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CASIO 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.403】CASIO GK-700 ~テレビとつなげてミックスダウンまでできる作曲キーボード[1995年]

2019/01/12

 

 

 今回掘り下げてみるキーボードは、カシオが1995年秋頃に発売した「GK-700」というモデルです。当時の定価は78,000円(税別)。これは何かというと、家庭向けテレビに接続してグラフィカルに曲作りやアレンジができる、シーケンスソフト内蔵のキーボードといったところです。

 

CASIO GK-700

 

 ちなみにGKというのは【Graphic Composing Keyboard】の頭文字を持ったものですね。キーボード側に音源(GM対応)を積んでいて、とりあえず本体のみで音を出すことも可能です(ステレオ・スピーカーも内蔵)。
 
 
 

特徴

 テレビに映した操作画面を見ながら、作曲やアレンジが行えるという電子キーボード。
 
 エフェクトを掛けたりミックスダウン(→各トラックの音量・定位などをバランスよくミキシングしてまとめ上げて行く作業)もできるため、本機のみでトラックメイクの行程を一通り完結させることも可能となっています。
 
 
 

テレビとの接続について

 キーボード本体とテレビとの接続は、付属のRCAピンコードのみでOKという簡単さ。その頃で言えば、ビデオデッキとテレビをつなぐ “赤・白・黄色のケーブル”を使ったわけですね(今でも使うけど)。
 
 
 それまでも、本体と外部ディスプレイをつなげてシーケンスソフトを操作することができるものもいくつかあったのですが、大抵はいわゆる “パソコン用ディスレイ”でしたよね。どこの家庭にもあるテレビとつなげられるというのは、作曲ソフトとしてはありそうでなかなかなかったのです。
 
 
 

表示画面について

 グラフィカルかつカラフルで、プロ向けシーケンス・ソフトのような難解なパラメーター群とはちょっと趣きの異なるポップな画面となっています。家庭向けテレビゲーム(当時で言えばスーファミ、プレステなど)感覚で遊びながら曲作りやアレンジができるといったところ。これは初心者にとって非常に入りやすかったという感じですね。
 
 
 各表示画面にはいわゆる五線譜表示から、DTMっぽいピアノロール画面、さらにはミキサー画面などがあり、いずれもカラーで表示されます。シーケンサーは最大16トラックとなっています。
 
 
 

曲作りの基本的な流れ

1.バンド選び

 GK-700内には仮想のバンドが31組用意されており、自分の好みの音楽ジャンルのバンドをチョイスすることができます。このいわゆる「BAND画面」ですが、各楽器パートのメンバー(のイメージ)がグラフィカルに描かれており、とりわけゲームチックな印象です(笑)
 
 
 ここで面白いのが、仮想バンドの中でメンバーチェンジが可能な点。見た目ハードロックなバンドを基本に選んだとして、ギターだけジャズ畑の人にお願いするとか、ドレッド髪のレゲエ風の人に入れ替えるなんてこともできます。個性ある自分だけのオリジナル・メンバーをそろえるなどといった楽しみ方もできそうですね。
 
 
 なお最初のメンバー選びからして悩まないように、後行程からでもチェンジは可能となっています。
 
 

2.コード進行決め

 作曲知識のある人だったらコード(進行)を次々と入力していってもいいですが、本機には「コード・データベース」なるものが内蔵されており、これにより、自動的にジャンルごとの典型的なコード進行を提示してもらうということもできます。
 
 
 こうして提示されたコード進行はそのまま使ってもよいですが、それを元にしつつ任意にコードを差し替えて、よりオリジナリティを出すとよいのではないかと。
 
 

3.メロディ作り

 メロディのレコーディングはリアルタイム/ステップのどちらにも対応。あとからの修正(エディット)も、「Nortation画面」(いわゆる五線譜)や「Piano Roll画面」、あるいは全てのデータを文字や数字で表示する「Event List画面」にて行うことができます。
 
 
 『メロディなんて全く思い浮かばん!』というちょっと困った人(笑)にとっては、「メロディ・データベース」という強い味方もスタンバイしています。これは前述の「コード・データベース」と同様に(メロディ作りの)ヒントを提示してもらうというものであり、ちょっとしたアイディアが欲しい時などに便利かもですね。
 
 
 なお本機には「MELODY VARIATION機能」「ANALYZE機能」なる機能も備わっており、作成したメロディのアレンジを簡単に変化させたり、響きが不自然な時にコードを自動解析してくれたりもします。
 
 

4.エフェクトおよびミキシング

 内蔵のデジタル・エフェクトには、リバーブ×3、コーラス、フェイザー、ロータリー、フランジャーの全7種が用意されています。
 
 
 そして一通り各トラックの入力が完了したら、「MIXER画面」にて仕上げを行います。ここでは各パートごとのレベル(音量)、パン(定位)、エフェクトセンドなどが調整できますね。あと音色変更やトランスポーズ(あるいはチューニング)もここで行うことができます。

 

 

 

つぶやき的な

 他にも、カシオさんお得意の自動伴奏機能や、マイク入力端子も備えていました。乾電池駆動もでき、この辺りの仕様はいかにもカシオさんといったところでしょう。
 
 
 しかし何といっても、家庭向けテレビにつなげられて、様々な作曲支援機能の下で初心者でも扱いやすい曲作りを提示したという点において、90年代半ばにちょっと存在感を放ったキーボードといったところですね。そういえばGK-700を使った作曲コンテストなんてのも開かれました。
 
 
 なおカシオさんは、近年iPhone用アプリとして『Chordana Composer(コーダナ・コンポーザー)』というソフトも開発しています。これは鼻歌や口笛から何となくそれっぽい形のオリジナル曲に仕上げてくれるという、ちょっと画期的な作曲アプリとして知っている人もいるかと思います。
 
 
 ちょっと強引かもしれませんが、今回のGK-700は、そういった現代のカシオの「コーダナ・テクノロジー」の元となった機種と言えるかもですね。
 
 

仕様
■鍵盤:61鍵(タッチ・レスポンス付き、キー・スプリット対応)
■最大同時発音数:32音(1DCOの場合)、最大16マルチティンバー
■内蔵音色:128音色(GM対応)
■内蔵のバンド:プリセット×31、ユーザー×16/メンバー・チェンジ可能(60人のメンバーから選択)
■コード進行:92パターン(25ジャンル×3 + 7オプション×2)
■リズム・パターン:50スタイル×8バリエーション

■自動リズム:50リズム(テンポ40~300)
■本体メモリ:8ソング、16トラック/9トラック+リズム・コード、最大16,000音符
■外部メモリ:RAMカード、MIDIバルク・ダンプ
■ミキサー:ボリューム、パン、エフェクト・デプス、トランスポーズ、チューニング、プログラムチェンジ、ベンドレンジ
■デジタル・エフェクト:リバーブ×3、コーラス、フェイザー、ロータリー、フランジャー
■外形寸法:962(W)×125(H)×367(D)mm
■重量:約5.4kg(乾電池含まず)
■発売当初の定価:78,000円(税別)

 

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