1970~80年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.351】YAMAHA ポータサウンド MK-100 ~シンセのような音作りができた80年代製ポップキーボード[1983年頃]
2018/11/28
今回ご紹介する機材は、ヤマハが1983年末頃に発売した「ポータサウンド MK-100」です。当時の販売価格は59,800円。MIDIは実装していません。
まあ本機は、80年代のいわゆる気軽に遊べる自動伴奏付きポップ・キーボードに分類されるものなのですが、なかなかの機能を備えてたりします。
ちなみにヤマハのポータトーンといえば、当時カシオとポップ・キーボードのジャンルでシェア争いをしていたことでも知られていますね。以前本ブログでも「YAMAHA ポータサウンド MP-1 ~楽譜が印刷できるキーボード!?」という機種を紹介させて頂きました。
内蔵音色とか
49鍵のミニ鍵盤、アンプ/スピーカー内蔵で、乾電池(単2×6本)稼働もできる、コンパクト・ポップ・キーボード。
内蔵音色は以下のようになっています(全12種)。本機ではそれらプリセット音色を「オーケストラ音色」と呼んでいました。
オルガン/ピッコロ
トランペット/バイオリン
サキソフォン/オーボエ
ピアノ/ミュージックボックス
ハープシコード/ギター
シンセ1/シンセ2
例えばオルガンとピッコロは同一のスイッチに割り当てられており、バンク変更ボタン(※そういう正式名ではないがここでは便宜的にそう呼ぶことにする)にて切り替えが可能です。
なおサステイン(→音に余韻をつける)には、パネル上のサステイン・スイッチを押して行います。サスティンペダル端子? そんなものありませんよ(笑)。ちなみにAUX OUT端子は備えているので、外部のコンポなどにて大出力で鳴らすことは可能でした。
本機のマルチメニューについて
MK-100における「マルチメニュー」とは、変化させたい機能を選びいわゆるエディットを施すことで様々なバリエーションをもたらす機能のことです。いくつかあるので挙げてみましょう。
メロディボイス・バリエーション
プリセットされている上記の12種のオーケストラ音色の波形とエンベロープを、各々16通りで変化させることができます。これはこのクラスの鍵盤としてはすごいですよ!
本機には2系列の波形が用意されており(下図の上段が1系列波形、下段が2系列波形)、それぞれのグループから一つずつ波形を選択することにより音色を創り出すことができます。
さらに下図のように2系統のエンベロープを選択することができ、オリジナル音色の(音量の)立ち上がり・立ち下がりを指定することができます。
これら波形およびエンベロープの組み合わせにより、最大で1,376種類もの音色が創造可能。“無限の音作りが可能”なわけではなかったのですが、当時の一般的なポータブル・キーボードなんて数十個程度の音色が収められているに過ぎなかったので、これは相当なバリエーションの広さと言っていいでしょう。いやむしろ、本機はシンセサイザーと言ってもいいのではないかと個人的には感じます(フィルターはないけどね)
カスタム・ドラマー/カスタム・ベーシスト
「カスタム・ドラマー」はオリジナルのリズムパターンを作ってメモリーさせておくメニュー。これは、本体内にプリセットされているリズム・パターンに、任意のタイミングで打楽器音(バスドラ、スネア、ハイハット、ボンゴ、コンガ等)を加えられるというもの。捉えようによっては、プログラマブルなリズムマシンとほぼ同等の機能を備えていると言っていいですね。
なおプリセット・リズムは、ディスコ、16ビート、ロックなど全12種類のジャンルが用意されています(さらにフィルインも)。
「カスタム・ベーシスト」も上記と同様に、オリジナルのベースラインを記憶/再生することができます。右手のメロディと左手のバッキングを別々に250小節まで記憶可能。これだけでもちょっとしたシーケンサー代わりとして使えると思います。
そんな感じで、従来のポータブル・キーボードにありがちな「単調なオートリズム」に飽き飽きしていた人にとっては、本機は非常にクリエイティブな操作ができるといったところです。波形合成、およびドラム音+ベース音をある程度自由にプログラミングできるという意味で、おもちゃキーボードの範疇を超えていると言ってよいかもですね。
MK-100/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
内蔵メモリーについて
本機ではRAM(3.2Kバイト)を内蔵しており、作った音色や演奏データは本体内にメモリー可能です。ちなみに当時のマニュアルには「C-Mos使用 5日間以上保持可能」と書かれています。うーん涙ちょちょぎれじゃないですか、“5日間以上”ですよ!(涙)。じゃあ最長何日まで保持してくれるのさとツッコみたくもなりますが、とにかく5日間以上なのです(笑)。こんなの今の時代ではないですよね、80年代ってスバラしい~
まあさすがに5日間というのも心もとないのか、本機にはテープデッキとつなげてカセットテープにもデータを保存できるようになっています(→カセットインターフェイス装備)。当時本格シンセサイザーにも搭載されていたいわゆるテープによるバックアップ機能ですね、この価格帯の鍵盤でそれができるというのはなかなかのものです。
そんなわけで
本機はなかなか面白いポップ・キーボードに仕上がっていて、本格的なシンセサイザーへの導入前トレーニング用キーボードと考えれば十分な機能を備えていると思います。DX7(同じく1983年発売。定価248,000円)に手が届かなかった人はこっち、といったところかなぁ(笑)
関連記事:「YAMAHA ポータサウンド MP-1 ~楽譜が印刷できるキーボード!?」
仕様
■鍵盤:ミニサイズ49鍵盤
■プリセット音色:12種(オルガン/ピッコロ、トランペット/バイオリン、サキソフォン/オーボエ、ピアノ/ミュージックボックス、ハープシコード/ギター、シンセ1/シンセ2)
■内蔵リズム:12種(ディスコ、16ビート、ロックンロール、シャッフル、8ビート、ボサノバ、ルンバ、サンバ、スイング、スローロック、マーチ、ワルツ)
■スピーカー仕様:アンプ出力2W×、 径9cm×2
■外形寸法:622(W)×69(H)×213(D)mm
■重量:3.0kg(電池含まず)
■発売当時の価格:59,800円
■発売開始年:1983年頃