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1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.175】Roland S-10 ~86年発売のサンプラー、キャッチコピーは「サンプリング基本形」

2019/06/02

 

 

 今回ご紹介するキーボードは、ローランドが1986年に発売したサンプリング・マシン「S-10」です。発売当初の価格は175,000円(→のちに値下げ)。上位モデルである「S-50」(320,000円)と同時に発売されました。

 

Roland S-10

 

 関連記事:「Roland S-50 ~「サンプリング未来型」と銘打たれた86年製ローランド・サンプラー
 
 
 「音質重視」という、メーカーからの商品コンセプトが明示されていたということもあり、S-50同様、「原音忠実再生」にこだわって設計されたサンプリング・マシンだと思われます。S-50ほど多機能ではないですが、その分基本に徹してロー・コストを実現したという印象ですね。
 

Roland S-10(advertisement)
S-10/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用

 
 
 

基本仕様

 8ボイス、8EG、1LFO、およびベロシティ・センスに対応した、49鍵仕様のサンプリング・キーボード。スプリット・ポイントは4つまで可能となっています。本体右手前には、2.8インチのクイックディスク(QD)・ドライブを装備していました。
 
 
 

サンプリング性能およびフィルター部について

 サンプリング周波数は30kHz/15kHzの2つが使い分けが可能。サンプリング・タイムは30kHzモードで4秒、15kHzモードで8秒までとなっています。
 
 
 サンプリングの量子化ビット数は12ビット。D/Aコンバーターには、S-50同様16ビットのものが使われていて、当時「16ビット相当の音質が得られる」と話題にもなりました。
 
 
 またフィルター部は、VCFよりも低ノイズが売りのデジタル・フィルターを採用しており、当時サンプリング時に付きものだった「折り返しノイズ」も大幅にカットしてくれます。これも上位モデルS-50と同様の装備ですね。廉価モデルとはいえ、こういったサウンド・クオリティに直接関わる部分を上位モデルから劣化させなかったというのは、非常に評価できるポイントだと思います。
 
 
 

イージー・オペレーション

 サンプリング操作の基本は、サンプリングしたいソースをINPUTジャックに接続し、音を入力すれば(トリガーが働いて)サンプリングを始めるという簡単操作。このトリガーが動くのはこちらが(任意の)ゲート・レベルを指定しているからなのですが、このゲート機能は、外部ソースからS-10に入れた音をトリガーし、S-10で鳴らすといったこともできます。
 
 
 またサンプリング音をループさせる場合は、サンプリングと同時に自動でルーピングもしてくれるというこれまたお手軽操作です。手作業のルーピングって結構なストレスでしたよねぇ。。

 

 

 

豊富なサウンド・ライブラリー

 S-10を語る上で外せないのが(S-10専用の)サウンド・ライブラリーではないか、と個人的には思います。ひょっとした他にもあったかもしれませんが、以下の通りです。
 

品番 BOXタイトル 内容
L-101 PIANO & KEYBOARD Vol.1 アコースティック・ピアノ、エレクトリック・ピアノ、クラビ、ハープシコード、パイプオルガン
L-102 BRASS & WIND Vol.1 トランペット、トロンボーン、フルート、アルト・サックス、バリトン・サックス
L-103 MALLETS Vol.1 ビブラホン、グロッケン、マリンバ、バス・マリンバ、シロホン、チューブラー・ベル等
L-104 BASS Vol.1 エレクトリック・ベース各種、ウッド・ベース
L-105 EFFECTS Vol.1 ヘリコプター、砲声、銃声、ドア音、SL、電話音、オルゴール、動物の鳴き声等
L-106 DRUM SET Vol.1 ドラム・セット(スネア、タム、バスドラム、ハイハット、ライド・シンバル等)
L-107 STRINGS & CHOIR Vol.1 ストリングス、バイオリン、セロ、クワイヤ
L-108 GUITAR Vol.1 クラシック・ギター、フォーク・ギター、エレクトリック・ギター
L-109 SYNTH & ORGAN Vol.1 エレクトリック・オルガン、JP8ブラス、JP8ストリングス、VPストリングス、ソロ・シンセ等
L-110 ORCHESTRA(HITS) Vol.1 オーケストラ・ヒット8種、ティンパニー、エンディング、ハープ
L-111 BRASS & WIND Vol.1 ブラス・セクション、フレンチ・ホルン、テナー・サックス、ソプラノ・サックス、バスーン

 
 各BOXには5セット(クイック・ディスク10枚)のソフトが入っており、価格は各12,500円でした。ちなみにクイック・ディスクはブランクでも売っていたのですが、当時1枚500円前後だったと記憶しています。3.5インチフロッピー(2HD)の末期よりも遥かに割高だったですね。。
 
 
 

まとめ的な

 拡張機能をそぎ落とし、質の高いサンプリング・サウンドを使いやすいオペレーション内でまとめた、実に正統派サンプリング・キーボードといった趣きの一台です。本体価格も当時としてはお手頃だったし、上記のライブラリーも充実していたので、幅広い使い方ができたと思います。
 
 
 とはいえ今となってはクイック・ディスクなど化石メディアだし、QDが無ければそもそも音は出せないので、新たに当時のS-10の音を確認するのは困難なのが現状ですね。。
 
 

仕様
■鍵盤数:49鍵(ベロシティ・センス付)
■最大同時発音数:8ボイス
■システム:8エンベロープ・ジェネレーター、1LFO、デジタルフィルター
■サンプリング・タイム
 30kHzモード:4秒(1バンク1秒)
 15kHzモード:8秒(1バンク2秒)
■データフォーマット(量子化ビット数):12ビット  ※D/Aコンバーターは16ビット
■メディア媒体:2.8インチ・クイック・ディスク(QD)採用
■外形寸法:945(W)×77(H)×271(D)mm
■重量:9.5kg
■発売当時の価格:175,000円
■発売開始年:1986年

 

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