【Vol.309】QUASIMIDI Rave-O-Lution 309 ~“革命的”・RAVEマシン!?[1997年]
2018/11/28
今回ご紹介する機材は、QUASIMIDIというドイツのメーカーが1997年に発売した、「Rave-O-Lution 309」というマシンです。(モノ)ベースシンセ、ドラム音源、シーケンサー、エフェクターを本体内に搭載し、当時流行していたテクノ、ダンストラック制作に特化したグルーヴ・ギアといった趣きの一台ですね。定価は168,000円(税別)でした。
ぱっと見、当時ヒットしていたRoland MC-303を強く意識したかのような第一印象ですが、つまみ類の数ではこちらの方が断然多いですね。Rave-O-Lution 309では、内蔵音色+シーケンサーを駆使したグルーヴ・メイクから、フロア向けのライブパフォーマンスまで幅広く対応した、当時のテクノDJ(およびトラックメーカー)向けマシンといったところです。もちろんMIDI対応。
関連記事:「Roland MC-303 ~大ヒットを記録したグルーヴ・ボックス[1996年]」
パネル上の構成(音源部)
本機のパネルでは音色ごとに大きく5つのブロックに分かれています。
・KICK
・SNARE
・HIHAT
・PERCUSSION SET
・BASS-LEAD-SYNTHESIZER
各ブロック(パート)には各種エディットつまみが装備されていて(もちろん内容は各パートごとに異なる)、リアルタイムな音色変化が可能。また全てのブロックには共通して「SOUND」と書かれた青いつまみが用意されており、これを回せばパートごとに簡単に音色を切替することができます。他にも各パートごとにミュートができる「MUTE」ボタンもありますね。
ドラム部(キック/スネア/ハイハット/パーカッション)
発音数は12音。TR-808/TR-909っぽい定番のドラムサウンドから、ちょっとエフェクティブ、あるいは生っぽいリアルなサウンドまで幅広く網羅しているといった感じです。パラメーターつまみは、SOUND、TUNE、TONE、ATTACK、DECAY、LEVELなどが確認できます。
シンセ部(ベース/リード)
発音数は1(モノフォニック)。サンプルを一切使用していないという「AES【Analog Emulation Synthesis】方式」を採用。これはローランドおよびMOOGタイプの28の波形モデル(サイン波、矩形波など)を、キレのよい24dB/oct(4pole)の “バーチャル・コントロール・フィルター”を通すことにより、太くコシのある音色を生成できるというもの。これにより多彩な音作りを実現しています。
特筆すべきはやはりリアルタイムでの反応の良さと言えるでしょう。レゾナンスやカットオフを始め、エンベロープ・パラメーター(ATTCK/DECAY/SUSTAIN)、アクセント&グライドなども、全て直感的につまみで可変することができます。
シーケンサー部
パターンはプリセットで100種類内蔵。作ったフレーズをメモリーできるユーザー・パターン領域も100確保しています。なおパターンの入力方法はステップ/リアルタイム両方に対応。
ベース・トラックはMC-202などとちょっと似た方式が採用されており、鍵盤状に配された12個のボタン(→1オクターブ分)によって音階を入力するなど直感的な入力を可能にしています。ベロシティやゲートタイム(→音の長さ)も設定できます。
関連記事:「Roland MC-202 モノシンセ内蔵の2chデジタル・コンポーザー[1983年]」
ドラム・トラックは、ローランドのリズムマシンで採用されてきた “ドラム・グリッド”方式を取り入れています。こちらのパターンもリアルタイムはもちろん、入念なステップ入力もOK。
こうして各トラックごとのパターンを作ったら、それを組み合わせて「ソング」にしていくという流れ。ソングは再生中でもエディット可能で、操作がそのまま音に反映するのが本機の特徴的なところ。パネル上のツマミおよびボタンのほとんどはMIDIに対応しており、リアルタイムで動かしたパラメーター(の動き)はシーケンサーのMASTERTRACKにソング単位で記録が可能です。
エフェクター部
各パートごとに掛け具合を調節できる全2系統のエフェクターを内蔵(→リバーブ/ディレイ系が1系統、コーラス系が1系統)。またミックス・アウトの直前には、2バンドのパラメトリックEQにて周波数帯域の調整が可能。さらに「OVERBLAST」という重低音強調用つまみも用意されてたりして、クラブでのレイヴ環境に合わせて低音をブーストできたりもします。
本機の内蔵エフェクターでできることは決して多彩とは言い難いのですが、OVERBLASTはいかにもフロアでの使用を前提として盛り込まれた、本機の特徴とも言える機能といったところですね。
QUASIMIDI Rave-O-Lution 309/有限会社 福産起業 雑誌広告より画像引用
つぶやき的な
まあ本機も、90年代に各社よりリリースされた “TB-303クローン・ファミリー(?)”の一つとして見ていいのでしょう(TR-808/909クローンという見方もできるが)。。国産のものに比べるとデザインもいまいち洗練されておらず、海外製品ならではの無骨さが若干垣間見られます。当時の日本語訳されたマニュアルも結構難解だったそうですよ。
とはいえ出音は太く存在感があり、当時広く出回っていたMC-303と差別化を図りたい人向けのグルーヴ・ボックスとしては悪くなかったと思います。本体のTAPボタンによりパターンのテンポ調整も簡単にできたので、ライブでも使える一台だったのではないかと。
ちなみにこのQUASIMIDIというメーカーは、90年代にごく数種類のマシンを発表し2000年には倒産したという短命の(幻の?)ブランドでもあります。本ブログでも機会があれば、数少ないQUASIMIDIのシンセとかもまた紹介してみたいと思いますよ。
関連記事(ローランドTB-303 近似コンセプト機):
「WILL SYSTEM MAB-303 ~MIDI対応のハーフラックTB-303クローン[1994年頃]」
「NOVATION BassStation (Keyboard) ~ベース・シンセサイザー[1994年]」
「MAM MB33 ~90年代半ばの廉価TB-303クローン機[1996年頃]」
「DOEPFER MS-404 ~コンパクトな1Uラック・TB-303クローン[1995年]」
「Roland MC-303 ~大ヒットを記録したグルーヴ・ボックス[1996年]」
仕様
■同時発音数:17音(モノ・ベース/リード・シンセ + 16音ポリ・ドラム音源)
■シーケンサー:
5トラック+マスター・トラック+8スペシャル・ループ・トラック
16ソング、100プリセット・パターン、100ユーザー・パターン
■エフェクト:リバーブ/ディレイ系×8、コーラス系×8、2バンド・パラメトリックEQ、OVERBLAST
■外形寸法:400(W)×98(H)×225(D)mm
■重量:3kg
■発売当時の価格:168,000円(税抜)
■発売開始年:1997年