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1990年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.297】YAMAHA TG300 ~XG発表前に発売された本格派DTM音源機[1993年]

2018/07/01

 今回ご紹介する電子楽器は、ヤマハが1993年に発売した「TG300」という2Uハーフラック音源モジュールです。当時の定価は75,000円。以前本ブログでも紹介した「TG100」の1年後に発売された、TG100の大幅バージョンアップ版といった趣きの一台となっています。ヤマハ初期のDTM向けハード音源ですね。

 

YAMAHA TG300

 

 まずハーフラックなのに2Uというずんぐりとした外観が目を引きます。ではTG100との比較を交えつつTG300の内容を展開していきたいと思いますよ。
 
 関連記事:「YAMAHA TG100 ~ヤマハ最初期のGM対応DTM音源モジュール[1992年]
 
 
 

仕様・音源ほうめん

 同時発音数32音、16パート・マルチティンバー、GMレベル1に対応したトーン・ジェネレーター。同社のSY99などでも採用されたAWM2サンプリング音源方式を採用しており、AWMだったTG100よりも純粋にサウンドのクオリティは上がっていると思います。
 
 プリセット数も順当に増えており、通常の音色で456種類、加えて9つのドラムセットを内蔵しています。
 
 
 

音色セットについて

 TG300では以下4つの「サウンドモジュールモード」を備えており、演奏法に応じて切り替えることができるようになっています。

①GM-A モード
②GM-B モード
③C/M モード
④Single モード

 
以下は各モードごとの詳細です。
 
 
①GM-A モード

 GMシステムレベル1に完全対応したマルチ音源モード。いわゆるTG300ならではの標準なGM対応モードといったところですね。内蔵の多彩なプリセット音色や様々な機能をフルに利用することができます。
 
 
②GM-B モード
 
 GM対応という意味では上記Aモードと同じですが、実は本モードでは(ローランドの)GS音源の音色配列となっており、ローランド社の当時のDTM標準機(おおむねSC-55mkII)をシミュレートしています。
 
 当時はローランドのDTM音源機(あるいはパッケージ商品のミュージ郎)が事実上のDTM標準セットみたいになっていたので、ヤマハさんもそれに乗っかった形になったのでしょう。その頃は “GM用データ”と呼ばれる演奏データでも、実際はGMで規定されている情報以外のMIDI情報(→GS音源固有のMIDI情報)を含んでいることも多々あり、それらデータを忠実に再生するにはこのGM-Bモードが有効だったと思われます。
 
 
③C/M モード
 
 言わばローランドの初期のミュージ郎(にバンドルされていたハード音源・CMシリーズ)に対応した音色配列モード。余談ですが、当時のTG300のマニュアルには、C/Mについては以下のように記述されていました。

C/Mとは、GMシステムレベル1がMIDI規格協議会によって承認される前まで一般的だったコンピューターミュージック用マルチ音源のモードで、C/M用に作成されたコンピューターのミュージックデータをほぼ同じ系統の音色で演奏できます。

 
 うーん、ひと言も “ローランド”というワードが使われていないのがポイントですね。いわゆるデファクトスタンダードという扱いで社名を伏せる辺りは、当時のヤマハさんの意地みたいなものを感じます(笑)
 
 
 上記のGS音源同様、このC/M音色セットに対応したデータもその頃はまだ出回っていましたし、当時のパソコン通信でもアマチュアによる演奏データがしばしばアップロードされました。ヤマハさんとしてもこういった流れを無視できず、GM以前の標準的な音色配列にも対応させたと思われます。
 
 
④Single モード
 
 MIDIキーボードの拡張用シングル音源として使用するモード。このSingleモードは上記3つとは決定的に性格が異なっていて、手弾き用として使える演奏モードといったところです。なおこのモードにするとTG300のパート2~16は発音しなくなり、パート1だけが発音します。
 
 
 

音色エディットについて

 TG100では、各エレメント(→1音発音するための最小単位)ごとのボリューム、アタックタイム、リリースタイム程度しかエディットできなかったのですがTG300では大幅に強化。各エレメントごとにピッチEG、フィルターEG、アンプEG、LFO(※ただし1エレメントに1系統のみ)が装備されるなど、当時のちょっとしたデジタルシンセに追いついた感じですね。またエディットした音色は本体内にメモリー可能です。

 

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内蔵エフェクターについて

 リバーブ系×11、コーラス系×7、そしてバリエーション系×25が用意されており、合計3系統のエフェクターを各パートごとに独立して掛けることができるようになりました。TG100では「リバーブ系×6、ディレイ系×2」にとどまっていたので大きな向上点と言えるでしょう。
 
 
 なおバリエーション系に含まれるものは、オートワウ、フランジャー、コンプレッサーなど様々ありますね。もちろん各種エフェクターはエディットも可能。
 
 
 

外観/操作性について

 TG300はハーフラック2Uサイズ。単純にTG100×2倍の体積かと思いきや、奥行が5cmほど深くなっているのでやや大柄なイメージです。とはいえ本体重量は1.0→1.9kgとさほどの増加ではありません。2Uにしたのはひとえに「広くてグラフィカル(128×64ドット)なLCDディスプレイ」を採用したかったからではないかと推測します。実際、操作性についてもTG100から大幅に向上したと言えるでしょう。
 

YAMAHA TG300G
 
 こちらはDTMパッケージ『HELLO! MUSIC! 300』に同梱されていたホワイト・バージョン(→TG300G)。ホワイトって言ったって20年以上も前の個体なので相当黄ばんでいるのですが。。
 
 
 

つぶやき的な

 ヤマハからXGという独自の音源規格が発表されたのは確か1994年秋頃。それまでDTM業界において、ローランド(ミュージくん、ミュージ郎など)の後塵を拝してきたヤマハにとって、宣戦布告をするかのような出来事だったことを記憶しています。
 
 
 そのXG音源機の先鋒となったのが「MU80」であり、その後ローランドに追いつき追い越せで『YAMAHA MU80 × Roland SC-88戦争』が90年代に勃発したことは個人的に記憶に新しいところであります(笑)。ヤマハさんもGMを独自拡張したこのXG規格で、DTM業界の水準を大きく引き上げてくれたのだと回想します。
 
 
 さてそこでTG300。本機が発売されて(市場に出回って)、数ヶ月~1年という短期間でXG規格が発表されたということになります。TG300の開発終盤の頃にはヤマハさんの頭の中はおそらく次のXGでいっぱいだったのでしょうし、実際、このTG300は短い期間で次世代機(MU80)にバトンを渡すこととなりました。うーん。。TG100から大幅な機能アップを果たしたにもかかわらず、何とも気の毒な境遇ですね。。
 
 
 
 関連記事(ヤマハTGシリーズ):
 「YAMAHA TG100 ~ヤマハ最初期のGM対応DTM音源モジュール[1992年]
 「YAMAHA TG77 ~SY77の音源モジュール版[1990年]
 「YAMAHA TG55 ~新音源AWM2を搭載したモジュール版SY55 [1989年]
 

仕様
■音源方式:AWM2音源
■内部波形メモリー:6MB相当(16bitリニア換算)
■最大同時発音数:32音
■パート数:16マルチティンバー
■プリセットボイス数:ノーマル456ボイス+9ドラムセット
■内蔵エフェクト:3系統(リバーブ×11、コーラス×7、バリエーション×25)
■外形寸法:220(W)×91.6(H)×257.2(D)mm
■重量:1.9kg
■発売当時の価格:75,000円(税別)
■発売開始年:1993年

 

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