1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.398】Roland U-110 ~プリセットPCM音源搭載の1Uモジュール[1988年]
2019/02/08
今回ご紹介するシンセサイザーはローランドPCMサウンドモジュール・「U-110」であります。1Uラックサイズの音源モジュールであり、発売は1988年末。定価は99,800円でした。
1988年のローランド・シンセサイザーといえば他にもDシリーズ(D-10、D-110、D-20)といったものがリリースされたのですが、LA音源を搭載したDシリーズとは異なり、このU-110(およびUシリーズ)はPCMプリセット方式のサンプルバック・シンセサイザーといったところです。
音源部について
DC-PCM録音方式によるリアルな楽器音を収録。ピアノ、ギター、ベース、オルガン、ストリングス、管楽器系、パーカッション系など、実在する生楽器を中心とする全99音色(64プログラマブル・パッチ)をプリセット。
なおプリセット99番目はドラム音源(ドラムキット)となっており、ノート・ナンバーに対応させて、37種類の打楽器音が収められています。
同時発音数とか
最大同時発音数は31音であり、最大6パートを組み合わせてパッチを作ることができる “6マルチティンバー”仕様となっています。
このマルチティンバーというのは、同社の「D-10」などと同様に、1台で(最大6パートまでの)アンサンブル・プレイが行えるというものですね。シーケンサーで演奏させるケースにおいても、本機だけでもそこそこ対応できたといったところ。
アウトプット(出力)について
本機は、ステレオ出力(L/R)端子とは別に、6つの独立アウトプット端子を備えています。各ティンバーの出力を個別のアウトプットにアサインして出力し、外部ミキサーおよびエフェクターにてパートごとに加工できるというメリットがありますね。
なおコーラス、トレモロなどのデジタル・エフェクトも本体に内蔵されているので、これ一台でもある程度のエフェクティングに対応します(これらエフェクトのセッティングは各パッチごとにメモリーしておくことも可能)。
実はアフタータッチ対応
本機に鍵盤は付いていませんが、アフタータッチ対応のマスターキーボードからのMIDIアフタータッチ情報も受けることができます。
このアフタータッチですが、レベル(音量)、ピッチ(音程)、LFOそれぞれに独立して、ポリフォニック・プレッシャー・センシティビティ(→鍵盤一つ一つの独立したアフタータッチ情報を受け取る)を設定することができます。
関連記事:「シンセサイザーの「アフタータッチ」機能について ~現行シンセの対応表も記してみた」
カードスロットについて
1Uの限られたパネルスペースに空きカードスロット(×4)を装備。これは、後述する音源ROMカード(オプション)により音色を拡張できるという設計になっています。つまり、内蔵音色+最大4枚分のカードの音色を組み合わせて使うことができるというもの。本機最大のセールスポイントとも言えるでしょう。
ROMカードのいいところは電源ONで即座に音色を扱える点。この辺りは、何枚ものフロッピーディスクを差し替えて読み込ませる必要があった当時のサンプラーとは異なり、スピード感のある音色呼び出しができたといったところです。
サウンドライブラリー(音源カード・別売り)について
U-110(およびU-20、U-220等)には、オプションで音源ROMカードが発売されました。型名は「SN-U110-**」。これらは徐々にラインナップを増やしていき、最終的には以下15種類がリリースされました。
- ●SN-U110-01「Pipe Organ & Harpsichord」
- パイプオルガンとハープシコードの音色ライブラリー。ポジティブ・オルガン6種、チャーチ・オルガン8種、ハープシコード6種の、合計20音色を収録。
- ●SN-U110-02「Latin & F.X.Percussions」
- ラテン&F.X.パーカッション系ライブラリー。コンガ、ボンゴなどを始めとする26種のラテン・パーカッションと、オケヒット、タイプライター、電話音などの19種類のSE系パーカッションなどを収録。
- ●SN-U110-03「Ethnic」
エスニック系楽器のライブラリー。シタール、タブラ、鼓、琴など、全11種の民族楽器音を計38音色収録。
●SN-U110-04「Electric Grand & Clavi」
ピアノ系ライブラリー。内訳は、エレクトリック・グランド・ピアノのサウンドが8種、クラビ(クラビネット)が4種の、合計12音色を収録。
●SN-U110-05「Orchestral Strings」
ストリングス・サウンド。オーケストラ等で使用されるバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスなど全11音色を収録。
●SN-U110-06「Orchestral Winds」
管楽器系ライブラリー。オーボエ、クラリネットなどの木管楽器、チューバ、フレンチホルンなどの金管楽器を、合計35音色収録。
●SN-U110-07「Electric Guitar」
オーバードライブ/ディストーション・サウンドをはじめ、ジャズギター系やピッキング・ハーモニクスなどの音も網羅したエレクトリック・ギター・サウンド・ライブラリー。全71音色を収録。
●SN-U110-08「Synthesizer」
シンセサイザー系ライブラリー。同社のD-50の内蔵音色などを含めた全28音色を収録。
●SN-U110-09「Guitar & Keyboard」
こちらのシンセサイザー・サウンドはJupiter-8などを中心に全16音色を収録。
●SN-U110-10「Rock Drums」
ロック系ドラム・サウンドのライブラリー。アコースティックドラム音×32種、エレクトリックドラム音×16種を収録。
●SN-U110-11「Sound Effects」
爆発音、鳥のさえずりなど、様々な効果音を34種類収録。
●SN-U110-12「Sax & Trombone」
サックス×10種、トロンボーン×10の、計20音色を収録。
●SN-U110-13「Super Strings」
計12音色収録。
●SN-U110-14「Super Ac Guitar」
計19音色収録。
●SN-U110-15「Super Brass」
計13音色収録。
価格は各6,000円だったと記憶しています。なお上記カードはUシリーズだけではなくRhodes Model 660/760等でも使えたそうですよ。
関連記事:「Roland Rhodes Model 660 ~これは “ローズ”なのか!?[1989年頃]」
U-110/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
個人的まとめ
ローランドのシンセ系音源チップにおいて、デジタルシンセ「D-50」に代表されるLA音源をざっくり “第1世代”と見ると、Uシリーズに代表されるPCM路線の音源チップ(LPチップと言います)は “第2世代”と見ることができそうです。
その頃は、FM音源(主にYAMAHA)、LA音源(Roland)に続くデジタルシンセサイザーの方向性として、“リアル楽器音路線”のPCM音源が熱い注目を集めていた時代でもありました。Uシリーズでは、当時のサンプラーに匹敵する生々しい楽器音がシンセ感覚で(とゆうかもろシンセだが)導入できるということで、結果的にそこそこのヒット商品となりましたね。定価10万円以下というのも、当時のサンプラーの価格相場からすればお手頃帯でした。
まあ90年代に入るとさらにPCM方式のシンセは音のリアルさに磨きがかかり、90年代半ばにもなるとすっかり陳腐化してしまったUシリーズという個人的印象はありますが。。
関連記事(ローランドシンセ・Dシリーズ):
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仕様
■音源方式:DC-PCM方式
■最大同時発音数:31音
■ティンバー数:6パート・マルチティンバー
■メモリー数:99プリセット・トーン、 64プログラマブル・パッチ
■ディスプレイ:16文字×2行LCD
■カードスロット:4基搭載
■外形寸法:482(W)×45(H)×358(D)mm
■重量:4.5kg
■発売当時の価格:89,800円
■発売年:1988年