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その他メーカー 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.394】CHEETAH MS6 ~珍しい英国製 1Uアナログシンセ[1990年]

2018/11/28

 

 

 今回ご紹介する電子楽器は、イギリスのCHEETAH(チーター)社が作ったシンセサイザー「MS6」です。本国での発売は1988年頃(日本での発売は1990年)。発売当初の価格は220,000円でしたが、のちに128,000円に改定されています。

 

 

 これはマルチ・ティンバー対応の1Uアナログ・モジュールですね。日本ではちょっと耳慣れないCHEETAHというメーカー(ブランド)は、他にもマスターキーボードの「7P」とか「770」とかを出していたので知っている人も居るかもしれません。まあどちらにせよマニアックなので(笑)、さらっと紹介してみたいと思います。
 
 
 

概要

 最大同時発音数6ボイスの、マルチ・ティンバー対応のアナログ・シンセモジュール。ピアノ音色なども一応収録されてはいますが、厚みのあるストリングス、ブラス、あるいはベース音色など、アナログシンセならではの暖かみのある音色を得意としていました。
 
 
 また、当時としては大容量の320音色(※ユーザー領域も含めれば415音色)のプリセットを備えていることでも話題となりました。
 
 
 

音源部

 オシレーター部は安定感のあるDCO(デジタル・コントロールド・オシレーター)を採用。各ボイスごとの構成は2DCO、1VCF、1VCA、2ENV(エンベロープ)となっています。
 
 
 2基あるオシレーター・セクションでは波形およびPW(パルスワイズ)などが選択でき、オシレーターAからオシレーターBへのシンクも可能。オシレーターBではファイン・チューン(→ピッチの微調整)の設定も行えるため、厚みのある音作りにも対応します。
 
 
 

フィルター・セクション/LFOセクション

 フィルターはアナログのVCFを採用しており、本機では-24dB/octとなっています。ここではカットオフ・フリケンシーやレゾナンスの選択、またフィルターのキーフォロー、フィルターにかけるエンベロープなどが設定可能。鍵盤の押し込み(→キープレッシャー)にも対応しており、押し込み量に対するLFOの深さ(デプス)の設定も行えますね。
 
 
 LFOセクションでは、波形の選択およびフリケンシーの設定をはじめ、ディレイ・タイムの調整なども変更可能。
 
 
 

エンベロープ(ENV)・セクション

一般的なADSR方式の4パラメーターによるエンベロープを2基搭載。
 
 
 

内蔵音色構成について

 メーカー・プリセットとして、計5バンク(1~5)にそれぞれ64の音色が収められています。よってプリセット数は5×64=320音色となります。以下はざっくりその内訳。
 

バンク1:ストリングス(No.11~88)
バンク2:ピアノ/クラビネット(No.11~58)
     ブラス(No.61~88)

バンク3:オルガン(No.11~38)
     エフェクト/ヴォックス(No.41~58)
     ストリングス/ブラス(No.61~88)

バンク4:ベース(No.11~68)
     シンク/リード(No.71~88)

バンク5:ウェーブ・ミックス(No.11~24)
     パーカッション/エフェクツ(No.25~44)
     ソロ(No.45~58)、ハープシコード(No.61~68)
     シンセ・ベース(No.71~88)

 

 各バンクの数字は8進数になっていますね(No.11~88)。
 
 これに加えてRAM領域(ユーザー領域)として、バンク6~8にも計96の音色が収められています。バンク1~5のプリセットをエディットしてバンク6~8のRAMに保存するといった感じです。

 

 

 

操作についてなど

 LED窓は備えていますが、ボタン類はバンク等を選ぶ1~8までの数字キーと、パラメーターなどを操作する4つのキーのみ。膨大なパラメーターが調整可能であり結構凝った音作りにも対応しますが、本体のみでの操作性は難解・複雑であり若干ハードルが高いですね。。というかかなり面倒です。
 
 
 まあ一応Mac用のエディタ/ライブラリアン・ソフトとして有名だった「Unisyn(ユニシン)」が使えたそうなので、Mac使いの人にとってはさほど問題なかったのかもしれません。
 
 
 あと、本機には「ボリューム(音量)」を調整するつまみなりスライダーがありません。まあミキサーでやってくれということだと思うのですが、何とも素っ気ない設計ですね。。
 
 
 

つぶやき

 1Uといい、音色のキャラクターといい、内蔵音色数の多さ(※当時としては)といい、個人的にはOberheim Matrix-1000のそれに近いかなーという印象を持っていました。膨大なエディット・パラメーターも内蔵しているという点ではMatrix-6/6Rっぽくも見えますね。
 
 
 本記事執筆にあたり海外のMS6の文献を調べたところ、実際、Matrix-1000やMatrix-6/6Rと同じサウンドチップを使用しているとの記述もありました。まあこの辺りは個人的には未確認であり断定することはできませんが、出音のキャラクターからすると(おそらくそうなんだろうなということで)納得!といったところです。
 
 
 
 関連記事:
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CHEETAH MS6, 770/株式会社 黒澤楽器店 雑誌広告より画像引用
 
 
 

おまけ

 MS6と近い時期に発売された「MASTER SERIES 7P(あるいは770)」(マスターキーボード。音源非搭載)は、アコースティックピアノ・タッチの88鍵盤、さらにアフタータッチ装備、MIDI OUT×4などMIDI周りでも充実した仕様となっており、MS6とセットで使われることを想定してリリースされたという感じですね。
 
 

仕様
■音源方式:DCO(デジタル・コントロールド・オシレーター)
■最大同時発音数:6音
■ボイス構成:2DCO、1VCF、1VCA、2ENV

■メモリー音色数:
 メーカー・プリセット320音色(64×5バンク)
 ユーザー・エリア95音色

■外形寸法:482(W)×44(H)×195(D)mm
■発売当時の価格:220,000円(のち128,000円に改定)
■発売開始年:1990年(※日本)

 

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