【Vol.296】KORG SP-200/SP-300 ~コスパに優れたシンプル・デジタルピアノ[2002年]
2018/11/28
今回ご紹介するキーボードは、コルグのデジタルピアノ「SP-200」および「SP-300」です。発売は2002年。いずれも88鍵、ハンマーアクションを搭載したものとなっており、家庭向けのみならずライブ使用も想定に開発されたような仕様となっています。数か月前にリリースされたSP-500の廉価モデルと言ってもいいかもしれませんね。
なおSP-200およびSP-300の最大の違いは、スピーカーなしがSP-200、スピーカー内蔵がSP-300という点であり、内部(音源)仕様はほぼ全く同じです。パネル上の操作子のレイアウトも同じですね。よって本記事も一応SP-200を基準に記述を進めさせて頂きます。
SP-200について
88鍵フル・スケールの、ハンマー・アクション機構を搭載したデジタルピアノ。ボディカラーは「ローズ・シルバー」と「ブラック」の2色展開。最大同時発音数は60音(※ただし制約あり。後述します)、内蔵音色数は30種と、同社のSP-100(1999年)の頃と比較すると大幅に増加しています。
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SP-200の定価は設定されておらずいわゆるオープンプライス。発売当初の市場実勢価格は80,000円前後でした。これはハンマーアクションを備えた88鍵デジタルピアノが、当時10万円を大きく下回るプライスで購入できたということであり、コストパフォーマンスの高いモデルとして注目されたのです。
内蔵音色について
本体内に収められている音色は大別して全10種類。パネル上にはそれぞれ独立した音色ボタンが配されており、それぞれバンク1~3のバリエーションの中から選べます。つまり内蔵音色数は10×3=30種類といったところです。音色名は以下。
[PIANO 1] …アコースティック・ピアノ
[PIANO 2] …アコースティック・ピアノおよびエレクトリック・グランドピアノ
[E.PIANO 1] …エレクトリック・ピアノ
[E.PIANO 2] …エレクトリック・ピアノ
[HARPSI/CLAV] …ハープシコード/クラビネット
[VIBES/GUITAR] …ビブラフォン/アコースティックギター、およびマリンバ
[ORGAN 1] …ジャズオルガン系
[ORGAN 2] …チャーチオルガン系
[STRINGS/PAD] …ストリングス/パッド
[CHOIR] …クワイア
演奏時のモード
1音色の「シングル・モード」に加え、上記の音色ボタンを2つ同時に押すことにより2音色を重ねて演奏することも可能。これは「レイヤー・モード」と呼ばれ、2音色の音量バランスも調節できるようになっています。
最大同時発音数について
上記で挙げた各音色は、使用するオシレーター(とマニュアルにも書かれている)の数がそれぞれ決まっています。例えば[PIANO 1]のバンク1だったら2個、[E.PIANO 1]のバンク1だったら1個、[ORGAN 2]のバンク1だったら3個といった感じ。
この数字は最大同時発音数に直接関係してくるのでちょっとだけ気にしておいた方がいいでしょう。[PIANO 1・バンク1]の音色を例に取ると、2オシレーターとなっているので最大同時発音数は30までとなります。まあこれはSP-100の仕様でも見られたのですが、概ねステレオ・サンプリングで収録してある音色は2オシレーター、モノだと1オシレーターといったところでしょう。
なお本機ではリバーブ、コーラスを内蔵しており、各3段階でかかり具合を調整可能です。ただしリバーブ時には最大同時発音数が10少なくなり、コーラス使用時には3少なくなります。
音色をレイヤーしたりリバーブ/コーラスを掛けるとリッチな響きになるのですが、その分同時発音数はどんどん減っていくので、特に演奏会やライブ使用時などでは注意した方がよいと思います。
タッチおよびペダルについて
ハンマー・アクション鍵盤を採用。タッチの個人的所感としてはやや軽めであり、SP-100の印象と近い感じですね。この値段ならばまあ妥当といえたかもしれません。なお、タッチの強さによる反応は3種類(ライト/スタンダード/ヘビー)から選べます。
ペダル(ダンパーペダル)は本体に付属していますが、オプションの「KORG DS-1H」を使用することにより、ペダルを踏みこむ深さでダンパーの掛かり具合を変化させることができます。いわゆる “ハーフペダル”に概ね対応すると言っていいでしょう。
関連記事:「電子ピアノにハーフダンパー(サスティン)は通用するのか?」
なのでネットオークション品などを入手する際にペダルが付いていない場合は、DS-1Hを別途購入することをお勧めします。
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SP-300について
SP-200にステレオ・スピーカーを内蔵したモデル。定価は139,000円(税抜)でした。スピーカーが付いたことにより奥行が+6cm、重量では+6.5kgの増加となっています。ボディカラーは「ローズシルバー/チェリーウッド調」、「ブラック/ダークブラウンウッド調」の2種類から選択可能でした。
その他、細かいですがSP-200と異なる点もいくつかあります。
・INPUT端子(ステレオ)を装備
他の楽器や音響機器の音声出力を、SP-300のスピーカーで鳴らす際に使用。これは簡易的なミキサーとしても使えるのでちょっと便利ですね。
・ヘッドフォン端子が増加(1→2個)
ただし2個ともリアパネル側にあります。同社のSGproXみたいにフロントに設置してくれてもよかったのにね。
関連記事:「KORG SGproX ~イコライザー付ステージ・ピアノ[1997年頃]」
個人的まとめ
とにかく当時としてはこの価格は非常にお手頃で、ピアノを始めたばかりの人が最初に購入する電子ピアノとしては悪くなかったと思います。特にSP-300のローズシルバーは、インテリアとしても(モダンなリビングとかに)合いそうなデザイン性です。
個人的にはこれのタッチの軽さはちょっと受け入れ難いのですが、音量レベルをちょっと上げた時の中域がいかにもバンド・ピアノっぽいキャラクターなのが印象的(笑)。低音と高音の響きは若干弱いと言わざるをえないのですが、バンド内でのバッキングだったらそこそこの存在感を出せるかもと思います。
ちなみに先日(2017年9月)、名古屋市内の某スタジオでデジタルピアノをレンタルした際に出てきたのがこのSP-200。発売から15年が経っているのですが、一部のスタジオではまだまだ現役で頑張ってるみたいですね。
仕様
■鍵盤数:88(ベロシティ付き、ハンマー・アクション鍵盤)
■最大同時発音数:60音 ※ただし特定の音色選択時や、エフェクトをかけることにより減少
■プリセット音色:30種(10×3バンク)
■内蔵エフェクト:リバーブ、コーラス(各3段階設定)
■内蔵デモ曲:30曲
■内蔵スピーカー(SP-300):10cm×2 ■アンプ出力(SP-300):15W×2
■外形寸法:
SP-200:1328(W)×122(H)×285(D)mm
SP-300:1300(W)×132.5(H)×343.8(D)mm
■重量:18.5kg(SP-200)、25kg(SP-300)
■発売当時の価格:
SP-200:オープンプライス
SP-300:139,000円
■発売開始年:2002年