1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.302】Roland A-880/EDIROL UM-880 ~マージも可能なかつての定番MIDIパッチベイ
2018/11/28
今回はローランド「A-880」およびEDIROL「UM-880」というMIDIパッチベイ(MIDIパッチャーとも)について、2台まとめて紹介してみたいと思います。A-880の発売は1988年、一方UM-880は2001~02年頃の発売であり、発売時期としては大きく隔たりがあるのですが、基本機能が似ている商品ということで一つの記事にさせて頂きました。ってよく見たら名前もよく似てますね。。
そのそも「MIDIパッチベイって何?」という人も多いと思いますが、これは一つのMIDI入力信号を複数に分岐して送ったり、逆に複数の入力信号を一つにまとめることができるという機器のことです。手持ちのMIDIハードウェア音源が増えていった際、このMIDIパッチベイが1台あれば非常に重宝した時代もあったのです。むしろ現在でも一部の現場では現役で稼働しているものもあるでしょう。
他の代表的なMIDIパッチベイとして、(以前本ブログでも紹介した)「KAWAI MAV-8」がありますね。そちらの記事ではMIDIパッチベイについての補足的な説明を書いてありますので、必要に応じて読んでみてください。
関連記事:「KAWAI MAV-8 ~80年代のMIDIパッチベイ、その名も“マブハチ” [1988年]」
A-880について
8つのMIDI INと8つのMIDI OUTを持つ、1UサイズのMIDIパッチャー/ミキサー。発売時の価格は29,800円でした。
MIDI機器がシステム・アップしていくにつれ複雑化するMIDI周りのイン/アウト環境を効率よく整理し、数多くの現場で長きにわたって愛用されたロングセラー機でもあります。
フロントパネルに2系統のMIDI IN/OUT端子を備え、残りの6系統はリアパネルという仕様。ラックにマウントした状態でもフロントに2系統用意されている端子を “臨時用”として使えるので、イレギュラーなパッチングにも簡易に対応可能。パッチングはIN側/OUT側のスイッチを押すだけでありさらにスイッチは光るので、目でも確認しやすい簡単設定です。
(MIDI)ミキサー機能
1つのMIDI INに複数のMIDI OUTをミックス(マージ)できる機能。
例えばMIDIキーボード(のMIDI OUT)とA-880(のMIDI IN)を1本のMIDIケーブルでつなぎ、さらにA-880(のMIDI OUT)から複数のMIDI音源モジュール(のMIDI IN)につなげることにより、一台のMIDIキーボードだけで複数のMIDI音源を鳴らし分けるといったことが簡単にできます。
なお、その逆(→複数のMIDI INと1つのMIDI OUTを接続すること)は不可となっています。
メモリー機能設定したパッチングの情報は本体内にメモリー(セーブ)可能であり、電源を落としても内容は保持されます。本機のメモリー番号は8バンク×8ナンバーで整理されており、合計64個まで記憶ができるということ。これはライブでも、多数のMIDI音源(およびマスターキーボード)を曲ごとにセッティング変更する際に一発でチェンジできるため重宝します。
MIDIメッセージ・フィルター機能
ミキシング入力をした時の出力は、本機のMIDIメッセージ・フィルターを通すことで、特定のMIDI情報(例:ノートのオン/オフ情報、プログラム・チェンジ情報等)の出力をカットすることも可能です。
UM-880について
A-880と同じく、1Uラックサイズの筐体に8INPUT/8OUTPUTのMIDI端子を備えた仕様。パネル上のスイッチの配置等もよく似ていますね。UM-880のMIDIパッチベイの機能としてはA-880と多くの部分で共通していると言えるでしょう。ただしUM-880ではこの他にもMIDIインターフェイスとしての機能も備わっています(→コンピューターを接続しない場合は単体MIDIパッチベイとしての使用も可)。
UM-880のMIDIインターフェイスについて
本機のフロントに×1、リアに×1、計2個のUSBジャックが装備されています。ここからUSBケーブルをつないでWindowsやMacintoshといったパソコンと接続することによりMIDIインターフェイスとして機能します。
なお本機ではFPT【Fast Processing Technology】という技術の採用により、高速かつ安定したデータ転送が行えるようになっているとのこと。これにより、使用するアプリケーションに依存することなく、快適なパフォーマンスを発揮できるという触れ込みでした。
拡張性について
本機は最大4台まで同時使用することができ、最大512チャンネルものシステム拡張が可能となっています。
【補足】そもそもEDIROLとは?
EDIROL(エディロール)とは元々ローランドの子会社であり、(主に2000年代において)ローランドのPC向け映像・音楽機器に冠せられるブランド名として知られていました。うーん確かに2000年代によく見かけましたよね!
BOSS(ボス)ブランドがローランドのエフェクター・ブランドだとすれば、EDIROLはローランドの映像・DTM向け機器(あるいはソフト)ブランドだったというところでしょうか(正確には違うかもしれませんが)。なおEDIROLは2010年にローランド・ブランドに統合され、今日EDIROLブランドの現行製品を目にすることはありません。
つぶやき的な
僕もシンセ専門店勤務時代、十数台の展示音源モジュールの音出しをするべく、A-880およびMAV-8の2台体制でMIDIパッチング対応をしていたことを思い出します。
昨今の電子音楽機器(特にPCとつなげる前提のもの)はMIDI端子の代わりにUSBで接続するものが主流になってきており、このようなMIDIパッチベイは今の時代っぽくない製品なのかもしれませんが、多数のハードウェアMIDI音源を愛用・管理している人にとってはまだまだ現役というケースも多いでしょう。
とはいえA-880もUM-880も現在では生産完了となっていて、特にA-880が故障した場合、30年近くも前の製品を今でも修理してくれるでしょうか。。ローランドさん、頑張って欲しいです。
仕様
A-880
■MIDI IN:8
■MIDI OUT:8
■外形寸法:482(W)×44(H)×286(D)mm
■重量:3kg
■発売当時の価格:29,800円
■発売開始年:1988年
UM-880
■MIDI IN:8
■MIDI OUT:8
■USBコネクタ:2(フロント/リア)
■外形寸法:482(W)×44(H)×201.8(D)mm
■重量:2.4kg
■発売当時の価格:オープンプライス
■発売開始年:2001~02年頃