【Vol.199】YAMAHA MU5 ~XG対応直前のヤマハ製GM音源モジュール[1994年]
2018/11/25
今回ご紹介する機材はヤマハの「MU5」というDTM向けGM音源モジュールです。発売は1994年で当時の定価は29,000円(税別)。DTM向け音源モジュールとして後に数多くのモデルが続いた同社の「MUシリーズ」第1号機になります。
本体色は違えど、以前本ブログでも紹介した同社のシーケンサー「QY20」(1992年)とデザインがよく似ていますね。大きさもQY20同様、手のひらよりもちょっとはみ出る程度のVHSビデオカセット・サイズでした。
ちなみにこのMUとは、音楽の女神 “MUSE”、音楽の “MUSIC”から取ったものらしいですよ。
MU5概要
16パート(※パート10はドラム専用)・28音ポリフォニックのDTM向けトーンジェネレーター。内蔵音色は、GMシステムレベル1規格に対応した128音色+8ドラムセット。本体にHO HOST端子を備え、コンピューター(PC/AT互換機、PC-9800、Macintosh)と直接シリアル接続が可能。乾電池駆動にも対応(ACアダプタは別売)。
同社のDTM向け音源モジュール・「TG100」(あるいはTG300)の実質的な後継機種と見ていいですね。数あるMUシリーズのうち、唯一XGフォーマットに対応していない機種でもあります。
関連記事:
「YAMAHA TG100 ~ヤマハ最初期のGM対応DTM音源モジュール[1992年]」
「YAMAHA TG300 ~XG発表前に発売された本格派DTM音源機[1993年]」
MU5,MU80/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
音源部について
AWM音源(→サンプリング)による通常音色の128に加え、ドラムキットも8個内蔵。音源部としては「GMシステムレベル1」に対応しており、音色のラインナップも一通りの楽器(ピアノ、ストリングス、ブラス、ギター、ベース等)が揃っているといった感じです。
PCとの接続について
MU5はTO HOST端子を備えており、これをコンピューター側のシリアルポート(RS-232C端子、RS-422端子等)と、ケーブル1本で接続することが可能です。なおケーブルは別売り。PCはIBM/PCシリーズ、NEC PC-9800シリーズ、Macintoshシリーズに対応しており、それぞれ対応するケーブルも異なります。
またMU5のMIDI端子(MIDI IN)から、コンピューター側のMIDI OUTに接続するといった方法もありますね。なおこの場合、コンピューターにはMIDIインターフェイス[ボード]が増設されていることが必要となります。
鍵盤パッドを搭載
E2~E4に相当する2オクターブ分のボタン鍵盤を搭載しています(ベロシティはなし)。なお音域自体は10オクターブまでカバーしており、本体の [OCT DOWN]/[OCT UP]ボタンで切り替えることができます。
DTMバンドル・セット「HELLO! MUSIC! First MU5-K」について
ハード音源に本機・MU5を採用したDTMバンドル・セット。PCと接続できるシリアルケーブル(ただしPC/AT互換機、DOS-V機、NEC PC-98のみ。Macintoshは別売)や、MIDIデータ再生ソフト「Music Box」などを同梱していました。定価は35,000円。DTMを始めるための最低限の機材が揃うといった趣きの、超低価格エントリーモデルといった位置付けですね。
とはいえこの付属ソフト「Music Box」は、市販のSMFソング・データを(最大10曲まで)ロード/再生できるというものであり、いわゆるシーケンス・ソフトではないんですよね。うーん。。
個人的かんそう
MU5のメーカーキャッチコピーは『アウトドアでも楽しめるカジュアルなGM音源』となっていて、ノートPCでのDTMに最適という触れ込みでした。確かに本機自体はお手軽ではあったのですが、当時のノートPCはまだまだ大きく(重く)、厚さ5cm超えのおよそノートとは言えない感じのものがほとんどでした(※1)
そんなわけで、ノートPCと本機を持ち歩きアウトドアでDTMを満喫、という人はおそらくそうそうおらず、「QY20で十分っすから!」という感じの人が多数だったのではと思います。
まあ当時としては、軽量・低コストでGMの一通りの音が手に入ったということですから、ライブ用のサブ音源としても使えたかもしれません。
関連記事(ヤマハQYシリーズ):
「YAMAHA QY10 ~ベストセラー・ハンディ作曲マシン[1990年頃]」
「YAMAHA QY20 ~大型グラフィック液晶採用のポケット・シーケンサー[1992年]」
「YAMAHA QY22 ~クイック・コンポーザーQY20がGMフル対応に![1995年]」
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※1 …なお薄型ノートPCの革命的製品だった「SONY VAIO PCG-505」(厚さ23.9mm、重量約1.35kg)は、1997年秋の発売。
仕様
■音源方式:AWM音源
■最大同時発音数:28音
■マルチ・ティンバー数:16(DVA)
■プリセット音色:128ノーマルボイス+8ドラムボイス(GMシステムレベル1規格準拠)
■ディスプレイ:カスタムLCD 54.5mm×29.4mm
■入力用ミニ鍵盤数:25
■接続端子:LINE OUT PHONES×1(ステレオミニ)、MIDI IN、MIDI OUT、TO HOST、DC IN
■電源:ACアダプター(PA-3・別売)、単3乾電池×6本
■外形寸法:188(W)×33(H)×104(D)mm
■重量:340g(乾電池除く)
■発売当時の価格:29,000円
■発売開始年:1994年