【Vol.329】AKAI AX80 ~アカイ プロフェッショナル初のシンセサイザー[1984年]
2018/11/28
今回ご紹介する機材は、AKAI Professionalのシンセサイザー「AX80」です。発売は1984年。当時の定価は268,000円。当時規定されて間もないMIDIに対応した、8ボイス・プログラマブル・ポリシンセといったところです(※プログラマブルとは内部メモリーにより音色保存が可能という意味)
AKAIブランドといえば今でこそ “MPCシリーズ”や各種MIDIコントローラー等で知られていますが、当時は、元々オーディオメーカーだった赤井電機が楽器マーケットに参入ということでそこそこ注目を集めたわけです。その電子楽器市場参入の際、新たに『AKAI professional』というブランド名が立ち上がり、その第1弾的な製品の中の一つが本機AX80だったということです。
内部仕様
2基のオシレーター(OSC)、VCF、1VCA、2EG、3LFOといった構成。同時発音数は8音です。基本的にはアナログシンセサイザーによく見られる操作系といったところですね。
オシレーター部
2つのOSCはクロス・モジュレーションにより金属的なサウンド作りにも対応。またOSC2にはEGによるモジュレーションを掛けられるため、クロス・モジュレーションの効果をより際立たせ、面白い音色変化をもたらしてくれます。なお当時のアナログシンセでよく見られたノイズはありません。
ちなみに本機のオシレーターですが、VCO(→アナログ)、DCO(→デジタル)の文献が混在しており、調べたのですが結局よく分からないんですね。。
フィルターおよびLFO部
24dB/octのローパスと、さらにハイパス(12dB/oct)も装備。レゾナンスはMAXで発振も可能。3基のLFOは、OSC1、OSC2、VCFに独立して掛けられるようになっています。
音色プログラム数
プリセット音は32。また、自分で作ったオリジナル・プログラムを64(32×2バンク)までメモリー可能となっています。ということで合計96(32+64)といったところでしょうか。なおこのプログラムは外部カセットにセーブ/ロードが可能です。
80年代半ばにもなるとプログラマブルというのもさほど珍しくはなかったのですが、本機の特徴的だったのが、サウンドメモリーの他にも「コード・メモリー機能」というのも備えていた点。これはコードのキーになる鍵盤を押さえるだけで和音演奏を行うことができるというものでした(最大8ボイスまで)
操作性優先の独創的なパネルデザイン
本機の特徴はそのフロントパネルのデザインにもあり。上面にレイアウトされた5つのブロックにはそれぞれFLD(蛍光表示管)が配置され、OSC1、OSC2、VCF、LFO、EG、VCAなどの音色パラメーターを見やすく表示してくれます。
このFLD表示、80年代電子ゲームにハマったお父さん世代ならばピンとくると思いますが、いわゆる「FL管」です。本機では縦方向にインジケーターが配置されていて(棒グラフのようになっている)、各種パラメーターの増減が一目で分かりますね。
当時はシンセ・パネルが近未来的なデジタル表示式へと変化していた時代であり、それだと確かにデザイン的にはすっきりしたのだけど、パラメーターを呼び出す際には面倒な操作が必要でした。本機ではエディットなどにおいて使いやすい設計がされていると言っていいでしょう。
それにしても本機のバックパネル(各種ジャック穴などが配されている後ろのパネル)は、これでもかというくらい上面方向に傾いております。これほどバックが傾いたキーボードというのもそうそう見ないですね。。
AX80/赤井電機(株) 雑誌広告より画像引用
鍵盤部について
61鍵のイニシャルタッチ [ベロシティ]対応鍵盤。打鍵する速さを検知し、音色や音量の微妙な変化をコントロール可能です。なおアフタータッチには非対応。
補足・MG1212について
AX80と同時発売された 12チャンネルミキサー/12トラックレコーダー。価格は124万円でした。これはプロ仕様の機能を装備した12チャンネルミキサー部と、MTR部(世界初の1/2インチ・カセットテープを採用)を合体させたようなものであり、コンピューター制御により内部編集作業を簡単に行えるというものでした。
MG1212/赤井電機(株) 雑誌広告より画像引用
「AKAI Professional」ブランド発足に当たり、当時赤井電機はそれまでのオーディオの技術を生かしたテープ・レコーダー部門、またアナログ技術を生かしたシンセサイザー部門という、2つの柱を据えつつ開発を進めていきました。そうして第一弾として投入されたのがMG1212(→テープ・レコーダー)、AX-80(→シンセサイザー)ということだったらしいです。そういえば広告デザインも非常に似てますね。
つぶやき的な
音色は今聴いてもパンチのある印象ですね(ノイズがないのは残念ですが)。AKAI Professionalのデビュー・シンセということで、本機はなかなかの意欲作と見ることができると思います。
ただし1号機ということもありMIDIはまだまだといったところ。システム・エクスクルーシブのIDコードが登録されておらず、音色プログラムの内容を他のAX80やMIDIレコーダー等に送り出すことはできませんでした(つまりプログラム・ダンプは不可)。まあMIDIそのものが規定されてから一年ほどしか経っていなかったので致し方なかったところでしょう。
仕様(AX80)
■鍵盤:61鍵(イニシャルタッチ[ベロシティ]検知)
■最大同時発音数:8音(ボイス)
■プリセットトーン:32音
■メモリーバンク:Aバンク/Bバンク 各32音
■構成:2OSC、1VCF、1VCA、2EG、3LFO
■外形寸法:1018(W)×102(H)×392(D)mm
■重量:15.2kg
■発売開始年:1984年
■発売当時の価格:268,000円