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1960~80年代 KORG 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.181】KORG Polysix ~低価格国産ポリシンセ(メモリー付)のさきがけ[1981年]

2018/11/25

 

 

 さて今回ご紹介するシンセサイザーは、コルグが1981年に発売した「Polysix(ポリシックス)」です。当時定価248,000円で発売された、プログラマブル・6ボイス・ポリフォニック・アナログシンセサイザーであります。

 

KORG Polysix

 

 直感的に操作できるインターフェイスと、独特のサウンド(特にシンセ・ストリングスやパッド)、そしてその低価格から、当時世界中のアマチュア・キーボーディストを驚喜させました。
 
 
 

Polysix登場の背景

 80年代初頭当時、海外製ポリフォニック・シンセサイザー(SEQUENTIAL CIRCUITS Prophet-5、Oberheimなど)といえば4~5音ポリ、なおかつ非常に高価(100万円~)な代物であり、職業音楽家ではない一般人にとっては中々手の出ないものでした。
 
 
 そこで登場したPolysixは、和音演奏において様々なコードを無理なく演奏できる6音ポリフォニックを確保。20万円台という低価格で、なおかつ音色メモリー機能を搭載しているということでも注目を集めました。
 
 
 実際、本機はProphet-5を意識して開発されたと言われています。「プログラマブル・ポリフォニック・シンセで音色メモリー可能」という類似仕様、一つ上行くネーミング(→5じゃなくてsix)など、確かに分かりやすいかもですね(笑)。ちなみにPolysixの価格はProphet-5(国内価格)の約1/7でした。
 
 
 

構成

 ノコギリ波、矩形波、PWMの波形選択が可能な1VCO(サブ・オシレータ付き)/1VCF/1VCA/1EG という構成。アナログ電圧でコントロールされるVCOは1ボイスで1基のみ、エンベロープも1つ、MG(→実質的にLFO)も三角波だけというシンプル設計。大幅なコストダウンを実現するための必要最低限の装備、といったところでしょうか。
 
 
 構成をシンプルにしたことで音作りの幅としては実はあまり広くなく、モジュレーションなどを複雑に掛けてエグい音色を作り出すというよりは、演奏向けの一般的な音色を生成する機能を揃えているという印象です。
 
 
 

内蔵エフェクトについて

 コーラス/フェイザー/アンサンブルが搭載されていて、コーラスとフェイズはレイト(速さ)を、アンサンブルにはデプス(深さ)を設定可能です。どれも極端に掛かる感じではなく、和音演奏を想定したと思われる温かい響きが特徴的です。
 
 
 特にコーラスやアンサンブルを使ったシンセ・パッド音色などは透明で美しい音で鳴ったため、当時は非常に重宝されました。
 
 
 

アルペジエーターとコード・メモリー機能について

 アルペジエーターは同時に押さえた鍵盤の音をクロックに合わせて一つずつ順番に鳴らすといったもの。これに対しコード・メモリー機能は、あらかじめ和音の構成音を記憶させておき、弾いた鍵盤の音をルートとする和音を鳴らすものです。
 
 
 なおコード・メモリー機能は「キーアサイン・モード」の一つであり、これにはユニゾン・モードというものもあります。その場合、6基のボイスを全て重ねた強力なサウンドを得ることができました。

 

 

 

音色メモリーについて

 32音色(8×4バンク)までメモリー可能であり、前述したエフェクト音までメモリーできるのが特徴です。なお、ほぼ同時期のメモリー付き国産ポリシンセといえば、以前本ブログでも紹介した「TRIDENT(トライデント)」がありますね。前年に発売されたTRIDENTは16音色メモリーだったので、メモリー数倍増といったところです。
 
 
 

外部インターフェイスについて

 カセットテープ・インターフェイスが搭載されており、内部メモリの内容を外部メディア(カセットテープ)に保存することができました。これも1981年当時では非常に画期的でした。
 
 
 

まとめ的な

 高品位なストリングスやパッドに定評があり、現在でも愛用され続けているコルグの80年代名機の一つという感じの印象ですね。僕も楽器屋勤務時代、同世代のJuno-60辺りと弾き比べてシンセ・マニアを気取ってました(汗)
 
 関連記事:「Roland JUNO-60 ~音色メモリーが可能になったJuno [1982年]
 
 
 なお今日Polysixを手に入れようとすると、メモリーのバックアップ電池が液漏れを起こして故障しているものとか、あまり上等ではない化粧パネルに派手に傷が入っていたりとか、なかなか状態のよいものは見つけにくいのが現状です。。またMIDIも標準では装備していなかったため、単体での使用は限定されるかもしれません。
 
 
 とはいえ2000年代には、往年のコルグのシンセサイザーをソフトウェアにエミュレートした「KORG Legacy Collection」がリリースされ、Polysixも含まれています。また2010年代にはiPad向けのアプリ「iPolysix for iPad」として復刻しています。
 
 
 これらは2017年現在でも購入できますし、価格もお手頃になっています。Polysixを始めとした伝説のコルグ・シンセサイザーを手軽に手元で味わいたい人にはオススメですよ!
 
 
 

2018年1月11日追記

 「KORG Legacy Collection」の販売は終了しました。なお「KORG Collection - Special Bundle」というダウンロード製品は取り扱っているみたいですね。
 
 
 KORG Shopリンク →『KORG Collection - Special Bundle
 
 

仕様
■鍵盤:61鍵
■最大同時発音数:6音ポリフォニック
■音色メモリー:32
■VCO:ノコギリ波、矩形波、PWM、サブオシレーター
■VCF:24dB/Oct. ローパス・フィルター   ■LFO:三角波
■エンベロープ:ADSR×1
■内蔵エフェクト:コーラス、フェイザー、アンサンブル
■外形寸法:980(W)×132(H)×373(D)mm
■重量:11.5kg
■発売当時の価格:248,000円
■発売開始年:1981年末

 

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