【Vol.295】KORG 707 ~4色バリエーションのライト感覚デジタルシンセ[1987年]
2019/02/19
今回ご紹介するシンセサイザーは、1987年秋頃にコルグから発売された「KORG 707」というモデルです。発売時の定価は99,800円。当時珍しかった4色(ブラック、ブルー、ホワイト、ピンク)展開のボディ・カラー、丸みを帯びたフォルム、ショルダーキーボードとしても使用可能な49鍵仕様ということで、ポップでカジュアルなデジタルシンセといった感じの一台になっています。
それまでのゴツいシンセサイザーが “男性的”と見るとすると、本機(の特にピンク)は “女性的”な雰囲気が漂いますね。実際、本体重量は4.9kgと女性でも比較的扱いやすいシンセだったと思います。
音源部について
2系統(16オシレーター)のデジタル音源を内蔵した8音ポリフォニック・シンセサイザー。以前本ブログでも紹介した「DS-8」とほぼ同じサウンド・エンジンを持っています。
DS-8の音源部は当時『デジタル音源』とだけ表記されていたのですが、その正体は実はFM音源だったということはマニアにとっては有名な話(笑)。本機707でもその辺りは同様なので、音源や音作りに関する詳細は必要に応じてDS-8の記事を読んでみてください。
関連記事:「KORG DS-8 ~実はFM音源でした[1987年]」
なおDS-8で見られた内蔵エフェクトは707では省略されています。
鍵盤部/コントローラー類について
49鍵のレギュラー・スケール鍵盤を採用。特筆すべきはイニシャルタッチ(→ベロシティ検知)はもちろんアフタータッチにも対応している点。コルグシンセのいわゆるエントリーモデルのカテゴリーにおいて、アフタータッチに対応している機種は今日までのシンセを含めても非常に少ないのです。加えて49鍵でアフタータッチ付きというのも珍しいですね。
ボディの横幅は長くないので、ボタンやコントローラー類は鍵盤の上部に設置されています。丸く点灯するボタンはのちのM1などに見られるものであり、PROGRAM、COMBINATIONボタンなどの並びもM1に近いですね(テンキーも独立して付いています)。音源方式こそ異なりますが、M1を使いこなせる人だったら本機もすぐに使いこなせるようになるでしょう。
またBENDとMODULATIOANの2つのホイールは、のちの同社の「X5」や「X5D」にちょっとだけ近いデザイン(配置)となっています。
4つの演奏モード
本機では「シングル」「レイヤー」「ダブル」「マルチ」の4つのキーボード・モードを搭載しています。この辺りもDS-8と同じであり記事も重複することになるのですが改めて記してみましょう。
シングル・モードは文字通り単音色(→8音ポリ)演奏モードであり、レイヤー・モードは2音色ミックス(→4音ポリ)のモードです。ダブル・モードは任意のスプリット・ポイントを設定して2つの音色を発音できる一種のスプリット機能といったところ。
マルチ・モードは、最大8ボイスの独立コントロールおよび同時発音ができるというモードであり、MIDIシーケンサーを組み合わせれば、本機のみで8マルチティンバー演奏が可能です。
ショルダーキーボード的使い方について
本機は乾電池でも駆動可能であり、(立奏での)ショルダーキーボードとして使用することも想定された作りになっています。サイドパネルにはストラップを掛けるためのピンが打ち込んでありますね。本体重量は4.9kg(乾電池込み)と比較的軽量だったし、専用機ほどではないにせよ使い勝手は悪くなかったと思います。
実はショルダーキーボード・モードになると、この丸みを帯びたボディが生きてくるのです。ほら重くて角ばったショルキーって、カドが骨に当たって痛かったりするんですよね。。その点本機は人に優しい筐体といったところ(笑)。本体左上に設置されている2つのホイールも手の周りが丸くて親切です。
あとVOLUME、TIMBRE、EG1、EG2のスライダーが45度ほど斜めに傾いて設置されているのもポイント。スライダーが斜めっているのはのちのRoland JD-800などでも見られますが、本機707では明らかにショルダー使用での使いやすさも見込んだ上での設計と言えるでしょう。ちょっと左側を持ち上げ気味で演奏するとキマったかも。。
707/(株)コルグ 雑誌広告より画像引用
つぶやき的な
本機もDS-8と同様、コルグさんの経営が厳しかった時代に発売されたシンセの一つであり、当時珍しかった4色展開のボディ・カラーということもあって、昔からのコルグファンにとっては記憶に残っている一台と言えるでしょう(一般的な知名度は高くないけど)
コルグさんの当時の広告でも『キスよりやさしいファーストシンセ』といったキャッチコピーが見受けられて(よく考えたら意味不明だが。。)、学園祭などでライブデビューを果たす入門者向けシンセという位置付けだったのでしょう。セールス的にはあまり振るわなかったらしいですが、同社の時代ごとの代表的なシンセサイザー(M1、Prophecy、M50など)に見られる点灯式丸ボタンの採用など、KORGデジタルシンセとしての礎みたいな雰囲気も感じられますね。
関連記事:
「KORG M1 ~【前編】世界中で記録的大ヒットしたワークステーションタイプ…」
「KORG DS-8 ~実はFM音源でした[1987年]」
「KORG Prophecy ~コントローラーが全てアサイナブルなモノ・シンセ[1995年]」
仕様
■鍵盤数:49鍵(イニシャルタッチ、アフタータッチ付き)
■最大同時発音数:8音(レイヤー時4音)
■音源:デジタル・オシレーター(FM音源)×2
■メモリー(本体のみ):100音色、10コンビネーション
■メモリー(カード使用時):200音色、20コンビネーション ※オプションのKORG MCR-02
■外形寸法:763(W)×102(H)×299(D)mm
■重量:4.9kg(単2電池×6本 込み)
■発売当時の価格:99,800円
■発売開始年:1987年