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1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.125】Roland SH-1 ~ローランド初となる…[1978年]

2018/12/01

 

 

 ちょっと古いシンセサイザーを紹介してみますよ。今回はローランドの「SH-1」です。発売は1978年。当時の定価は99,000円。ローランドのシンセサイザーといえば1973年のSH-1000に始まるのですが、本機SH-1は “ローランド初”となる様々な工夫・改良がなされています。ちなみにSH-7というシンセもSH-1とほぼ同時発売されました。

 

Roland SH-1
 
 
 

概要

 ローランドのSH-3の後継機として、小型低価格モデルとして1978年始めに発売。他社のモデルを見るとヤマハのCSシリーズ、コルグのMSシリーズなどがほぼ同期であり、ちょっとしたシンセサイザー(および多重録音)のブームが到来していた頃でした。YMOに代表されるテクノ・ポップの音楽がテレビでも流れ、一般の人達の間でもシンセサイザーという楽器が認知されるようになってきていましたね。
 
 
 SH-1は、10万円を切る低価格であり、小型ながら高級機なみの装備を乗せた、コストパフォーマンスの高いシンセサイザーとして市場に投入されました。なお基本回路の構成には、同社のSystem-700のノウハウが反映されているそうです。
 
 
 関連記事:「Roland SYSTEM-700 ~国産初の大型モジュラー・シンセサイザー[1976年]
 
 
 

ローランド初となる…

 サブ・オシレーター(VCO出力を分周して1オクターブまたは2オクターブ下の音を生成する)を搭載しました。これにより1オクターブ、2オクターブ下の矩形波のみではなく非対称矩形波も重ねることができ、非常に厚みのある音作りが可能になりました。それまでは難しかった金属的な音も出せるようになっています。
 
 
 また、「4重積分型」と呼ばれる新しいVCF回路を採用しています。この回路によってフィルターの動作精度が向上しただけではなく、ローランド特有の音色キャラクターの確立にも一役買うことにもなりました(→この4重積分型VCF回路はのちの同社のシンセサイザーにも採用し続け、“ローランドらしい音色”をブランド化していくこととなった)。
 
 
 ちなみに筐体(パネル)に樹脂成型(→要するにプラスチック成型)を採用したのも、ローランド製シンセとして本機が初めてです。
 
 
 

トランスポーズ・スイッチについて

 本機は32鍵盤ですが、トランスポーズ・スイッチを切り替えるだけで実質56鍵盤として鳴らすことができ、小型ながら高級機並みの幅広い音域を得ることができました。今となっては当たり前の機能ですが、当時としては目新しい装備でした。
 
 
 

ベンダー・レバーについて

 ピッチの変化だけでなく、VCFのカットオフ・フリケンシーの変化も割り当てることができました。スライダーによってそれぞれの可変範囲を設定可能であり、これによりギターのチョーキング奏法も可能になるという触れ込みでした。

 

 

 

つぶやき的な

 このSH-1(およびSH-7)発売の時期において、ヤマハとコルグからも安価な競合機種(YAMAHA CS5/CS15、KORG MS-10/MS-20など)が相次いで発売されており、ローランドもさらにコストパフォーマンスの高いシンセを出す必要がありました。そこですぐさま廉価モデル「SH-09」を市場に投入し、さらに翌79年には、SH-1の直系の後継機とも言うべき「SH-2」を早々と発売します。
 
 
 SH-09とSH-2はヒットし、結果としてSH-1は早々に製品ラインナップから姿を消してしまいました。スポーツにたとえると、有能な選手が次々とチームに加入し、チーム内での競争に勝てず消えていった悲運のアスリート、と見えなくもないです。大げさだけど。。
 
 
 

余談的な

 SH-1は、プラスチックス時代の佐久間正英氏(GLAYやJUDY AND MARYなどのプロデューサー)がベースに使用していたという話を聞いていて、個人的にはその印象が強いです。故・佐久間氏といえばベーシストとしても有名ですが、GLAYのライブなどではキーボードも弾いてるんですよね。
 
 
 
 関連記事(ローランドSHシリーズ):
 「Roland SH-1000 ~1973年発売の「国産初のシンセサイザー」
 「Roland SH-2000 ~30音色内蔵のプリセット・シンセサイザー[1974年]
 「Roland SH-3A ~幅広い音作りに対応した初期ローランド・シンセ[1974年]
 
 「Roland SH-32 ~卓上シンセで音作り[2002年]」   ※平成の卓上SH
 「Roland SH-201 ~21世紀によみがえった伝統の “SH” [2006年]
 

仕様
■鍵盤:32鍵
■最大同時発音数:1(モノフォニック)
■オシレーター部:1VCO+サブ・オシレーター
■外形寸法:610(W)×135(H)×370(D)mm
■重量:6.4kg
■発売当時の価格:99,000円
■発売開始年:1992年

 

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