を抜いたもの」といった感じの仕上がりになっています。
 
 関連記事:「YAMAHA SY77 ~2つの音源を持つオールインワン・シンセ[1989年]
 
 
 なおTG55の鍵盤付きモデルは「SY55」に相当しますが、発売はTG55の方が先です。モジュールの方が先行発売というパターンはちょっと珍しいですね。
 

YAMAHA TG55 
 
 

仕様

 サンプリング周波数48kHz(Max)、量子化ビット数16bitリニアでサンプリングされた、合計2Mバイトの(当時としては)大容量の波形ROMを内蔵。プリセット音色(=ボイス)は計64種。本機では、最大16種類のボイス+1系統を組み合わせて演奏するモードを「マルチプレイモード」と言い、16マルチがプリセットで用意されています。
 
 なお本機でのRAM領域(書き換え可能なメモリ領域)は「インターナル」と呼ばれ、こちらも64ボイス+16マルチが内蔵されていますね。
 
 
 最大同時発音数は16音。演奏中に自動的に最大発音数を各楽器に適切に割り当てられる「DVA機能」も併せて実装しており、全MIDIチャンネルを使った最大同時16音色のマルチ・ティンバー演奏も可能となっています。

 

YAMAHA TG55(advertisement)
TG55/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

内蔵フィルターについて

 本機の特徴的なのが内蔵フィルターと言えるでしょう。1音色につき最大8基をアサインできるデジタル・フィルターが装備されており、これはローパス(LPF)、ハイパス(HPF)、そして組み合わせによりバンドパス(BPF)も可能。切れもよく、レゾナンスで自己発振もします。このフィルターはSY77と同等であり本機のみの特性ではないのですが、この時代のラック型デジタルシンセで、自己発振領域までレゾナンスをカバーしているというのは珍しいですね。
 
 
 音色ニュアンスの補正用としてだけではなく積極的な音作りにも対応する、当時としては本格的なデジタル・フィルターだったわけです。
 
 
 

内蔵エフェクトについて

 内蔵のデジタル・マルチ・エフェクトは全34種が用意されています。ほとんどはリバーブ(およびディレイ)をはじめとする空間系エフェクトですが、ディストーション系もいくつかありました。

 

 

 

カードスロットについて

 本機には「音色データ用」と「波形データ用」の2基のカードスロットを搭載しています。別売りのRAMカード(YAMAHA MCD32、MCD64等)によってメモリの拡張が行えた他、『YAMAHA ROM CARD for SY55/TG55』として数多くの音色ROMカードものちに発売。拡張性も悪くなかったと思います。
 

YAMAHA TG55
 
 
 

つぶやき的な

 冒頭で本機を「SY77から鍵盤とFM音源を抜いたもの」と称してしまいましたが、発売当時から「SY77(のAWM2)とTG55の音源はキャラクター的に違う!」と、一部のユーザーの間で話題にのぼることもありました。今となってはどちらを聴いてもチープとゆう印象しかなく、実際の出音の違いはよく分からないのですが(汗)、内蔵波形容量はSY77が4Mバイト(112波形)、TG55が2Mバイト(74波形)と、実は全く同等ではなかったんですよね。。
 
 
 同社で言えばSY77、他社も含めるとKORG M1あたりが同世代のシンセと言えるのですが、TG55といえば、それら花形シンセの陰に隠れあまり目立たないモデルとして隅に追いやられてしまった「不憫な子」といった個人的印象です。。
 
 
 今日ではワゴンセールで「どれでも1,000円ポッキリ!」みたいな感じで叩き売られている光景を目撃することも何度か。。80年代風味を出すためのスパイスとして今でも使いどころがあるかもしれませんよ。ないかもですが。
 
 
 
 関連記事(ヤマハTGシリーズ):
 「YAMAHA TG100 ~ヤマハ最初期のGM対応DTM音源モジュール[1992年]
 「YAMAHA TG300 ~XG発表前に発売された本格派DTM音源機[1993年]
 「YAMAHA TG77 ~SY77の音源モジュール版[1990年]
 

仕様
■音源方式:AWM2(サンプリング周波数 最高48kHz、量子化 16bitリニア)
■波形メモリー:2Mバイト(波形データ数:74)
■最大同時発音数:16音
■マルチティンバー数:16
■内部メモリー:プリセット64ボイス+16マルチ、インターナル64ボイス+16マルチ
■外部メモリー:カード・スロット×2
■内蔵エフェクト:リバーブ系×34タイプ
■表示画面:LCD(バックライト付き。2行×16文字)
■出力端子:L/MONO、R、インディビジュアル・アウト×2、ヘッドフォン

■ディスプレイ:16文字×2行LCD(バックライト付き)
■外形寸法:480(W)×44(H)×310(D)mm
■重量:4.2kg
■発売当初の価格:110,000円
■発売開始年:1989年

 

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