【Vol.145】Roland JV-1080 ~90年代の人気音源モジュール(前編)[1994年]
2019/01/19
今回は1994年発売のローランドの音源モジュール・「JV-1080」を紹介してみたいと思います。“SUPER JV”と冠されており、当時のJVシリーズの最高峰に位置するスーパー音源モジュールでした。
その頃はローランドに限らず、“鍵盤付きモデルを出してしばらく経ってからその音源モジュール版を出す”、というパターンが多かったのですが、本機には元となる鍵盤バージョンは直接的には存在しません(※1)
JV-1080は音源モジュールならではの機能・拡張性を備え、長きにわたって人気を博した一台でもあります。お値段(149,000円)もそのスペックからすれば比較的お手頃価格だったと言えるでしょう。
JV-1080/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
演算部
当時まだ珍しかった「最大同時発音数64、16パート・マルチティンバー」を実現しています。ちょっと大掛かりなオーケストレーションでも問題なくこなすといった感じですね。
こういった負荷のかかる処理を高速に行うために、JV-1080のCPUには「RISC(リスク)プロセッサ」が採用されていました。RISC CPUといえば当時高速のプロセッサとして有名であり、PC(Power Macなど)にも搭載されていたものです。この心臓部の高速化により、64ボイス同時発音での正確なシーケンス再生や、スムーズな画面切り替えなどを実現しています。
音源部
本機の音色は、パッチ(→音色の単位)としてプリセットA~Dそれぞれ128、計512個内蔵しています。
なおプリセットDはGM音源専用となっていているため本機はDTM音源にもなります。このGM音色を始め、JV-1080は非常に多彩な音色をハイクオリティに搭載していますね、しかも当時としてはかなりの音色数! その時代の(廉価な)DTM専用音源機にも何かしらプレッシャーを与えたのではないでしょうか(笑)
パッチを最大15個(+1個のリズム専用パート)まで組み合わせたものを本機では「パフォーマンス」と言い、このJV-1080では64パフォーマンスを内蔵しています。マルチティンバーで鳴らしたい時や、ライブ時での音色セット作り(→スプリット/レイヤー)などに重宝します。
もちろん自分で作った音色はメモリー(記憶)することができ、パッチ128種、パフォーマンス32種、およびリズムセット2種がメモリー可能となっています。
拡張性
本体フロントパネルには2種類のカードスロットが空いており、ここにはそれぞれ「PCMカード」「DATAカード」を挿すことができます。
PCMカードスロットには、同社の「SO-PCM1」シリーズを挿して音色ライブラリーが追加できますし、DATAカード(同社のM-512E、PN-JV80シリーズ等)を挿すことによってさらにメモリー領域を拡張することができます。
SR-JV80シリーズのエキスパンジョン・ボードを「4枚」搭載可能
同社のエキスパンジョン・ボードは「SR-JV80-19」までリリースされましたが、その中から4枚搭載することができました。最大拡張時(PCMカードも含む)には、実に1,700以上もの音色を備えることができたモンスター・マシンでもあります。
関連記事:「Roland SR-JV80-01~06 ~90年代ローランドのエキパン!(その1・初期製品モデル)」
なお2017年1月27日、上記のエキスパンション・ボード「SR-JV80シリーズ」に関して、ローランドから使用中止のお願い告知がHP上で発表されました。使用している電解コンデンサーが経年劣化により、まれに中の電解液が漏れることがあり、もし電解液が漏れ出た場合、最悪の場合には発煙の恐れがありますとのこと。詳細は以下ローランドサイトからご確認ください。
エクスパンションボード SR-JV80 シリーズをご愛用のお客様へ
https://www.roland.com/jp/support/support_news/170119/
これは残念ですが、20年以上も前の製品ですし致し方ないところでしょう。。
後半もあるでよ
というわけで、ここまでJV-1080の「音源部」と「拡張部分」を中心に書いてみたのですが、長くなりそうなので記事を前・後半に分けることにしました。後半もよろしければ読んでみてください。
続きの記事→「Roland JV-1080 ~90年代の人気音源モジュール(後編)」
それにしてもエキスパンション・ボード使用中止申請の告知はちょっと驚きましたね、本記事執筆時点でごく最近のことじゃないですか。。拡張ボードだけならまだしも、当時のオンボードのシンセサイザーとかも対象に入ってきたらそこそこな影響が出てきそうです。
関連記事(ローランドJVシリーズ):
「Roland JV-80 ~エキパン「SR-JV80シリーズ」搭載可能の初シンセ[1992年]」
「Roland JV-90 ~JV-1000からシーケンサー部を除いた76鍵シンセ[1993年]」
「Roland JV-35 ~コスパの高かったローランド・JVシンセの一つ[1994年]」
「Roland JV-1000 ~二つの心臓を持ったモンスター・シンセ[1993年]」
「Roland JV-1010 ~GM音源も内蔵したハーフラック・音源モジュール[1999年]」
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※1 …なお、後発のXP-50(鍵盤付きシンセ)は概ねJV-1080の音源部を踏襲している。
仕様
■最大同時発音数:64音(16マルチティンバー)
■パート数:パート1~16(GM対応)
■インターナルメモリー:512パッチ(GM音源用×128含む)、64パフォーマンス、8リズムセット(GM音源用×2含む)
■ユーザーメモリー:128パッチ、32パフォーマンス、2リズムセット
■内蔵エフェクト:EFX30種、リバーブ(8タイプ)、コーラス
■外部スロット:エクスパンション・ボード×4、PCMカード×1、DATAカード×1
■外形寸法:482(W)×88(H)×281(D)mm
■重量:5.0kg
■価格:149,000円(税抜)
■発売開始年:1994年