キーボーディスト、脱初心者を目指す

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1970~80年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.265】YAMAHA YC-45D ~世界のキイボーダーがいつか到達するであろう…[1972年]

2018/11/26

 

 

 今回ご紹介するキーボードは、1972年にヤマハから発売されたオルガン「YC-45D」です。61鍵×2段の鍵盤を持ち、全鍵ポリフォニック。価格は575,000円でした。同社のYCシリーズといえばいわゆるコンボ・オルガンに冠せられていたシリーズなのですが、近年「reface YC」として復刻(?)しているので、最近の若いキーボーディストでもひょっとしたら聞いたことがあるかもしれませんね。

 

YAMAHA YC-45D

 

 70年代のYCシリーズといえばいくつかあるのですが、このYC-45Dは61鍵×2段、さらにペダル鍵盤まで用意されており、シリーズ最上位機種として君臨していました。
 
 
 

【はじめに】「YC-45D」、YCシリーズとしての位置付け

 70年代に発売されたYCシリーズを以下に一通り挙げてみましょう。なおカラーリングは赤・黒・白・青(※ただし一部機種では白・青はない)などが用意されていて、YC-45DとYC-30についてはウォールナット(木目調)もありました。
 

YC-45D:本記事の主役

YC-25D:49鍵×2段構成となっていて、下鍵盤(の左部)19鍵はベースとしても使用可能。YC-45Dの実質的な廉価モデルであり、当時の定価は325,000円。

YC-30:61鍵(マニュアル44+ベース17)×1段構成。定価は395,000円と、1段鍵盤のラインナップの中ではハイエンドモデル。

YC-20:61鍵(マニュアル44+ベース17)×1段構成。定価は195,000円。トーンは2チャンネルで、特にチャンネル1は1~16フィートまで7段階の音程が得られる。

YC-10:49鍵×1段構成。定価は108,000円。シンプルな操作系と可搬性に優れたエントリーモデル。

 

 

YC-45Dの基本的な音作り

 パネル上のカラフルなレバー群は「UPPER」「LOWER」「BASS」「PORTAMENT」という大きく4つのカテゴリーに分かれていて、基本的な音色は、これら「トーンレバー」と呼ばれるものを組み合わせて作ります。これらは4段階に変化(0~3)が可能な音量調整用のレバーであり、0の時はいわゆるOFF状態です。ちなみにアナログシンセで言うところのフィルター(→時間的音色変化)はありません。
 

YAMAHA YC-45D(tone-lever)

 
 中央左に8つ並んだ白色のレバーは「カプラー」と呼ばれるもので、16'、8'、5 1/3'、4'などフィート表示がされています。ハモンドオルガンで言うところのドローバーみたいなものですね(これらも各々音量調整が可能)。異なる倍音の組み合わせにより、一つのキーで複数の倍音(音程)が重なった厚みのある音を作ることができるといった感じです。
 
 
 UPPER(上鍵盤)は最も数が多く、トランペット、ストリングス、あるいはピアノ、ハープシコードなどの音色が用意されていますね。LOWER(下鍵盤)は5本のカプラー(トーンレバー)のみ。またBASSには2つのカプラーとトロンボーン(→TROMBAと表記)とベースギターがあって、下鍵盤の鍵盤色が白黒反転している部分にアサインして使えます。
 
 
 

エフェクトについて

 YC-45Dにはいくつかのエフェクトが用意されており、音色に様々なバリエーションを加えることもできます。非常に数が多く細かいので、主なものだけ挙げてみましょう。
 

ビブラート

 レバーをONにすることにより全鍵にビブラートがかかります(深さ調節可能)。なお上鍵盤では速さを変更することもできます。特筆すべき点が、上鍵盤では「タッチ・ビブラート」にも対応しているところ。これは鍵盤を左右に揺することにより演奏中にビブラート効果を付加する機能であり、この時代のキーボードにはたまに見られた仕様でした。まあ横方向のアフタータッチみたいなものです(そうなのか?)
 
 

アタックグライド

 これをONにした状態で打鍵すると、アタック部分のピッチが瞬間的に下がり徐々に元の音程に戻っていくという機能です。
 
 

アッパータッチレスポンス

 上鍵盤のみの機能。これをONにすると、キーを押すタッチの強弱によって音量が変化します。オルガンなのにタッチ・レスポンスが実現できるということでちょっと変わってますね。ピアノ音色に有効だったのかもしれません。
 
 
 上記の他にも、ギターのそれのように音色を歪ませる「ファズ」や、サスティンなどのエフェクト効果を得ることができます。最上位機種ということもあり、工夫次第で色々なことができるといった感じだったと思います。

 

 

 

プリセットについて

 本機には、パネル中央上部に小さなレバーがあり、アッパー音色2つ、ロワー音色1つがプリセット可能。演奏中にプリセットIもしくはIIのタブレットをONにすれば、あらかじめセットしておいた音に切り替わります。
 
 
 

つぶやき的な

 シンセサイザーが誕生したのが60年代後半と言われていて、72年リリースの本機YC-45Dでは、オルガンというカテゴリーでありながら “シンセサイザーっぽい”アプローチの機能がいくつか見られると個人的には感じます。当時のシンセサイザーは単音でしか鳴らせなかった(→ポリフォニック・シンセが普及していくのは70年代後半のこと)ので、本機をポリシンセに見立てて使っていたミュージシャンも少なくなかったと思います。
 
 
 なお当時のコンボ・オルガンといえば、本機に限らずへなちょこな音(褒め言葉)で知られており、それが最大の個性と言ってもよいと思います。今日それら実機を目にする(演奏できる)ことはまれですが、近年ではソフト化もされているので機会があればそのへなちょこ具合(褒め言葉)を自身で確認してみてはいかがでしょうか。
 
 
 ちなみにYC-45Dの当時のカタログには、帝王マイルス・デイヴィスが起用されていたことでも一部のマニアの間では有名ですね。実際本機のリリース当初はジャズ・ミュージシャンの愛用者が多かったそうですよ。
 
 

仕様
■鍵盤:上61鍵、下61鍵(マニュアル・ベース19鍵切替付)、ペダル13鍵
■最大同時発音数:全鍵ポリフォニック
■外形寸法:1109(W)×968(H)×648(D)mm
■重量:60kg
■発売当時の価格:575,000円
■発売年:1972年

 

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