キーボーディスト、脱初心者を目指す

ピアノ、シンセサイザー、オルガンとか鍵盤楽器もろもろ。関係ない記事もたまにあるよ

1990年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.418】Roland VK-7 ~バーチャル・トーンホイール音源搭載のデジタル・コンボオルガン[1997年]

2018/11/28

 

 

 こにちは! 今回取り上げちゃう鍵盤は、1997年にローランドからリリースされたオルガン「VK-7」です。当時の定価は185,000円。

 

Roland VK-7

 

 いわゆる1段(61鍵)のコンボタイプ・オルガンですね。同社の「VK」で始まるモデルといえば同社のコンボオルガン・シリーズとして有名でしたし、本ブログでもいくつか紹介させてもらってます。
 
 
 さて90年代後半にもなると電子鍵盤楽器もデジタル全盛の時代でして、このVK-7も新時代の音源を積んで颯爽とシーンに登場しました。それでは早速記してみましょう。
 
 
 

概要

 トーンホイール方式のビンテージ・オルガンの発音機構を徹底解析し、当時先進のデジタル・モデリングによってシミュレートした「バーチャル・トーンホイール方式」音源を採用。鍵盤は全鍵発音(=完全ポリフォニック)であり反応も高速。
 
 
 オルガン演奏に必須といってもいいロータリー・サウンド効果もDSP技術によりシミュレートしており、さらにリーケージ・ノイズ、クリック・ノイズなども設定により付加可能。
 
 
 ビンテージ・オルガンの持つ特性をデジタルにて高度に再現した、“90年代風バーチャル・トーンホイール・オルガン”といった趣きになっています。
 
 
 

基本仕様など

 音源部は、トーンホイール・オルガンの発音原理を部品単位で解析し、デジタルにてシミュレートした「バーチャル・トーンホイール方式」を採用。常時発音可能な91基の独立したトーンホイールを装備しています(もちろんバーチャルなのだが)。オルガン・プリセット数は全64種類。
 
 
 各鍵は完全ポリフォニックであり、激しめのグリッサンドでも音切れせず、なおかつ反応も高速。また本機では、一般的なオルガンに見られる9列の「ハーモニック・バー」(※ハモンドで言うところのドローバー)を備えており、この各バーを任意に上げ下げすることにより波形を合成して音色を作っていきます。
 
 
 オルガン専用機では必須と言ってもよい「パーカッション(2nd/3rd)」、「ソフト」、「スロー」、「ビブラート/コーラス」も搭載しており、各ボタンも独立して配置されていますね。特に本機のコーラスはかかり方のニュアンスがよかったと回顧します。

 

 

 

選べる「トーンホイール」のタイプ

 トーンホイールというのはそもそも一定速度で回転する多数の金属円盤のこと。その円盤がコイルの近くを回転し(各円盤のふちはギザギザになっている)、微小な電流波を生じさせることにより独特のオルガン・サウンドを発生させます。

本機の “バーチャル”・トーンホイールは以下2つのタイプから選べるようになっています。

・Vintage
・Clean

 
 ここでの「Vintage」ではリーケージ・ノイズを多く含むシミュレートがなされています。リーケージ・ノイズというのはそうですね、、押した鍵盤とは無関係なトーンホイールから漏れ出たノイズ信号といったところです。HAMMONDのビンテージ・オルガンではよく見られたものであり、VK-7ではそれをデジタルで模したものと言えるでしょう。
 
 
 一方「Clean」はその名の通り、(リーケージ)ノイズを含まないクリーンなトーンホイール・サウンドとなっています。
 
 
 この他にも「キー・クリック」(→打鍵時/離鍵時に出る “プツッ”という微かなノイズ音)のシミュレーターも搭載されていますね。このように往年のビンテージ・オルガンっぽさを出すためのいくつかの要素が、デジタルにて用意されているといった感じです。
 
 
 

オーケストラ音源も入ってる!

 本機にはオルガン音源だけではなく、以下6つの音色グループ(全39種類)のオーケストラ音源も搭載されています。

●STRINGS
●CHOIR
●BRASS
●BASS
●ATTACK
●OTHERS

 
 ストリングス、クワイヤ(合唱)、ブラス、ベースといったところは想像しやすいですね。なお「アタック」は音の立ち上がり部分にごく短いアクセントをつけるというものであり、オルガン音と重ねた時に一味違うオルガン・サウンドを得ることができます。ちょっとパーカッシブな鳴りが欲しい時に重宝するかも。
 
 
 このようにこれらオーケストラ音源部は単体で鳴らすというよりも(※単体でも鳴らせるが)、オルガン音色と混ぜて使うと厚みが出て面白いかもといったところ。ストリングスやクワイヤをオルガンに重ねると、ちょっとした70年代風プログレっぽいニュアンスが出せたりします。
 
 
 VK-7では鍵盤スプリットもできるため、左手パートをベース、右手パートをオルガンといったように、ペダル鍵盤がなくてもベースパートを演奏することが可能。またこのスプリット機能を使って、左右パート別々のオルガン音色を割り当てることもできます。

 

 

 

3パート(メイン/サブ/ペダル)個別設定が可能

 これはどういうことかというと、リアパネルの2つのMIDI INにサブ鍵盤(→2段鍵盤で言うところの下鍵盤)とペダル鍵盤を接続し、本機(メイン鍵盤)と併せて3パートの鍵盤設定をコントロールできるというもの。VK-7の内蔵音源だけで下鍵盤や足鍵盤のサウンドも演奏・操作することができるのです。
 
 
 ハーモニック・バーは1セットのみですが、それぞれのパートのスイッチが配置されており切り替えが可能。選択したスイッチのパートのみハーモニック・バーによる音の変化が反映されるといったところですね。
 
 
 実際のところはハーモニック・バーは、ムービング・フェーダーよろしくパートを変更するごとに自動的に移動してくれないので、慣れないとちょっと混乱するかもしれません。。まあ致し方ないところであります(ちなみにVK-7の2段バージョンであるVK-77では各パート独立したハーモニック・バーが設置されています)
 

Roland VK-7(advertisement)
VK-7/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

個人的かいそう

 80年代に作られたVKシリーズに比べたら、音の迫力というか “ビンテージ・オルガン再現度”は各段にアップしていますね。VK-7発売当時、勤めていた楽器屋の展示品のそれをさんざんいじった記憶がよみがえります。90年代のデジタルなRolandっぽい発音の明瞭さと反応のよさが感じられる一台でした。
 
 
 HAMMONDはロック/ジャズどちらもOK! という印象だったのですが(※個人的に)、このVK-7はロックオルガンとして使用されることを意図して作られたという印象ですね。ロータリー・シミュレーターはもちろんオーバードライブも内蔵されており、これ一台でロックな現場でも十分対応できるといった感じでした。いわゆるレスリー端子(11ピン)も備えているので、現場に本物のレスリー・スピーカーがあればそれに直でつなげることもできます。
 
 
 まあ僕は車がなく可搬性重視だったので、後年モジュール版のVK-8Mを購入し、さまざまな現場で使い倒すことになったのでした。。
 
 
 
 関連記事(Roland VKシリーズ他):
 「Roland VK-1 ~コルグCX-3のライバル的?コンボ・オルガン[1979年]
 「Roland VK-1000 ~Rhodesブランドのオルガン、否、シンセっぽくもある[1991年]
 「Roland VK-8M ~ローランド渾身のオルガンモジュール[2003年]
 
 「KORG (旧)CX-3/BX-3 ~レスリーとつなげてロックに鳴らす![1980年]
 

仕様
■鍵盤:61鍵盤(ベロシティ付き)
■音源:バーチャル・トーンホイール方式
■最大同時発音数
 オルガン部:完全ポリフォニック(全鍵発音)
 オーケストラ部:64音
■オルガン部:
 ハーモニック・バー:16'、5 1/3'、8'、4'、2 2/3'、2'、1 3/5'、1 1/3'、1'
 パーカッション(SECOND、THIRD、SOFT、SLOW)
 ビブラート/コーラス(V-1、V-2、V-3、C-1、C-2、C-3)
 ロータリー・サウンド(BYPASS、BRAKE、FAST/SLOW)
 オーバードライブ
 アンプ・シミュレーター(Type I,II、 Stack I,II、 Stack Mix、Combo)
 リング・モジュレーター
■オーケストラ部:STRINGS、CHOIR、BRASS、ATTACK、OTHERS
■エフェクト:リバーブ
■本体メモリー:
 オルガン・プリセット数 64
 オーケストラ・ボイス数 39
 ユーザー・プリセット数 16
■外形寸法:1160(W)×100(H)×339(D)mm
■重量:14.8kg
■発売当時の価格:185,000円(税別)
■発売開始年:1997年

 

関連記事および広告

関連記事および広告


-1990年代', Roland, 楽器・機材【Vol.〇〇】