【Vol.68】KORG TRIDENT ~3つの音源心臓を持つ8音ポリシンセ[1980年]
2018/11/25
今回ご紹介するシンセサイザーはちょっとマニアックかも。KORGが1980年に発売した「TRIDENT(トライデント)」です。
トリニティやトライトンではありませんよ! こうやって見るとコルグさんは昔から「3(tri)」が好きなのでしょうか。。記憶が定かではない部分もあるのですが、僕の知っている範囲で紹介してみたいと思います。
KORG TRIDENT/浜松楽器博物館にて撮影
時代背景
当時、海外ではシーケンシャル・サーキッツの「Prophet-5」が登場し、日本でもメモリー・バンクを持った小型のポリシンセの出現が待たれていました。
そこで登場したのがコルグのTRIDENT(小型じゃないけど)。同社初となるキーアサイン方式(※1)の8ボイスのシンセサイザーです。発売当時の価格は560,000円でした。1980年の発売なのでMIDIはまだ装備していませんね。なおCV/GATE端子は付いています。
ネーミングとか仕様とか
この8音ポリフォニック・シンセと、ブラス用のパラフォニック・シンセ、ストリングス・マシンの3つの音源を一体にしたことから「TRIDENT」だそうな。なるほどー。ピアノやエレピなどの音色も(一応)入っていたし、当時としては最高峰のポリフォニック・アンサンブル・キーボードだったらしいです。余談ですが元々トライデントとは、ギリシャ神話で海神が持つ三つ又の矛(ほこ)のことだそうです。
↑シンセサイザー・セクション
↑ブラス・セクション
↑ストリングス・セクション
なおシンセ・セクション、ブラス・セクション、ストリングス・セクションの音色は、それぞれ別々のアウトプットから取り出すことができました(もちろんミックス・アウトも可能)。それどころかセクションごとに独立したエクスプレッション・ペダル端子も装備していました。
2系統のVCO、-2dB/OCTのVCFを基本に、16音色のメモリーが可能。さらにプリセットの音色を合わせ、20音色をワンタッチでセレクトすることができました。また、キーボードスプリット機能や各種エフェクトも装備です。
ピッチベンドとか
ちょっと変わっているのが、ピッチベンドとしてジョイスティックを採用しているところ。コルグといえばピッチベンドは「ホイール」のイメージが強いので個人的にはちょっと意外でした(※ただしTシリーズのようスティック状のものもいくつかある)
ちなみに翌1981年に発売された同社の「Mono/Poly」と「Polysix」はベンド、モジュレーション共にホイールになっています。
KORG TRIDENT/京王技研工業株式会社 雑誌広告より画像引用
個人的思い出
これは僕が勤めていた楽器屋でも、90年代に中古として仕入れたことがあるのですが、当初から売れる気が全くしなかったですね。実際本機に関しては年中特価セールをやっていたのですが(笑)、それでも売れなかったです。
奥行は広いし(→52.4cm)、61鍵にしては重いし(→21kg)で、早いとこ処分したかったのに2年以上在庫として残っていたことを記憶しています。どうでもいいですね。。
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※1 キーアサイン方式… 複数(→TRIDENTの場合8つ)の制御電圧を、同時にコントロール出来るキーボードで演奏して発音させる方式。元々は単音楽器であったシンセサイザーを和声化(=ポリフォニック化)するにあたって採用された発音方式の一つであり、もう一つの「全鍵盤発振方式」とは構造的に異なるものだった。
仕様
■鍵盤:61鍵
■最大同時発音数:8音ポリフォニック
■音色メモリー:16音(8個×2バンク)
■外形寸法:1012(W)×173(H)×524(D)mm
■重量:21kg
■発売当時の価格:560,000円
■発売開始年:1980年