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1990年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.290】YAMAHA TG100 ~ヤマハ最初期のGM対応DTM音源モジュール[1992年]

2018/11/26

 

 

 今回ご紹介する電子楽器は、ヤマハが1992年に発売した「TG100」という1Uハーフラック音源モジュールです。当時の定価は45,000円(税別)。当時規定されて間もないGM(システム・レベル1)規格に準拠した、ヤマハ最初期のDTM向けハード音源といったところですね。

 

YAMAHA TG100

 

 それまでの同社のTGシリーズといえば鍵盤付きシンセ「SYシリーズ」のモジュール版として発売されていたのですが、本機TG100は全く異なる性格の製品となっていて、一般にヤマハ初のGM対応のDTM音源モジュールとして名を残しています。
 
 
 

音源仕様

 GMレベル1に対応したコンパクトなトーン・ジェネレーター。同時発音数28音、16パート・マルチティンバー。音源部は同社のPCM路線「AWM音源」を採用しており、DTM向けの様々な楽器音を内蔵していました。搭載音色数は以下。
 

プリセット(ROM)領域:202音色(ノーマルボイス192音色+ドラムボイス10種類[キット])
インターナル(RAM)領域:64音色

 
 GM対応ということで市販のGM曲データの再生もお手のものでしたが、実際のところは他社製品(Roland SC-55mkII、KAWAI GMega)などとは音色のニュアンスが明らかに違っているといったこともあったそうですね(→同じ音色番号・音色名でも)
 
 関連記事:「KAWAI GMega(/GMegaLX) ~カワイ初となるGM音源モジュール
 
 
 生楽器系の音色は総じてチープなキャラクターなのですが(笑)、2つのエレメントを重ねるレイヤーも可能だったりして、ある程度厚みのあるサウンド作りも可能でした(→当然同時発音数は減っていくが)。FM音源を元にサンプリングしたと思われるベル系の音色などは比較的よい出来だったと思います。
 
 
 

音色配列について

TG100では以下4つの音色配列をサポートしていました。

①GM LEVEL1
②クラビノーヴァ用
③C/M Type1
④C/M Type2

 
 ②のクラビノーヴァといえば同社の電子ピアノシリーズとして有名なのですが、その昔内蔵オーケストラ音色でのアンサンブル再生なんてこともできるモデルもありました(→【DOC】ディスク・オーケストラ・コレクション)。それらクラビノーヴァの独自音色配列に対応していたのことです。
 
 ③と④はそれぞれ、ローランド社のCM-64のLA音源部分、CM-64のPCM音源部分の配列となります。他社の製品まで互換性を広めて、それまで数多く発売されたDTMデータ(ソフト)の資産を生かす製品作りを目指していたことが伺い知れます。
 
 
 

各種パソコンとの接続について

 TG100本体にはシリアル・インターフェイスを装備しており、これによりMIDIインターフェイスを介することなくダイレクトに各種パソコンと接続できました(→本体背面のスイッチにより接続先のPCタイプを選択)。PC-98シリーズ、IBM PCではRS-232Cポート、MacintoshではRS-422ポートにつなげます。なおシーケンス・ソフトはRS-232CポートやRS-422ポートをサポートしているものに限られます。
 
 
 

音色エディットについて

 各エレメントごとにアタックタイム(→音の立ち上がり時間)、リリースタイム(→音の余韻時間)の変更が可能。また二つの音色を組み合わせて作られている音色の場合は、各々の音のボリューム、チューニング、パンなども編集できます。
 
 とはいえ本機でできる音色エディットは上記くらいなもので、音色のニュアンスを変えるフィルター機能などはありません。

 

 

 

内蔵エフェクターについて

 リバーブ系6種(ホール1/2、ルーム1/2、プレート1/2)、ディレイ系2種(ディレイ1/2)を搭載。これらエフェクトは各パートごとに8段階に設定することが可能です。
 
 
 

派生モデル・CBX-T3について

 TG100からディスプレイと操作ボタン類を省略したモデル。縦置き型であり本体カラーも変更されています。
 

YAMAHA CBX-T3

 これはDTMパッケージ製品である『HELLO! MUSIC!』に同梱されていた音源であり、最大同時発音数28音、16マルチ・ティンバー。192ノーマルボイス・10ドラムキットなど内部仕様はTG100とほぼ同じです。またGM、DOC(クラビノーヴァの伴奏用音色配列)、C/M(ローランド CM-64、MT-32互換音色モード)の3モードに対応している点なども一緒。
 
 
 

つぶやき的な

 最初期のGM対応音源モジュールということでまだまだ発展途上といった印象の本機ですが、前述したように多くの音色配列に対応し、多くの種類のコンピューターと直接接続ができたという互換性の高さは特筆すべき点と言えるでしょう。
 
 
 ただしTG100単体での操作性はあまりよろしくなく、奥まった位置にマウントされているLCD(情報量も16文字×1行と少ない)は非常に見にくく使いにくかったらしいです。。ほとんどの操作はコンピューター側でできるのであまり問題なかったのかもしれませんが。
 
 
 
 関連記事(ヤマハTGシリーズ):
 「YAMAHA TG300 ~XG発表前に発売された本格派DTM音源機[1993年]
 「YAMAHA TG55 ~新音源AWM2を搭載したモジュール版SY55 [1989年]
 「YAMAHA TG77 ~SY77の音源モジュール版[1990年]
 

仕様
■音源方式:AWM音源
■最大同時発音数:28音(後着優先)
■パート数:16マルチティンバー
■プリセットボイス数:ノーマルボイス192音色、ドラムボイス10音色
■インターナルボイス数:64音色
■内蔵エフェクト:リバーブ系6種(ホール1/2、ルーム1/2、プレート1/2)、ディレイ系2種(ディレイ1/2)
■外形寸法:220(W)×40.6(H)×196.5(D)mm
■重量:1.0kg
■発売当時の価格:45,000円(税別)
■発売開始年:1992年

 

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